今季より放送が始まった、good!アフタヌーンにて連載中のバドミントン漫画『はねバド!』。
バドミントンでは天才的な運動神経を誇る主人公の羽咲綾乃や、舞台となる北小町公立高校バドミントン部の主将で、全国レベルの実力を持つ荒垣なぎさを中心に、同高校のOB立花健太郎がコーチとなってインターハイを制していく……いわゆる部活モノ。
この漫画の特徴は、作者自ら言及するほど「作風が大きく変化した」こと。
第1巻から第3巻までは綾乃をはじめとして、わりとのほほんとした作風と絵柄だったのですが、第4巻を皮切りに劇画のようなリアルな絵になっていき、ストーリーも熱血モノに。
第1巻こそかわいい綾乃ちゃんですが……。
また綾乃の天才たる故の奢りっぷり(曰く「魔王」)が現れるなど、純粋な「かわいい女の子が部活で頑張る」といった日常系とは一線を画すようになりました。その影響か、アニメ第1話と漫画の第1話は大きく雰囲気が違っており、また若干ながら最初のストーリーも変化していたのです。
ではどのへんが大きく変わっていたのでしょうか? 漫画と、先日放送されたアニメ第2話までを比較して振り返ってみたいと思います!
いきなり陰鬱としたバドミントン部の現状
漫画の冒頭では、コーチの健太郎の指導についていけないと不満を漏らした部員が体育館を離れるという、わりかしコミカルなシーンから始まるのですが、アニメでは主将のなぎさが部員にスパルタ級の練習をさせ、部員のみならず見学に来た新入生すら怯えさせるシーンから始まっています。
これはなぎさが高校2年の時に全日本ジュニア選手権で綾乃と戦った際、2歳下相手にもかかわらずストレート負けしたスランプから始まる焦燥感や自身のプライドを押し付けていることに起因しており、なぎさが部員とも上手くいっていない点がピックアップされていました。
綾乃とコーチとの出会いが違っている
前述したとおり、部員が退部した理由はなぎさのレッスンについていけない、という内容に変わっており、アニメではそもそもまだ健太郎がコーチに付いていませんでした。
漫画ではハンカチが木の上に引っかかってしまった時に、綾乃が木を駆け足で登ったところを見た健太郎がスカウトしたことで出会うのですが、アニメではテニス部の体験入部に来た綾乃と友人のエレナが、隣で試合しているテニス部部長らのサーブがエレナに直撃しそうになった瞬間、綾乃が駆け出してサーブを返すのを健太郎が見ていたところに変更されています。
なお、このシーンはなぎさも目撃していました。
漫画では、健太郎は俊足に目を付けた後に綾乃の指のマメ(ラケットを握ってできる跡)に気づきましたが、アニメでは瞬発力と的確なボール返しの両方が視聴者でもわかるような1シーンになったと言えます。なお、どちらでも健太郎は綾乃の指をさすし、エレナにボコボコにされたところは変わっていません(笑)。
初っ端から綾乃のブラックな要素が多く出ている!
第1話終盤では、エレナが綾乃を引っ張り出してバドミントン部に連れ出し、負けたらバドミントン部に入部するという条件をつけてなぎさと一戦を交えることになります。漫画ではやる気のない格好ながらなぎさを圧倒していきつつ、最終的にはなぎさに負けてしまいます。
1シーンだけ「なんか私の思ったとおりに全然いかないし…」と無表情かつ全く汗をかかず(なぎさは汗を流していないことに驚いていた)につぶやくという、綾乃のブラックな一面は出ていたのですが、
入部したくないがために「無効試合」とノートで反発したり、エレナに泣きつくなど、子供っぷりが大きくクローズアップされていました。
しかしアニメでは、なぎさと試合をする前から部員勧誘に対して「迷惑」と言い放ち、健太郎から才能があるのになぜやらないと問われても
「(バドミントンなんか)やったってなんの意味もない」
「たかがスポーツですよね」
と冷たい態度を取るなど、はっきりとバドミントンへの拒絶を表しています。
結果的に綾乃の態度がなぎさの怒りに触れて試合をするようになるのですが、綾乃はやる気ではないものの、最初から本来の利き手である左手で試合に望んでいます(漫画では「右利き用のラケットだったので気づかなかった」だけでしたが)。
しかし、なぎさのスマッシュがネットにかかったところで綾乃のトラウマ? が思い出されたところで、綾乃は試合を放棄してしまいました。フラッシュバックで写ったのは、おそらく第2話最後で登場した芹ヶ谷薫子との中学時代の試合と母親だと思われます。
決して暗いアニメではない!
第2話まで見ると、特に綾乃となぎさの中学時代のトラウマが大きくピックアップされているように思えます。
なぎさは綾乃にストレート負けしたトラウマから、より努力をしていること。そしてそれを他の部員にも押し付けてしまっていること。
綾乃は前述したように芹ヶ谷薫子との試合、母親の存在。
でも第1話で、なぎさは、綾乃を見たことで「自分が向き合ってなかったのを他人のせいにしていた」と涙を流しているシーンが追加されているなど、決して他人に厳しいだけの先輩ではないことを伝えています。誰よりも人間くさく、そして高校生の女の子の心情を最初から如実に表しているところが、大きく違っているように思えます。
綾乃となぎさの試合直前、綾乃が「部活のバドミントンなんか、なんの意味もない」と言ったことに対して、なぎさではなくなぎさの良き理解者である泉理子が
「意味なくなんかない!!」
「死ぬほど頑張って…どうしても勝ちたくて…!」
と真っ向から返すところなんかも、部活に全力で挑むなぎさや理子を象徴するセリフだし、これぞ青春だなぁと思わせてくれます。
ただ最初に述べた通り、漫画でもインターハイ予選の途中から熱血青春の要素が強くなったストーリーになっているので、このアニメの原作改変も特に違和感無く受け入れられているように感じられます。むしろ、アニメから知って原作の第1巻を見た人のほうが「こんなギャグあったっけ?」と驚かされたのではと思います。なお、アニメイトタイムズで公開されている東宝と制作会社であるライデンフィルムのプロデューサー対談によれば、今回のアニメは原作5〜6巻の雰囲気が中心になっているそうです。*1
個人的にはぬるぬる動くキャラクターにも注目!
第2話まで何度もバドミントンの試合やラリーをしているシーンがあるのですが、どこを見てもとにかくキャラクターがぬるぬると動き、また羽を打つ一瞬がとにかく細かくキビキビとしているのです。
特に第2話の綾乃となぎさのダブルスの練習試合で綾乃が裏でスマッシュを返す瞬間や、ラストの健太郎となぎさの試合で最後になぎさが打ったジャンピングスマッシュは必見!
もはやアニメなのかと思わされる動きっぷりです。なぎさのジャンピングスマッシュの瞬間、太ももがきゅっとなるシーンや顔が晴れやかになるところも見どころですよ。
こちらはロトスコープ(モデルの動きを作画でトレースする書き方)に似た手法を使っており、動き一つ一つを違和感なく表現できる代わりに作画枚数が多くなると、インタビューで語っています。
一切の妥協を許さない、まさにプロの仕事!
このアニメは、青春部活モノが大好きな人には絶対オススメの作品になるのではないでしょうか? 筆者も(スポーツではないですが)『響け!ユーフォニアム』と似たような雰囲気だなぁと感じており、「部活ってこういうものだよなぁ」と感じてしまい、第1話からどっぷりハマってしまいました。
アニメが気に入った人には、原作を見るのもオススメです!
原作だとなぎさが(途中まで)お色気担当の要素もあるので、その艶めかしいボディをいろんな意味で堪能できますし、綾乃も同様にアニメ以上の子供っぷりを発揮しているので、さらに可愛いと思わせてくれますよ。
原作第1話はアフタヌーン公式サイトで、電子書籍では楽天koboやGoogle Play Booksなどで原作3巻まで無料(2018年7月15日現在)で読めるので、ぜひお試しあれ。
(Edit&Text/頭皮ぱっしょん )
テレビアニメ「はねバド!」公式サイト
©2018 濱田浩輔・講談社/「はねバド!」製作委員会
アフタヌーン 『はねバド!』1話試し読み
*1「はねバド!」TVアニメ化に感じた確かな手応え|プロデューサー対談【前編】 - アニメイトタイムズ