◆元の『もののけ姫』はどんな話なのか?
絵本『もののけ姫』の主人公は1匹の大きな“もののけ”と1人の少女の物語でした。
ある日、一人の武将がうっかり大きな“もののけ”の住処に迷い込んでしまいます。武士は命を見逃す代わりに自身の三人の娘……つまり自国の姫からひとりを嫁として捧げるという約束をもののけとしてしまいます。
この約束により武士はものけけから逃れることに成功するのですが、情けない約束をしてしまう不甲斐なさや、すでに敵軍が迫ってきていたことから、奥さんや一番目と二番目の姫には国へと帰らされてしまうのです。残されたのは武将と、そんな父すらも心配する三番目の姫だけでした。
さらにそこへ悪霊が乗り移った巨大な鬼瓦が現れます。武将の心につけ込み、恐ろしいほどの強さを得る代償にその身体を渡すように取引を迫り、武将は悪霊にその身体を取り憑かせてしまいます。悪霊と取引をした真実を知っている三番目の姫は、結局悪霊からも疎まれ、もののけのところへと追い出されてしまいました。
こうして三番目の姫はもののけの所へ嫁がされ、もののけは喜びます。しかし、悪霊に取り憑かれてしまった父のことを心配する三番目の姫は、父を人間に戻すまでは嫁になるわけにはいかないと、頑なに譲りません。これにまいったもののけは、三番目の姫とともに父親を助けるための冒険に出ることになります──。
もののけの嫁となってしまう姫……ということで、このあらすじを踏まえるとなぜタイトルが『もののけ姫』なのかが分かりやすいでしょう。
しかも、作中で三番目の姫のことは“三の姫”という名前で語られていきます。実は映画『もののけ姫』に登場する山犬に育てられた人間の子供「サン」という名前は、この“三の姫”というキャラクターから来ている名前だったのです。