◆ディズニーは2000年代に再び低迷する──

 作品の内容だけをなぞると、なぜあまり知名度がないのか? というほど違和感のない続編となっていますが、実際の映像作品を見るとあまり知られていない理由も分かります。

 そもそもOVAということもあり当時から観る方法が限られていたうえ、劇場で公開する映画のような潤沢な資金や製作の体制をそろえることもできず、映像のグレードダウンぶりは否めませんでした。

 そもそもこれらの続編が制作された2000年代のディズニーは、長編映画でもあまりヒット作に恵まれず企業的にも再び伸び悩んだ時期でした。

 そんな状態だったこともあり、『リトル・マーメイド』に限らず、『ムーラン2』や『ターザン2』、『ノートルダムの鐘2(2の表記は正しくはローマ数字)』、『シンデレラ3 戻された時計の針(3の表記は正しくはローマ数字)』などなど往年のヒット作の続編を乱発しており、その姿勢は当時から非難の声が上がっていました。

 この流れは、ピクサー社からやってきたジョン・ラセター氏がチーフ・クリエイティブ・オフィサーとして作品制作に携わるようになり『塔の上のラプンツェル』や『シュガー・ラッシュ』、『アナと雪の女王』といった大ヒットとなる新作シリーズを作るようになり変わっていくのですが、2010年代のディズニーの再起もあり、2000年代の作品の多くが影に隠れる存在となってしまいました。

 そんな流れから迎える2010年代の後半から2020年代。ディズニーの新たな流れとして生まれているのが『美女と野獣』や『アラジン』といった往年の長編アニメーション映画の実写化です。

 これらの実写作品はしっかり世界的なヒット作となっており、“ディズニールネッサンス”の仲間たちが活躍する中、ついにその実写化のバトンが『リトル・マーメイド』に回ってきたわけです。

 “『リトル・マーメイド』の次”を作ろうと挑戦してきたディズニーが「今度こそ」として生み出す実写映画『リトル・マーメイド』。そんな歴史の厚みを踏まえて観ることで、よりディズニーが新作の『リトル・マーメイド』を作ることの意味が見えてきそうです。

〈文/ネジムラ89〉

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《ネジムラ89》

アニメ映画ライター。FILMAGA、めるも、リアルサウンド映画部、映画ひとっとび、ムービーナーズなど現在複数のメディア媒体でアニメーション映画を中心とした話題を発信中。缶バッチ専門販売ネットショップ・カンバーバッチの運営やnoteでは読むと“アニメ映画”知識が結構増えるラブレターを配信中です。Twitter⇒@nejimakikoibumi

※サムネイル画像:https://www.disney.co.jp/movie/littlemermaid より


実写『リトル・マーメイド』|映画 - ディズニー公式|Disney.jp

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