◆3DCGアニメーション化の前例や感触を再現する可能性
一方で実はストップモーションアニメーションからCGアニメーション化を果たした前例は『PUI PUI モルカー』以外にもすでに存在します。
代表的な作品ではスイス生まれのクレイアニメーション『ピングー』があります。コウテイペンギンのピングーが、独自の言語とコミカルな動きで魅せるアニメーションは世界的にも人気を獲得しました。
そんなピングーは日本のダンデライオンアニメーションスタジオによって2017年に『ピングー in ザ・シティ』として3DCGアニメーション化を果たしています。舞台が街へと移動するなどのリニューアルは実施されるものの、作中に登場する表現などは海外でも通じるような工夫がされていて、実際に国外での放送も実施されています。
海外の例ではロシア生まれの『チェブラーシカ』もあります。一時は日本でのストップモーションアニメーションでの新作映画も制作されたキャラクターですが、現在では日本での展開は一区切りを迎えています。現在は本国ロシアでの展開が中心となっており、3DCGを用いた新作が制作されていたり、実写化など従来の手法から離れた映像化が実施されています。
これらの前例を考えると、今回のモルカーのストップモーションアニメーションからCGアニメーションへ移行するのは“ひとつのよくあるパターン”として受け取れるでしょう。しかも最近の3DCGアニメーション技術の進化は凄まじく、制作費用や制作期間の大差こそあれど、ポテンシャルでいえば『トロールズ』シリーズのようにフエルト風の質感をCGで再現することは可能です。
──今回の『PUI PUI モルカー』の特報映像こそわずかな内容でしたが、そこで登場したモルカーの動きはしっかりストップモーションアニメーションシリーズを踏襲したものとなっていました。ぜひとも公開される新作映画でも従来のストップモーションアニメーションのモルカーのファンを唸らせるような馴染みのある出来ばえで、なおかつCGであることを活かした作品が登場することを期待したいです。
〈文/ネジムラ89〉
《ネジムラ89》
アニメ映画ライター。FILMAGA、めるも、リアルサウンド映画部、映画ひとっとび、ムービーナーズなど現在複数のメディア媒体でアニメーション映画を中心とした話題を発信中。缶バッチ専門販売ネットショップ・カンバーバッチの運営やnoteでは『読むと“アニメ映画”知識が結構増えるラブレター』を配信中です。Twitter⇒@nejimakikoibumi