『ダーリン・イン・ザ・フランキス』に続くTRIGGERの新作『SSSS.GRIDMAN』。 公式サイトやyoutubeで公開されているPVには、原作として『電光超人グリッドマン』のタイトルがあげられていますが、『電光超人グリッドマン』とはどういった作品なのか?

平成ウルトラマンにも影響を与えた意欲作

  『電光超人グリッドマン』は、1993年に放送開始された円谷プロ製作の特撮作品です。製作当初は2クールの予定でしたが、1クール放送延長されるほどの人気を誇りました。

SSSS.GRIDMAN 電光超人グリッドマン
画像引用元:電光超人グリッドマン Blu-ray BOX 販売元:ポニーキャニオン

 この作品を大きく特徴づけるのは、主役ヒーローのグリッドマンとその宿敵である魔王カーンデジファーがそれぞれ中学生の所有するパソコンに同化しており、コンピューターワールド、つまり現在で言うインターネット上が主な戦場であることです。グリッドマン以降、仮想世界を舞台にしたアニメ作品は数多くつくられていますが、特撮では未だに類似する作品は思い当たりません。

 製作スタッフのほとんどを若手が占めており、後の平成ウルトラマンシリーズのメインスタッフとなった人物も多く、平成ウルトラマンの特徴であるフォームチェンジによるパワーアップの基礎を築いた作品とも言われます。

人間のキャラクターは中学生が中心

  グリッドマンに協力するのは中学2年生の仲良し3人組。主人公の少年がグリッドマンと融合して戦いに向かうと後の2人は異常の起こっているコンピューターワールドへのアクセスや、サポートメカの操作を担当して支援を行います。この2人は、戦闘のない時も支援メカのCGデザインとプログラミングを分担して行うなど独自の役割がありました。

 それに対するのは3人のクラスメートであるものの、ほとんど面識のないコンピューターオタクの少年。彼は陰湿な性格と友人がいないことなどが重なり自室にこもりがちであるところをカーンデジファーに洗脳され、コンピューターウイルスを怪獣として製作し、病院や天文台などのコンピューターに侵入させ事件を起こす実行犯になってしまいます。

 このように、彼らの戦いはごくわずかな人数の間で行われ、一般の人々にはコンピューターの異常としてのみ認識されるという密やかなものとして物語が進行するのも特徴のひとつでした。

当時のネットワーク環境について

  なお、1993年当時の日本はインターネットそのものの周知がほとんどなく、パソコン通信回線の時代です。

 Windowsのバージョンは3.1、回線はADSL以前のダイヤルアップ接続が主流で、ネットを利用する度に接続し直す必要があり、従量課金制。さらには地域でネットに繋ぐ人が多くなると回線も重くなるなど、現在のネット環境しか知らない人にとっては考えられないほど手間がかかり、回線の速度も比べ物にならないほど遅いものでした。現在のネット環境で言えば、グリッドマンをセキュリティソフト、カーンデジファーとその配下はコンピュータウイルスに見立てることが出来ます。“早すぎた名作”と評されるのは、このような設定の先見性によるものでしょう。

 また、グリッドマンの同化したコンピューター“ジャンク”は、主人公たち3人組が廃品や中古部品を使って組み立てた自作品ですが、現在のような机に乗せられる大きさの筐体に部品を収める自作コンピューターとは異なり、電子部品がむき出しの上に2メートルほどもある巨大で無骨な機械の塊です。このころはまだパソコンが一般家庭に存在しなかった時代で、視聴者に「コンピューター内の世界とはこんなものなのか!」という憧れを抱かせてくれる作品でした。

 2年後のWindows95の発売によって、急激に一般家庭へのパソコンの普及が始まったことでネットワークは身近なものになり、映像ソフトや再放送などでグリッドマンを知った人や、詳しい設定を理解した当時のファンから“時代を先取りしすぎた名作”の評価を得ることになります。

 2014年10月の『日本アニメ(ーター)見本市』で公開された『電光超人グリッドマン boys invent great hero』は当時のファンたちから“時代が追いついた”と賞賛を受けました。そして2018年、『電光超人グリッドマン boys invent great hero』の製作を担当したTRIGGERと雨宮哲監督の手によって『SSSS.GRIDMAN』がTVシリーズとして放送されるのが決定し、第2弾PVがyoutubeで公開されています。

 グリッドマンの声優を担当するのは、原作と同じ緑川光さんということが既に発表されているため、もしかしたら原作のその後が舞台なのではないかとの意見もあります。

 ネットワークが有線ばかりか無線でも張り巡らされ、あらゆる場所からアクセス出来る現代に、かつての電脳世界のヒーローはどのような復活を遂げるのでしょうか? 当時の視聴者のひとりとして、10月の放送開始を心待ちにしています

Text/如月 Edit/チャールズ野田)


TVアニメ「SSSS.GRIDMAN」公式サイト
Ⓒ円谷プロⒸ2018 TRIGGER・雨宮哲/「GRIDMAN」製作委員会

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