◆かわいく魅力的なキャラクター“もののけ”
この絵本『もののけ姫』の物語の面白さは、なんといっても最初は悪いキャラクターだと思われた“もののけ”が、味方として奮闘してくれるところにあります。三の姫のために身体を張って奮闘するもののけの姿には、物語を進めて読んでいくほど、好きになっていくような魅力があります。
そもそも、この作品は宮崎駿監督自身が『美女と野獣』をベースにしていることを明言しており、父のために娘が野獣のもとで暮らすことになる物語と考えると確かに重なる部分があります。そういった背景からも元からもののけを悪しきものとして描いてないことが分かるでしょう。
さらに、もののけを愛らしく思える一番の要因がそのキャラクターデザインです。大型で寸胴な猫のような姿のもののけ。そのルックにはどこかトトロっぽさもあり、不気味さよりもかわいさが勝るようなデザインになっています。
しかもこの見た目で動きはなかなかに身軽で、コウモリの羽のような道具を使って空を飛んだりといったアクションも見せてくれました。
今にして思うとこちらの『もののけ姫』もアニメーションで観てみたかったという気持ちになるのですが、もののけの動きなどはまさに『となりのトトロ』のトトロの挙動を見ると想像しやすいのかもしれません。
残念ながらこの絵本『もののけ姫』は絶版となっており、オークションやフリーマーケットアプリなどでもプレミア品として定価よりも高い値段で取引されている状態なので、実際に手にとって見るのは難しいかもしれませんが、図書館などに所蔵されていることもあるので、気になる人は探してみてトトロのような姿のもののけの活躍を確かめてみてください。
ちなみに絵本の出版よりもさらに前の1983年に講談社から出版された『宮崎駿イメージボード集』という本にも、この絵本『もののけ姫』のイメージボードが収録されているのですが、さらにこちらは希少性が高いので、こちらを先に見つけることができたらもっとラッキーかもしれません。
〈文/ネジムラ89〉
《ネジムラ89》
アニメ映画ライター。FILMAGA、めるも、リアルサウンド映画部、映画ひとっとび、ムービーナーズなど現在複数のメディア媒体でアニメーション映画を中心とした話題を発信中。缶バッチ専門販売ネットショップ・カンバーバッチの運営やnoteでは『読むと“アニメ映画”知識が結構増えるラブレター』を配信中です。Twitter⇒@nejimakikoibumi
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