「東京アニメアワードフェスティバル2022」(TAAF2022)にて、同イベントになんと7年ぶりに『ミューン 月の守護者の伝説』が帰ってきた。

 2014年のフランスのアニメーション映画である『ミューン 月の守護者の伝説』は、日本ではTAAF2015のコンペティション部門長編アニメーションでの上映や、「フランス映画祭2021 横浜」など、限定的な上映しかされていなかった知る人ぞ知る作品だ。

 そんな『ミューン 月の守護者の伝説』がついに日本語吹替版の制作がされ、4月からついに本格的な興行をスタートする。

 それに先駆けてTAAF2022では『ミューン 月の守護者の伝説』の日本語吹替版完成披露上映を行ない、声優陣の舞台挨拶が実施された。

 『ミューン月の守護者の伝説』で“蝋”でできたヒロイン・グリム役を演じた武藤志織さんに、グリム役に抜擢されたときの心境や、映画の見所について話をうかがった。

 

――グリム役に選ばれたときの心境を教えてください。

 

武藤志織さん(以下、武藤さん):グリムは好奇心旺盛な、言い方を選ばずに言うとオタクっぽいところがある女の子なんですけど、私自身が早口で好きなことを喋ったりするところがあるので、そういったところを見て選んでくれたのかなって。結構自分の中でオタクっぽい役をやってみたい! と思っていたので言い続けて良かったなと思いました。

 

――グリムはオタクっぽい感じが見て取れるようなキャラクターなんですか?

 

武藤さん:オタクというより、頭の回転がすごく早いというか、天体とか本の世界に対して研究熱心で、研究家というのがふさわしいかもしれません。自分で調べたりとか、実際に自分が見られる世界が狭い分、本の世界で想像を豊かにしてきたんだと思います。

 

――日本の作品に参加するのと、海外アニメーションの吹き替えとで違いみたいなものは感じたりしましたか?

 

武藤さん:例えば、ジブリの作品や新海誠監督の作品ですと緻密というか、水彩のような淡い色が全体的に日本のアニメーションは多いと思うんですけれど、逆に海外のアニメーションは原色だったり、ビビットなカラーを使っているので、その分表現も薄いままではいけないので、結構足していかないといけない部分が多いなと思いました。

<武藤さんが演じるグリム>

――長編アニメーションのヒロイン役というのも今回が初めてですが、グリムを演じてみて、苦労や発見などはありましたか?

 

武藤さん:1時間半とか2時間、そのキャラクターがいろんな表情を見せてくれるので、一貫性といいますか、ちゃんとその子のことを分かっていないと要所要所で違和感みたいなものが出て来ちゃうかなと思いました。変にガッツリ「ここの表現はこう」と作りすぎずに、この世界でこういう生き方をしていたのだったら、どう表現するかなとなるべく考えました。

 どの作品でも一緒ではあるんですが、アニメーションでちょこっとゲストで出るとか、アプリで一個のキャラクターをやるといった場合では、そのキャラクターを1時間、2時間と長い尺で演じるわけではないので、いかに分かりやすくというところにシフトするんですけど、(グリムは)逆にいかに統一感といいますか、一貫性を持たせるかというところを意識しました。

 

――最近は声優の活躍の幅も広がってきていますが、今後どんな声優として活躍をしていきたいのかというのを、聞かせてもらってもいいですか。

 

武藤さん:「こいつなんでもやってるな」って思われたいなっていうのがあって、最近声優さんって歌って踊ったりというのがあると思うんですけど、私自身が最近舞台にも結構立っていたりするので、舞台だとか映像表現だったり、声優の仕事ももちろん大好きだし、それもやりたいなっていうのもあるんです。一般の人も「あっ! この人声優なんだ」「これやってた人じゃん」みたいになればいいなと思っています。

 

――最後に映画の公開を楽しみに待っている方々へのメッセージや、『ミューン 月の守護者の伝説』の見所など教えてください。

 

武藤さん:太陽と月ということで、この作品のテーマとして多分、陰と陽があると思っています。キャラクターも自信家だけど粗雑なところがあったり、臆病だけど優しかったり、二面性がすごく描かれていて、必ず物事って一面的じゃないなっていうのが作品に込められていて、すごくいい教育になると思って観ていました。

 やっぱり自分の良くないところに普段人は目を向けがちですけど、実はこういう良さもあるよね、っていうのがみんなに伝わるような優しい作品だと思います。4月以降、五月病だとか、心が落ち込みやすくなるとは思うんですけど、優しい心を映画を観ることで保っていただけたらと思います。

 

 ――『ミューン 月の守護者の伝説』は4月より順次全国での劇場公開が実施される。新学期・新年度を迎えるタイミングで環境が変わる人も多い時期の公開ということで、武藤さんの言うように、作品にとっては恰好の鑑賞シーズンなのかもしれない。ぜひ、新たな友人はもちろん、距離が離れてしまった友人との交流のきっかけとして、映画館に足を運んでみてはどうだろうか。

〈取材・文/ネジムラ89 撮影 /水野ウバ高輝〉

⇒「ミューン役 大橋彩香さんインタビュー」はこちらから

⇒「ソホーン役 小野友樹さんインタビュー」はこちらから

◆作品情報

■タイトル:ミューン  月の守護者の伝説 

(原題  MUNE, LE GARDIEN DE LA LUNE)

■あらすじ:

空想の世界に暮らす、青白くいたずら好きな森の子、ミューン。ひょんなことから、夜を運び、夢の世界を守る「月の守護者」に選ばれたミューンだったが、何をするにも失敗ばかり。そしてとうとう月は失われ、太陽は冥界の王に盗まれてしまった。世界に昼と夜を取り戻すため、ミューンは太陽の守護者ソホーンと、か弱い蝋人形の少女グリムと共に旅に出る。これは素晴らしい冒険を経て、ミューンが伝説の守護者となるまでの物語。

■監督:アレクサンドル・へボヤン、ブノワ・フィリポン

■音楽:ブリュノ・クレ (『ウルフ・ウォーカー』)

■ジャンル:ファンタジー・アニメーション

■提供:リスキット/ホリプロインターナショナル/キャトルステラ配給:リスキット

東京アニメアワードフェスティバル 2015 優秀賞

フランス映画祭 in 横浜 2021 出品作品/TAAF2022 招待作品/東京都推奨映画

▼公式サイト

https://mune-movie.com/

▼この記事を書いたライター

《ネジムラ89》

アニメ映画ライター。FILMAGA、めるも、リアルサウンド映画部、映画ひとっとび、ムービーナーズなど現在複数のメディア媒体でアニメーション映画を中心とした話題を発信中。缶バッチ専門販売ネットショップ・カンバーバッチの運営やnoteでは『読むと“アニメ映画”知識が結構増えるラブレター』(https://note.com/nejimura89/m/mcae3f6e654bd)を配信中です。Twitter⇒@nejimakikoibumi

ⒸONYX FILMS-ORANGE STUDIO-KINOLOGY

<2014/フランス/フランス語・英語・日本語/シネマスコープ/85 分>

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