人口2000人に満たない小さな村・雛見沢を舞台に、連続怪死・失踪事件を取り巻く謎を描いた『ひぐらし』シリーズ。
テレビアニメ『ひぐらしのなく頃に』(以下、1期)、『ひぐらしのなく頃に 解』(以下、2期)が2006年から2007年にかけて放送され、OVAが3本製作された人気作が、2020年秋より新作ストーリー『ひぐらしのなく頃に 業』として放送開始されました。
<画像引用元:https://higurashianime.com/news/article_0010.html より引用掲載 ©2020竜騎士07/ひぐらしのなく頃に製作委員会>
13年ぶりの新作ということもあり、シリーズ未視聴でも理解できる構成になっているとは思いますが、過去作の内容を踏まえておくと、より視聴の楽しみが増えるハズです。
そこで本記事では、新作をより楽しむために1期から2期で描かれた内容を紹介していきます。
※以下、『ひぐらしがなく頃に』、『ひぐらしがなく頃に 解』のネタバレを含みます。
◆物語は「古手梨花」のタイムリープによって繰り返される
<画像引用元:https://higurashianime.com/story/001_002.html より引用掲載 ©2020竜騎士07/ひぐらしのなく頃に製作委員会>
『ひぐらし』シリーズの舞台となる雛見沢村では、古くから古手神社の第1子が8代続けて女児だった場合、その子はオヤシロ様の生まれ変わりだと言われています。
その8代目にあたる人物が、主人公・前原圭一が通う雛見沢分校の下級生・古手梨花でした。彼女はオヤシロ様そのものである少女・羽入をその身に宿しながらも、昭和58年6月に死亡する運命にあり、その度に羽入の力で同じ時間を繰り返すことを強いられていました。
そんな折、雛見沢に圭一が引っ越してきたことで、この血塗られた運命が動き出すことになります。
本作では、彼女のタイムリープでさまざまな事件の真相を紐解きながら、物語が進行していきます。
◆数々の惨劇の引き金となった「雛見沢症候群」
<https://higurashianime.com/story/001_001.html より引用掲載 ©2020竜騎士07/ひぐらしのなく頃に製作委員会>
この「雛見沢症候群」は、本シリーズの根幹に関わる重要な感染症です。雛見沢の地でのみ観測されており、症状の軽い順にL1からL5+までに分類できます。L3以降を発症した場合は死に至ると言われ、その症状がL2以下に緩和することはありません。
発症には「精神が不安定だったり強いストレスを抱えていること」、「雛見沢の地を遠く離れていること」の2種類の条件があり、発症者は強い疑心暗鬼や人間不信を引き起こして、異常行動に走る傾向が見られます。
雛見沢に住む人々は全員感染しているとされていますが、発見者である鷹野一二三「は日常生活に支障はない」と言います。
作中で圭一たちが見せる異常な行動は、彼らの複雑な家庭環境や過去のトラウマから発症したことが原因でした。
◆雛見沢村で起きた惨劇を描く「出題編」と、未来を掴むための「解答編」
<画像引用元:(TVアニメ化10周年記念)(ひぐらしのなく頃に)全話いっき見ブルーレイ 販売元:Frontier Works Inc.(PLC)(D)>
本シリーズは、1期、2期を通してそれぞれ4つの出題編(「鬼隠し編」、「綿流し編」、「祟殺し編」、「暇潰し編」)と解答編(「目明し編」、「罪滅し編」、「皆殺し編」、「祭囃し編」)を中心に構成され、前述の通り、梨花の死よって昭和58年6月を繰り返すループ形式で物語が進行していきます。
ここでは、その複雑に絡み合った各編の内容を見ていきましょう。
ー4つの出題編ー
▼鬼隠し編(1期第1〜4話)
雛見沢村に引っ越してきた前原圭一は、同級生の竜宮レナと不法投棄されたゴミ山で宝探しをしていた。そこで、野鳥の撮影という名目で村を訪れていた写真家・富竹から、かつて雛見沢で起こったバラバラ殺人事件のことを聞く。
興味本位にその事件を探っていく中で、レナをはじめとした仲間たちが何かを隠していることを感じた圭一は、さらに疑念を募らせていく。
そして「綿流し」の夜、富竹が死んだことを地元の警察官・大石から聞いた圭一は、大石に雛見沢で起きた事件について聞くなどし、少しずつ核心に迫っていた。
ある日、村一番の有力な家系の孫娘・園崎魅音とレナが命を狙っていることを悟った圭一は、錯乱して2人をバットで殴り殺害。逃亡するが、圭一自身も一連の事件のような死を遂げた。
▼綿流し編(1期第5〜8話)
隣町の興宮に住んでいる魅音の双子の妹・園崎詩音と仲良くなった圭一。「綿流し」の夜に、村の診療所で看護師をしている鷹野や富竹、詩音とともに、村のタブーである古手神社の祭具殿への侵入という禁忌を犯した。
翌日、富竹と鷹野が死亡したと知った圭一は、その年の祟りに自分と詩音も含まれていると確信した。その後、殺されることを恐れながら過ごす圭一をよそに、詩音や村の住人が立て続けに失踪。
一連の失踪事件が園崎家の手によるものであると睨んだ圭一とレナは、事件に関与しているだろう魅音を問い詰めた。
事実を認めた魅音は逃亡を図ったが、不意に圭一の前に姿を現し、彼を刺してその後すぐに死亡。一命を取り留めた圭一だが、数日後には死んでしまった。
▼祟殺し編(1期第9〜13話)
圭一は、一連の連続怪死事件の中で家族を失った下級生のクラスメイト・北条沙都子を案じ、兄のように接していた。そして、梨花とともに生活していた沙都子の下に、姿を消していた叔父が現れ、彼女を虐待していると知る。
児童相談所に保護を求めるが、一向に動く気配がなく、業を煮やした圭一は「綿流し」の日に叔父を殺害して、彼女を解放することを選んだ。
ところが、翌日にはその死体が消えていた。叔父を殺害した事実を確かめるべく沙都子の家へ向かったところで、浴室でぐったりとしていた彼女を発見。その足で彼女を連れて梨花の家へ向かった圭一らが見たのは、梨花の死体だった。
それを見た沙都子は錯乱し、吊り橋へ逃げ込んだ。圭一も後を追うが、沙都子に川へと突き落とされた。
その後、雛見沢村一帯を覆うガス災害が発生し、村人が全滅。「雛見沢大災害」として世に知られることとなった。
▼暇潰し編(1期第14、15話)
昭和53年、ダム建設への反対運動の最中にあった雛見沢で、建設大臣の孫誘拐事件を捜査に来ていた刑事の赤坂衛が、幼い梨花と出会った。雛見沢がダムに沈むことを残念がる赤坂に、梨花は「雛見沢は沈まない」と言い、東京へ帰るよう告げる。
翌日、誘拐された孫の所持品が発見されたことで、事件は解決したが、東京へ残してきた赤坂の妻は死亡。その事実を知らぬまま夜の雛見沢を眺める赤坂に、梨花は今後5年の内に起こる事件の予言した。
東京へ戻ってから妻の死を知った赤坂は、梨花の予言が正しかったのだと思い知る。そして、彼女は自身の予言通り殺害され、雛見沢大災害が発生した。
ー4つの解答編ー
▼目明し編(1期第16〜21話)
「綿流し編」の解答にあたる話で、連続失踪が詩音によって引き起こされていたものだと明かされている。
沙都子の兄・北条悟史に恋をした詩音。昭和57年に起きた北条家の叔母が死亡した事件の犯人として悟史が疑われ、詩音は彼をかばうために正体を明かした。
警察から情報を受けた園崎家が詩音を呼び出し、爪を3枚剥がす罰を科し、それで全てを許すと約束する。
ところが、その罰を受けた直後に悟史が失踪し、詩音はその原因が園崎家にあると踏んだ。魅音に問いただしたところ、自身と同様に爪を剥いでいることを知った詩音は、一旦は園崎家を信じることに。
しかし、翌年になってその信頼は裏切られ、詩音の中の鬼が目覚める。怒りに狂った詩音は、双子である魅音の存在を利用して御三家を手にかけ、果ては悟史の実妹である沙都子さえ殺し、最後には自身も自宅マンションから転落死した。
▼罪滅し編(1期第22〜26話)
「鬼隠し編」への解答であり、物語の前提であるタイムリープ要素が明確になった話でもある。
レナは、父に離婚した母からの慰謝料を狙って近づいた女とグルの男がいることを知り、父を傷つけさせたくない一身でその2人を殺害した。事情を知った圭一たちは、死体の処理を手伝うことに。
その後、発見を危惧した魅音が園崎家の力で別の場所へ隠したが、それを裏切りと思ったレナは、仲間たちの下から姿を消した。
レナを止められなかったことを悔いる圭一だが、不意に、知るはずのない自身がレナと魅音を殺めた「鬼隠し編」での過ちが脳裏をよぎり、今後こそ彼女を救うと決意。
再び姿を現したレナは学校で子供たちを人質に立てこもり事件を起こすが、圭一と一騎打ちの末に解決された。しかし、圭一の活躍虚しく、村はガス災害によって滅ぶこととなる。
この一連の中で、タイムリープの役を担っているのが梨花であることが明かされ、仲間の信頼を得ることが終わりなき惨劇から抜け出す鍵であると示された。
▼皆殺し編(2期第6〜13話)
「祟殺し編」への解答とともに、物語全体の核心に迫る要素が多く語られている。
度重なる失敗の中でループからの脱出を諦めかけていた梨花だったが、「罪滅し編」を通じて、圭一が違う時間軸でのことを覚えていることに気付き、そこに希望を見出す。
また、この時間軸では、沙都子の問題が叔父を殺害ではなく児童相談所による保護という形で解決したこと、昭和58年の雛見沢に赤坂が訪れていたことから、事態が好転している手応えを感じ、運命に抗うことを決めた。
結果としては一手及ばず、「雛見沢大災害」が起こるのだが、梨花が死の寸前まで犯人をその目に焼き付けていたことで、一連の事件の背後には、どの時間軸でも「綿流し」の夜に必ず死亡あるいは失踪したものと思われていた看護師の鷹野が関与していると判明した。
ストーリーの根幹となる「雛見沢症候群」についても言及され、惨劇の多くがこの雛見沢特有の風土病によって引き起こされてきたことも、示唆さされている。
また、この「雛見沢大災害」と呼ばれる住民の大量死は、感染症の集団発生を恐れた鷹野ら秘密組織が、雛見沢村民を虐殺した事件を隠匿するために作り出された偽りの災害だった。
▼祭囃し編(2期第14〜24話)
物語の真相が明らかになる最終章。
鷹野は、所属している秘密組織「入江機関」を裏から操り、圭一たちを追い詰めようとする。しかし、「皆殺し編」で黒幕が鷹野であると知った梨花は、打てる手を全て打つべく動いた。
梨花は、これまでの記憶を打ち明けることで仲間たちの信頼を勝ち取り、ずっと傍観者であり続けた羽入をも表舞台に立たせることに成功。また、赤坂と大石ら警察や、鷹野と同じく「入江機関」に属する富竹や所長の入江までも味方につけ、ついに血塗られた昭和58年6月を脱することに成功した。
◆再び昭和58年6月に戻ってしまった古手梨花と羽入
これまで語ってきたような、困難の末に得た平穏が再び血に塗れてしまうと判明したのは、『ひぐらしのなく頃に 業』第2話冒頭での梨花と羽入のやりとりです。
不思議な空間で目を覚ました梨花の目の前に羽入が姿を現し、梨花に自分たちが昭和58年6月に戻っていることを告げます。
その宣告に「また繰り返せって言うの!?」と絶望感を露わにする梨花の表情が、やるせなく思えてしまいました。
しかし、再び呪われた運命を打ち砕くことを決意した彼女は、諦めることなど考えもしなかったようにも見えます。
一度は絶望の連鎖を断ち切った梨花が、いかにして今度のループを脱出に導くのかが楽しみですね。
――現在『ひぐらしのなく頃に 業』では、「鬼隠し編」をなぞるように話が展開していますが、物語の分岐はどこにあるのでしょうか。
また、今作でもこれまで同様に出題編と解答編に分かれると予想され、そこで描かれるミステリー要素からも目が離せません。
時には視線を逸らしたくなるような描写が多い「ひぐらし」シリーズですが、再び困難な運命に打ち勝つであろう本作の結末を、ぜひ見届けてみませんか?
(Edit&Text/叶梢)
©2020竜騎士07/ひぐらしのなく頃に製作委員会