◆手拍子の恐怖!呪術師の存在意義
第4話が夏油が心変わりをするきっかけを描いたとしたら、第5話は夏油が別の道へと歩んでいく過程をじっくりと描くエピソードとなっていました。
あまりにも異常なほどの力を手に入れてしまったかつての相棒、五条。その一方では、際限なく呪霊を祓い続ける宿命を前に、身の回りの後輩呪術師が任務によりおそらく下半身がなくなっているであろう状態で帰ってくる始末。
そしてついには呪術師、もしくは自身の存在意義を悩んでいる最中に現れた九十九由基の「非呪術師を間引いていけば、呪霊のいない世界に近づける」という助言……これらがすべて五条の第4話での五条の問いかけの瞬間に結びついて、夏油の気持ちに変化を与えます。
この変化は果たして、五条との間に生まれた力量差のせいなのか、不当な呪術師への扱いへの理不尽さに対する反発なのか。はたまたそれ以外なのか、そのどちらもなのか。そこは想像の余地があるでしょうが、はっきりと分かるのは夏油にとって第4話の五条が問いかけたあの瞬間が頭から離れないであろうことです。
その証拠に第4話はこれでもかと“拍手”の音が何度も登場します。九十九から、非術師を間引く話を肯定される瞬間から雨が降りだします。
しかしこの雨音がかつての盤星教の拍手の音のようにも聞こえます。九十九の「秘術師は嫌いかい?」という質問に対して、夏油が具体的に盤星教の人たちをイメージしてるのかが分かるような演出となっていました。
そして最後に、夏油が解体されたはずの盤星教の残党の前に立った際にも、BGMのように手拍子が鳴り続けます。果たしてこれは実際に信者たちの拍手なのか。それとも夏油の脳内なのか。その最後の手拍子はどこかまばらで無秩序。ここでは夏油の将来の不穏さを表しているようでもありました。
◆もう一つ忘れちゃいけない手拍子演出?
そしてここでもう一つ、TVアニメ『呪術廻戦』2期には手拍子があったことを思い出します。それが第2期のオープニング映像。
キタニタツヤさんの「青のすみか」に合わせて、若かりし五条の青春時代が描かれていき、それ自体が本編のダイジェストのようにもなっていたのですが、実はこの映像の中にも手拍子が挟まれていました。
この手拍子は実際に楽曲にも挿入されているものです。この手拍子に合わせて五条たち高専生が手拍子でもしている様子を挟んだのかな? とぼんやり思っていましたが、こういった形で本編で手拍子が意味深に使われていることを考えると、オープニングで手拍子をしているのが盤星教の人たちであったことが分かります。
しかもよく見れば袖口も白いので、かなり狙って描いています。爽やかで軽快なオープニングだったのですが、第5話まで見るととんでもなく悪趣味な演出として使われていたことが分かる驚きの仕掛けでした。
また、見事なのはこれらがTVアニメ独自の演出である点です。原作漫画にはない「類似音(雨音と拍手)」や「オープニング」といった“装置”だからできた演出となっており、制作陣の工夫が感じられる部分となっています。
第6話からは再び虎杖たちの物語が描かれることが発表されていますが、こうしてTVアニメ独自の演出が盛り込まれているとなると、今後も原作ファンも「あっ」と驚く仕掛けが用意されていてもおかしくなさそうです。
〈文/ネジムラ89〉
《ネジムラ89》
アニメ映画ライター。FILMAGA、めるも、リアルサウンド映画部、映画ひとっとび、ムービーナーズなど現在複数のメディア媒体でアニメーション映画を中心とした話題を発信中。缶バッチ専門販売ネットショップ・カンバーバッチの運営やnoteでは『読むと“アニメ映画”知識が結構増えるラブレター』を配信中です。Twitter⇒@nejimakikoibumi