各話ラストに絶妙なタイミングでイントロが流れ出すのが印象的な、「きっと青春が聞こえる」。
歌詞は、3年間という限られた高校生活という時間の中で、夢を追う仲間と一緒に、苦楽を共にした青春の思い出を綴ったようにみえますよね。
この解釈は間違ってはいませんが、1期第1~8話までを続けて観ていた際、私はこの曲の歌詞には穂乃果たちと、μ's加入前の絵里の絆の深さが隠されていることに気がつきました。
廃校を阻止したいという気持ちは同じ
μ'sは、音ノ木坂学院を廃校から救うため、2年生メンバーで活動を開始します。
穂乃果たちが、廃校を阻止するため、生徒会にアイドル部の部活申請した際、生徒会長の絵里は、穂乃果たちの活動をただの思いつきで始めた中途半端なものとみなし、彼女たちを一蹴しました。
この時の絵里は本気で穂乃果たちの活動を良く思っておらず、学園の恥さらしとまで思っていたのでしょう。
生徒会長である絵里は、生徒の代表としてなんとか廃校を阻止したいと一人孤軍奮闘しており、ハッキリいって穂乃果たちは邪魔な存在だったのかもしれません。
μ'sを邪険に扱っていた絵里の心境を変えたのは、第3話、穂乃果たちがファーストライブを行ったときです。
μ'sのファーストライブは、ほぼ無観客状態であり、絵里は彼女たちに、「身の程を知ったでしょ」、と厳しい発言をします。
ですが、穂乃果は「楽しいからμ'sを続けていきたい」、「いつかこの講堂を満員にしてみせる」と、絵里の予想に反したポジティブな発言をしています。
穂乃果自身、ライブのために練習を積み重ね悔しかったでしょう。
しかし、それでも楽しいからやりたい、廃校を自分たちで阻止したいという気持ちを言葉にしました。
その時、絵里はやり方は違えど、穂乃果たちと自身の音ノ木坂学院を廃校にしたくないという気持ちは本気であることに気づいたと考えられます。
絵里自身も気づかなかった内に秘められた嫉妬心
ファーストライブ後も、絵里は強情な性格かつ、生徒会長という立場ゆえに、μ'sの活動を良く思っていない旨の発言をたびたびしました。
しかし、「これからのSomeday」のPVによってμ'sの知名度と人気が上がったこと、妹のアリサがμ'sのファンになっていたことで、言動とは裏腹に内心ではμ'sを認めているような素振りを少しずつ見せるようになります。
第8話にて、絵里は「歌もダンスもなってないけど、人気があるのは認める」といった発言をしたことは、初めて彼女がμ'sを認めた発言でした。
そして1話さかのぼり、第7話において理事長の口から
「オープンキャンパスの来場者が少なかった場合、廃校を決定する」
という言葉が出て、ストーリーに転機が訪れます。
穂乃果たちも絵里も、迫るオープンキャンパスまでに、廃校を阻止すべく、行動を起こしました。
μ'sは、絵里のダンスに衝撃を受けた海未の提案により、彼女にダンスを教わり、厳しい練習に耐え抜きます。
一方、絵里は、がむしゃらになんとか廃校を阻止しようと、孤軍奮闘に乗り出しました。
そんなある日、アリサに「これが本当にお姉ちゃんのやりたいことなの?」と問いただされます。
自分がやっていることは無駄なのかもしれない……。少なからず絵里は自分の行動に対してそんな気持ちを抱いていたかもしれません。
それが、アリサの言葉によって、「無駄かもしれない」の“かもしれない”が無駄であり、自分一人ではどうしようもできないという苦悩が視聴していて伝わってきました。
にこや海未が言っていたように、絵里は、自分一人で空回りしている渦中、ひたすら前向きに「やりたいから」という純粋な気持ちで活動し続け少しづつ「成功へ近づく」μ'sに対し、自分でも気づかぬうちに嫉妬心を抱いていたはずです。
そのような気持ちが本人の気づかぬところで、負の感情となり、μ'sを最後まで認めようとしなかったのではないでしょうか。