◆宿儺は火の神様だった?
次に考えられる宿儺のモチーフは、インド神話の火の神「アグニ」です。
アグニはインド神話に登場する神の1人で、全ての火を象徴とする火の神様です。火という身近な存在のためか、アグニは神と人間の仲介者という役割を持っており、祭火へ投じた供物はアグニによって神へ届けられると考えられています。
また、この神は2つの顔、4つの腕を持つ姿で描かれることが多く、外見だけ見ても宿儺と似ていると言えるでしょう。そのためか、星野之宣氏が描いた漫画『宗像教授伝奇考 2巻』では古代にインドから日本へ渡来してきた人たちがアグニを崇拝し、ほかの要素と混ざりつつ両面宿儺のイメージを形成したのではないかと推察されていました。
それでは、『呪術廻戦』に登場する宿儺にもアグニとの関連性は見られるのでしょうか。宿儺とアグニの関連を示す要素は「食事」と「伏魔御廚子」の2つです。
まず食事では、宿儺とアグニには食事を味わうという共通点があります。宿儺は『呪術廻戦 公式ファンブック』で趣味・興味に食べる事と明記されていました。一方、アグニは祭火へ投じた供物を舌で味わうと言われており、宿儺もアグニも食へ興味があることは明白です。
次に関連を示す事項として、宿儺の領域展開「伏魔御廚子」の「御廚子」が仏像を安置する仏具であることが挙げられます。
御廚子はかつて調理道具をしまう入れ物という意味だったことから、宿儺と料理の関連性を示しているのではないかとファンの間でいわれていました。しかし、仏像を安置する仏具という点から、神であるアグニとも関連があると言えるでしょう。
また、伏魔御廚子を使用した際、御廚子には大きな口が描かれていますが、この点もアグニと関連があるといえます。アグニの誕生に関して諸説がありますが、その一つにアグニは宇宙の根源とされるプルシャの口から生まれたとされる説があるのです。これらの共通点を考えると、偶然というにはできすぎているでしょう。
さらに、五条は宿儺の伏魔御廚子を受けて、「「伏魔御廚子」の中心はあの御廚子であって宿儺ではないみたいだな」と発言していたことから、御廚子が重要な存在であると考えられます。これらの共通点や五条の発言から、もしかしたら、御廚子の中には宿儺のモチーフとなったアグニの仏像が入っているかもしれません。
このことから宿儺はインドの火の神であるアグニがモチーフとも考えられます。
──物語が佳境に入った今でも宿儺は謎に包まれ多くの考察がされています。今後、繰り広げられる虎杖・日車VS宿儺の戦いで宿儺の謎は明らかになるのか、本誌の展開に注目が集まります。
〈文/林星来 @seira_hayashi〉
フリーライターとして活動中。子供の頃から培ってきたアニメ知識を活かして、話題のアニメを中心に執筆。アニメ以外のジャンルでは、葬儀・遺品整理・金融・恋愛などの記事もさまざまなメディアで執筆しています。