◆ちっとも教育的な映画じゃない!?──『ピーターラビット』(2018)
リアルなウサギの再現はここまで来たのかと驚かされたのが、2018年に公開された『ピーターラビット』です。
イギリスの湖水地方で、いとこのベンジャミンや3人の妹たちと暮らしていたウサギのピーターラビットが、自分たちを大切にしてくれる女性・ビアを巡って、近所に引っ越してきたばかりの青年トーマスと取り合い、激しい戦いを繰り広げるというもの。
落ち着いたおしゃれなタッチのイラストが印象的な原作や、牧歌的な雰囲気をイメージする人も多いかもしれませんが、こちらの映画シリーズは冒頭で「ほんとごめんね、これ、そういう教育的な映画じゃないの」というナレーションが入るほど、オリジナル要素を盛り込んだ娯楽エンターテイメントに振り切った作品です。
『ピーターラビット』をあまりよく知らないという人も“やたらリアルなんだけどありえないアクションを繰り広げるウサギ”を存分に楽しむことができます。
◆畑を荒らすウサギたちに困った人たちは?──『ウォレスとグルミット 野菜畑で大ピンチ!』(2005)
ストップモーションアニメーションの老舗であるアードマンの看板シリーズ、ウォレスとグルミットにもウサギ映画があります。それが2005年に公開された『ウォレスとグルミット 野菜畑で大ピンチ!』です。
畑を荒らすウサギたちに困っていた住人のために、ウォレスとグルミットのコンビが害獣駆除隊として大量のウサギの捕獲に挑みます。
しかし、捕まえたはいいもののウサギを殺せないウォレスは、自身の発明でウサギを野菜嫌いにしようと考えるのですが、その試みが思わぬ形で巨大なウサギを生み出す事件へと繋がっていきます。
『ひつじのショーン』などでもおなじみのハチャメチャギャグは本作でも健在。「第78回アカデミー賞で長編アニメーション賞」を受賞していたり、制作には5年以上の月日がかかっていると聞くと、重厚な作品を想像してしまいますが、難しいことを考えずにゲラゲラ笑って楽しめる作品です。
◆2023年夏には新作映画が上映!──『美少女戦士セーラームーンEternal』(2021)
少し変化球として紹介したいのが『美少女戦士セーラームーンEternal』です。2021年に前後編で劇場公開された最新作。
ドジで泣き虫だけど明るい少女、月野うさぎが人間の言葉を喋る不思議な猫・ルナに出会い、愛と正義のセーラー服美少女戦士セーラームーンへと変身。人々の平和を脅かす存在と戦っていく物語が描かれるシリーズ。ある意味本作も“うさぎ”が活躍する作品です。
最新シリーズとなる『美少女戦士セーラームーンEternal』は2014年から放送された『美少女戦士セーラームーンCrystal』に準ずる続編作品となっており、今作では原作におけるデッド・ムーン編を映像化したものとなっています。
実は2023年夏に『劇場版 美少女セーラームーンCosmos』の上映が発表されています。予習のタイミングとしても今のタイミングがちょうど良かったりします。
新シリーズをそういえば追ってなかったな、という人や、実は今までセーラームーンを見たことがなかったという人も、夏の上映に向けて、今からおさえておくのもアリでしょう。
◆争いで「血を流す」ウサギも!?──『ウォーターシップダウンのうさぎたち』(1979)
<画像:Netflixより>
『ウォーターシップダウンのうさぎたち』は、知る人ぞ知るウサギの名作物語。
元はリチャード・アダムスによって描かれた児童文学で、2018年にNetflixで3DCGアニメーションシリーズが制作され配信されていたので、タイトルだけは聞いたことがあるという人もいるのではないでしょうか。
そんな『ウォーターシップダウンのうさぎたち』は実は、3DCGアニメーションシリーズに先駆けて1978年にアニメーション映画が制作されています。
平和に暮らしていたウサギたちでしたが、ある日生活が脅かされるという知らせを聞いて、安息の地を目指して旅に出ることにします。しかしそんなウサギたちに数々の苦難が襲いかかることになります。
たくさんのウサギが登場するファンシーな見た目でありながら、ウサギ同士の争いをはじめ、流血も伴う過酷な戦いも繰り広げられるなど、内容はかなりハード。ウサギを題材にここまでやるのか? という表現が目白押しの珍作です。
実はこの作品は、映像配信サービスなどでは2023年初頭現在未配信の作品。VHSやDVDが一時期リリースされているのみの、貴重な映画となっています。
──メジャー作品から視聴困難なレア作品まで、方向性も全く異なる7つのウサギ映画をここでは取り上げましたが、ウサギ一つをとってみても、その描かれ方はさまざま。今年は卯年といことで、これらの作品を年内に観てみてはいかがでしょうか?
〈文/ネジムラ89〉
《ネジムラ89》
アニメ映画ライター。FILMAGA、めるも、リアルサウンド映画部、映画ひとっとび、ムービーナーズなど現在複数のメディア媒体でアニメーション映画を中心とした話題を発信中。缶バッチ専門販売ネットショップ・カンバーバッチの運営やnoteでは『読むと“アニメ映画”知識が結構増えるラブレター』を配信中です。Twitter⇒@nejimakikoibumi
サムネイル画像:YouTubeチャンネル『東映映画チャンネル』より