映画『ジュエルペット あたっくとらべる!』の公式サイトを開くと、ラブラがそんな願望を口にしている姿が目に飛び込んできます。

<出典:映画『ジュエルペット あたっくとらべる!』公式サイト ©2008,2019 SANRIO/SEGA TOYS>

 ラブラってそんな口調でしたっけ、とかなぜピンポイントに省単位での訪問を希望しているのか、とか色々ツッコミどころがあるのですが、何よりも恐ろしいのが、ラブラは一向に四川省へは行けずに2年間もの間、ここで四川省への熱い思いを訴え続けたことにあります。

 『ジュエルペット あたっくとらべる!』は、長らく公開されないまま、このままお蔵入りになってしまうのではないかと心配されていたアニメーションでした。しかし、2022年に入りついにお披露目の場が設けられることが発表されます。

 『ジュエルペット あたっくとらべる!』になにが起きたのか、そしてどう公開されるのでしょうか

◆『ジュエルペットあたっくとらべる!』発表からの即延期!

 時は遡ること2019年12月、TVアニメ化10周年を迎えた節目に『ジュエルペット』の完全新作アニメーションとして、『ジュエルペットあたっくとらべる!』の劇場公開が発表されました。本作は『ククリレイジュー三星堆伝奇ー』という中国四川省の実在の遺跡を舞台にした日中合作アニメーション映画の併映作品として公開される予定でした。

 ストーリーはイルカ先生と修学旅行に行くことになったジュエルペットのルビー達が、“今一番ホットな中国の『四川省』”へ向かうというもの。当時そこまで四川省ブームが来ていたのかどうかは首を傾げるところですが、それも含めてどんな内容になるのかが楽しみな作品だったわけです。

 しかし、2020年2月に公開を発表していたものの、公開発表からわずか約2ヶ月の2020年1月末、“製作の諸般の事情により”公開時期の延期を発表します。上映の約2週間前という急なタイミングでの発表でした。

 当時はまさに新型コロナウイルス感染症が世界規模で流行しだした頃。具体的な延期理由は明らかになっていないものの、そういった時勢が要因の一つであったことは、容易に想像できます。

 問題はこの延期発表からパタリと一切の続報が発表されないことにあります。2020年の映画に後続で延期を発表した映画達が半年もしくは一年かけて、上映にこぎつけていく中、それらに先駆けて延期を発表した『ジュエルペットあたっくとらべる!』は一向に続報が発表されないままでした。こうして2020年公開の文字と、ラブラが四川省に行きたがるというシュールな絵面を残したまま、『ジュエルペットあたっくとらべる!』の公式サイトは今もなお、沈黙を続けています。

◆2022年BD-BOX発売によりついに復活!

 このまま時を止められたまま、ラブラは四川省に行けないのではないかと思いきや、2022年のここに来て、続報が発表されます。

 TVアニメ『ジュエルペット サンシャイン』の全話を収録したBD-BOXが7月27日(水)に発売されることが発表され、このセットに、劇場未公開作品のままとなっていた『ジュエルペットあたっくとらべる!』も収録されることが明らかになったのです。

 しかも発売を記念して、5月14日(土)の19:00〜よりニコニコ生放送で『おったまげ!「ジュエルペット サンシャイン」&「ジュエルペット あたっくとらべる!」オンライン上映会』が実施されることが発表されました。なんと無料で、どこよりも早く『ジュエルペットあたっくとらべる!』が観られるという機会が設けられることとなったのです。このオンライン上映会では、ファンの投票によって上位10作品も楽しめるということで、待望の新作だけでなく懐かしのエピソードも楽しめる、たっぷりジュエルペットに浸れる機会となっています。果たして、ラブラは四川省へ行けるのか。みんなでリアルタイムで見守る時が来たわけですね。

◆『ククリレイジュ-三星堆伝奇-』は一体どこへ?

 無事お蔵入りは免れたということで、めでたしめでたしと言いたいところなのですが、今度は別の問題が生まれています。

 本来併映作品となっていた『ククリレイジュ-三星堆伝奇-』の公開予定がいまだに発表されていないままなのです。『ジュエルペットあたっくとらべる!』が別の形で公開されるとなると、一緒に上映されるはずだった『ククリレイジュー三星堆伝奇ー』としては立場がありません。とはいえ、ジュエルペットとは違い、劇場オリジナル作品となると、元々のキャラクターに対するファンも居ないため、興行が難しくなってきます。そもそもせっかく四川省をフィーチャーした作品でありながら、未だ海外旅行がしづらい時勢にあることは、作品にとってももったいないタイミングではあります。

 『ククリレイジュ-三星堆伝奇-』の原作・総監督を務める黄軍氏は中国のアニメーション監督ですが、最近では中国とニュージーランド合作の『Mosly』の共同監督にも名を連ねていたりと、本作以外にも国際的な活躍をしている人物です。

 近年国外進出が目覚ましい中国アニメーション界を背負って立つ一人という意味でも『ククリレイジュ-三星堆伝奇-』には、どうにかお披露目の場を設けてほしいです。

 果たして『ククリレイジュ-三星堆伝奇-』が公開される日は来るのか。次は我々が「四川省に行きたいよ〜!」と訴え続ける番がまわってきてしまいました。

〈文/ネジムラ89〉

《ネジムラ89》

アニメ映画ライター。FILMAGA、めるも、リアルサウンド映画部、映画ひとっとび、ムービーナーズなど現在複数のメディア媒体でアニメーション映画を中心とした話題を発信中。缶バッチ専門販売ネットショップ・カンバーバッチの運営やnoteでは『読むと“アニメ映画”知識が結構増えるラブレター』(https://note.com/nejimura89/m/mcae3f6e654bd)を配信中です。Twitter⇒@nejimakikoibumi

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