◆かつては過激な表現はNGだったけど……
<画像引用元:Amazon.co.jpより>
かつては、『地獄楽』のような過激な描写は敬遠されていて、原作の過激なグロテスク描写はアニメ化の際、たびたび変更されてきました。
たとえば顕著な例として、2002年に放送されたTVアニメ『SAMURAI DEEPER KYO(サムライディーパー キョウ)』があります。
本作は戦国時代末期の凄腕の剣豪である賞金首「鬼眼の狂」を主人公に、強者達の戦いが描かれた作品です。
原作漫画を元にTVアニメ化されたものの、アニメ化の際には原作漫画にあった身体をバラバラに斬ったり、流血するシーンは極端におさえられます。
しかも原作では人間だったはずの敵が戦いの途中で“剣妖”と呼ばれるクリーチャーに変身するアニメ独自の要素が加えられ、あくまでも人間が人間を殺す描写は描かないという大幅なアレンジが加えられていました。
『SAMURAI DEEPER KYO』のような前例を思うと、20年以上を経た現在はまったく違う時代に突入しています。
いまや誰もが存在を知る『鬼滅の刃』しかり、MAPPAのヒット作『呪術廻戦』や『チェンソーマン』しかり、いずれの作品にも過激な殺し合いの描写が登場します。むしろ昨今のヒット作にはダークファンタジーな要素やバイオレンスな描写が必要な要素といわんばかりの状態です。
それに加え前述の作品達はいずれも『週刊少年ジャンプ』発の作品。『地獄楽』がアプリ『少年ジャンプ+』出身作で、若干出どころが違うとはいえ『ジャンプ』系の作品です。
しかも同じ『ジャンプ+』の『SPY×FAMILY』も大ヒット作品になったことを踏まえると、『地獄楽』はここ数年の人気アニメたちとかなり近い要素を持った作品といえます。
グロありという点から考えると万人の人気を獲得するような作風とはいえない、という考えはもしかするといまや過去のものかもしれません。
今年の春アニメの中でどれだけ『地獄楽』が頭角を現していくのかで、その答えも見えてきそうです。
〈文/ネジムラ89〉
《ネジムラ89》
アニメ映画ライター。FILMAGA、めるも、リアルサウンド映画部、映画ひとっとび、ムービーナーズなど現在複数のメディア媒体でアニメーション映画を中心とした話題を発信中。缶バッチ専門販売ネットショップ・カンバーバッチの運営やnoteでは『読むと“アニメ映画”知識が結構増えるラブレター』を配信中です。Twitter⇒@nejimakikoibumi