――「世界総人口の約8割が特異体質――“個性”を持って生まれる超人社会。これは、“個性”が無かった僕が、最高のヒーローになるまでの物語だ」
そんな主人公の語りから始まる、堀越耕平が描いた週刊少年ジャンプ連載のヒーロー漫画、『僕のヒーローアカデミア』(略、ヒロアカ)。
現代からほど遠くない未来、発光・発火・念動力・怪力・動物への擬態など、人間の8割が“個性”と呼ばれる様々な超常能力を身に付けながら生まれることとなった世界で、なんの“個性”も持たず生まれてきた少年・緑谷出久(みどりやいずく)(以下、デク)の成長や葛藤を、高い画力と演出力で描いた王道バトル漫画となっており、世代・性別を問わず高い人気を集めた漫画です。
そんな『ヒロアカ』の劇場版公開が発表されたのが2018年3月。待ち遠しさを胸に日々を過ごし、ついに「8月3日の公開日まであと少し」と言えるまでになりました!
今回はこの劇場版公開に向けて、劇場版までの『ヒロアカ』の復習と、劇場版の予習を行いたいと思います!
ボンズが魅せる漫画からアニメーションへの再構築
アニメーション作成会社として、『交響詩篇エウレカセブン』、『鋼の錬金術師 FULLMETAL ALCHEMIST』などを手掛けてきた株式会社ボンズ。
特に原作漫画を持つ作品に対して漫画の魅力を損なわずにアニメオリジナルのシーンを加え、場面をいっそう派手に見せるなど、高い技術力が評価されている会社として有名な制作会社です。
『ヒロアカ』は1期1クール・2期2クールを終え、現在は2018年4月から3期2クール目の放送を行っており、ポンズは作品の人気を大きく支える一手となっています。というのも『ヒロアカ』は限られた武器を使ってバトルをする作品ではなく、発火・発電・怪力・爆発・轟音、本当になんでもありの“個性”バトルものであり、バトルシーンがとにかくハリウッド映画並みにド派手なため、アニメ映像になったときに漫画以上のキャラの動きと演出が求められます。ボンズはこれに一切の妥協を見せず、まさに“アニメーションだからこそ”描ける最高のバトルシーンを視聴者に提供してくれているのです。
またストーリーも原作漫画を丁寧になぞった作りとなっているため、漫画を読んだことないという人はアニメ1話から観るだけで作品を充分に楽しめます。
漫画は読んでるけどアニメ全話を観る時間がないという人は、ぜひ1期の12話「オールマイト」の脳無vsオールマイト編、23話「轟焦凍:オリジン」の轟vsデク編、42話「僕のヒーロー」のデクvsマスキュラー編を観て、ボンズの描く“アニメだからこそのヒロアカ”を体感してください。
個人的には、40話「ワイルド・ワイルド・プッシーキャッツ」のAパート、クラス全員が協力して合宿所に辿り着くまでを描いたアニメオリジナルシーンが、前述した話数に比べ迫力こそ劣るもののキャラクターを完全に把握した魅せ方に仕上がっており、“アニメだからこそ”と言える場面では屈指の推しシーンです。
また23話のバトルシーンに関しては、ラジオ『僕のヒーローアカデミア ラジオ オールマイトニッポン』で轟焦凍を演じている梶裕貴さん本人が「映画館を貸し切って放映したいほど」と語っている迫力と臨場感を持っています。
果たしてその梶さんの台詞が伏線となったのか……ついにボンズの描く『ヒロアカ』が劇場で、映画館の大画面と音響で楽しめる。これ以上に人を興奮させる事があるでしょうか?
さらに劇場版は原作者の堀越耕平先生が原作・総監修・キャラクター原案を務めるとのこと。ファンとして、劇場公開が1日でも待ちきれないという状況になっているんです。
物語の舞台は「空白の夏休み」―-そういえば『ヒロアカ』の時系列って?
劇場版の舞台となるのは、「白熱の期末試験を終え、夏休みの林間合宿を控えた」時期となっています。その期間を空白期間と呼び、今回の劇場版で補填されるとのこと。
ひとつひとつの事件が大きいためあまり目立ちませんが、確かに『ヒロアカ』の世界だと実はあの林間合宿まで1学期分しか過ぎていないんです!
1学期までに起きた事件ごとの時系列と対応する巻数、キャラ関係の変化やデクの“個性”の経過を書き出しますので、劇場版は“このときのデク達”というのをはっきりと押さえ劇場版をもっと楽しめるように予習復習をしておきましょう!
【中学3年生 5月から2月】
・漫画:1話~2話(1巻収録)
デクがオールマイトと出逢い、雄英高校の入試を目指しトレーニングを始める。
2月にオールマイトから“個性”を引き継ぐ。
【中学3年生 2月から3月】
・漫画:3話~4話(1巻収録)
雄英高校の入学試験編。デクが麗日お茶子(以下:お茶子)、飯田天哉(以下:飯田くん)と出逢う。
“個性”はまだ全力でしか扱えない(即戦闘不能)状態。
【高校1年 4月以降】
・漫画:5話~7話(1巻収録)
雄英高校入学、クラスメイト全員+相澤先生の登場。
“個性”把握テスト編、指先だけに“個性”を集中させ行動不能を回避できるようになる。
・漫画:8話~11話(2巻収録)
コスチュームを用い、デク・お茶子ペアvs爆豪勝己(以下:かっちゃん)・飯田くんペアで戦闘訓練。
・漫画:12話(2巻収録)
学級委員を決める。
・漫画:13話~21話(2巻・3巻収録)
「ウソの災害や事故ルーム(通称USJ)」での救助訓練中、敵(ヴィラン)襲撃を受ける。
死柄木弔の登場。デク、初めて“個性”を人に向けて使い無意識でのセーブに成功。
・漫画:22話~44話(3巻・4巻・5巻収録)
体育祭編。轟焦凍(以下:轟くん)が冷却以外のもう半分の“個性”使用を始める。
・漫画:45話(6巻収録)
ヒーロー名を決める。
・漫画:46話~57話(6巻・7巻収録)
職場体験編(ヒーロー殺しステイン編)。デク、グラントリノ(オールマイトの元担任)の元で“個性”を育成し、「ワン・フォー・オール フルカウル」を習得。
飯田くん、轟くんと3人でヒーロー殺しステインと対峙する。
・漫画:58話~59話(7巻収録)
デク、オールマイトからワン・フォー・オールの成り立ちを訊く。(オール・フォー・ワンの存在を知らされる)
・漫画:60話~67話(7巻・8巻収録)
期末試験編。生徒2人ずつペアでプロヒーローの教師からの戦闘試験を受ける。
デク・かっちゃんvsオールマイト、八百万・轟くんvs相澤先生を中心に、各クラスメイトの活躍が描かれる。デクとかっちゃんが初めてまともに協力する。
・漫画:68話~69話(8巻収録)
死柄木弔がデクと接触を図る。ヴィラン連合(死柄木)の目的が明文化される。
・漫画:70話(8巻収録)
夏休み突入、すぐ林間合宿編へ突入。この70話間の空白が劇場版の物語となる。
以上が1学期までに起きた事件などの時系列です。
書き出してみるとその濃密さに、いかに雄英の日々、敵との対峙が過酷なものかを知らされてしまいますね。またこの時系列で行くと、デクは5%フルカウルの状態で劇場版の物語に参加するということになります。アニメ本編は既に林間合宿編を終え夏休みが終了しているので、劇場版を観た後に改めて林間合宿編を観るというのも楽しめそうですよね!
――努力・友情・勝利。
ジャンプの三大原則と言われたこれらの要素をあますことなく詰めながら、ヒーローが活躍する社会だからこそ生まれる闇も容赦なく描き出している『僕のヒーローアカデミア』。
主人公たちを熱く応援してしまう傍ら、敵側にも強いカリスマ性と感情移入の余地があり、デクたちの成長だけを楽しむに留まらない作品となっています。
そんな『ヒロアカ』が生み出す熱を、ぜひ劇場で体感しに行きましょう!
(Edit&Text/三井ハチ )
『僕のヒーローアカデミア』|集英社『週刊少年ジャンプ』公式サイト
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TV アニメ『僕のヒーローアカデミア』公式ホームページ
© 堀越耕平/集英社・僕のヒーローアカデミア製作委員会
『僕のヒーローアカデミア THE MOVIE ~2人の英雄~』公式サイト
©2018「僕のヒーローアカデミアTHE MOVIE」製作委員会 ©堀越耕平/集英社