2021年5月14日(金)待望の......と言って良いのか悩ましいのだけれども、知る人ぞ知るアニメシリーズの最新シーズンがNetflixで配信スタートしました。

 それが『ラブ、デス&ロボット』

 本作は世界各国の映像クリエイターたちが、独立した短編SFアニメを毎話描いていくというアンソロジー形式の一風変わったシリーズです。

 タイトルにもあるようにラブ(性的表現)あり、デス(暴力表現)ありで、Netflixらしいなかなかに過激な大人なアニメーション体験が詰まったシリーズでもあります。第1シーズンは2019年3月15日に配信を開始し、たちまち話題を呼び、早々に新シーズンの制作が発表されました。

 そんな流れでのこの待望の第2シーズン。一体どんなエピソードが出揃ったのか、新たに追加された全8話を一挙に紹介していきます。

◆自動カスタマーサービス / Automated Customer Service

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 様々な機械によって自動化が進んでいる世界。主人公となるやけに面長なおばあさんと、可愛いワンちゃんの家でも、お手伝いロボットが部屋の整理をしているところから始まるエピソード。

 写真立ての配置が気に入らないというちょっとしたロボットとのいがみ合いが、ロボットに命を狙われるほどの戦いに発展し、スリリングで熱いバトルが家庭内で繰り広げられることになります。

 同じくNetflixで配信されたばかりの長編アニメ映画『ミッチェル家とマシンの反乱』も思い出しますが、ロボットたちが人間たちに牙をむく瞬間というのは、どんどん機械化が進む現代になってくるほど、ゾッとする度合いが大きくなっていきますよね。

◆氷 / Ice

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 舞台は、人間たちのほとんどが肉体改造を施している世界。唯一肉体の改造を施していないことで兄弟と不和が続く主人公は、ある夜に肉体改造を施した面々と、夜な夜な氷上へやってきて、自らの走りでレースを行うことになる......という物語です。

 このレースというのが、ただの駆けっこではなく、なんと氷の下から突いてくるクジラの攻撃を避けながら走るというもの。その設定の不思議さに加えて、コントラストの効いた美術で描かれた光と煙......そしてクジラたちの幻想的な画(え)のカッコよさに見惚れてしまうエピソードとなっています。

 ちなみに本作のロバート・バレー監督は、第1シーズンの『ジーマ・ブルー』に続く二度目の参加です。

◆ポップ隊 / Pop Squad

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 富裕層が寿命という制限を失い、人口制限が必要となり子作りが認可制になった世界で、違法に子どもを産む人々を取り締まることを任務とする警察官が主人公の物語。命の危険を冒してまで、子供を産む人々を前に、主人公の心境に変化が生まれていくという、短編ながらもその精巧な3DCGも、描いているテーマも長編作品を見ているかのような重厚な物語となっています。

 人間の寿命がなくなった世界を想像する人は多いと思いますが、いざ世界でその技術が発達したとしても、この短編が描いているように、長寿の恩恵を受けられる人と受けられない人で、この作品で描いているような貧富の差が生まれてくるのだろうと気づかされる作品でした。

 ちなみに本作は『カンフーパンダ3』のジェニファー・ユー・ネルソン監督の作品です。

◆荒野のスノー / Snow in the Desert

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 不死の力を宿す睾丸を持ったアルビノの男、“スノー”。そんな彼が賞金稼ぎに命を狙われる中、ある秘密を持った女性・ヒラルドと出会う物語。『ポップ隊』と同じく、不死の人間というテーマが被っていながらも全く違った切り口で、物語を描いたラブストーリーとなっていました。

 スノーの特性である肌や髪の毛の色素が少ないアルビノの人たちは「その身体の一部を手に入れると幸運になるという迷信」によって、命の危険にさらされてきた歴史があり、実は今も一部地域でその迷信が残っています。そういった文化的背景も本作には反映されていそうです。

◆草むらに潜むもの / The Tall Grass

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 メンテナンスによって緊急停止した列車からタバコを吸うために降りた男が主人公。草が生い茂る中で一服していると、草むらの陰に何者かが居る気配を感じ、ついにはその正体に遭遇するというホラーテイストなエピソード。

 草が人間の背丈以上もある場所で、列車の位置がわからなくなってしまうというシチュエーションや、列車の発車までに2回汽笛を鳴らすという設定がより焦燥感を掻き立てて、短くシンプルなストーリーの中でもしっかりハラハラさせてくれるのが見事です。

◆聖夜の来客 / All Through the House

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 クリスマスイブの夜に、サンタの到来を待つ子供達が夜更かし。サンタクロースがやってくるのを覗き見しようとするのですが、リビングに用意したクッキーとミルクを食べている“なにか”の様子がちょっとおかしいという、ホラーだけども、どこかコミカルな短編。

 一切大人が登場しないエピソードなのですが、正体を現したその“なにか”の正体は、明らかに子供向けではないのが、さすがの『ラブ、デス&ロボット』クオリティー。子どもに見せたらトラウマ必至の悪趣味ぶりで最高です。

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◆避難シェルター / Life Hutch

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 主人公の男は、宇宙での戦闘によって、操縦していた戦闘機が荒廃した惑星に不時着。偶然、先行して墜落していた避難シェルターを発見し、そこで救助を待とうとするのですが、メンテナンスロボットが故障しており、襲ってくるという物語。

 暗いシェルターの中と、光や動きに反応して襲ってくるというロボットの習性が、シチュエーションホラーのような緊張感のある体験をもたらしてくれます。

 メンテナンスロボットが動物型のデザインをしているのも意味深。制御が効かなくなった機械は、野生の動物のような存在になるのだという教訓が得られました。

◆おぼれた巨人 / The Drowned Giant

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 漁村のはずれに、裸の巨人の男の死体が漂着し、それを目の当たりにした人々の行動を、とある科学者の目線で眺めていく物語。

 かなりリアルな造形で作られた3DCGが、突飛な内容を実在感があるように描いてくれています。そして、そんな死体を眺める科学者の巨人に対する分析や感動の独白がどこか詩的で、なんだか感動的にも見えてしまうのが不思議なところ。第2シーズンを締めくくるにふさわしいセンスオブワンダーが詰まった一本です。

 本作の監督は実は、『デッドプール』『ターミネーター・ニューフェイト』のティム・ミラー監督。シーズン1の『氷河期』に続く2回目の参加です。短編作品になると長編作品とは違った「こんな作品も作るんだ!」というギャップにも驚かされます。

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◆このエピソードがオススメ!

 以上の8本がシーズン2として配信されました。シーズン1に比べると本数こそ少なくなってしまったものの、相変わらず一本一本の短編の設定が捻った内容となっていて、わずかな時間で感情を揺さぶってくれるシリーズであることを思い知ります。

 今シーズンのお気に入りは、類似したテーマもある中でも、その中で唯一どれとも似ていない内容の『おぼれた巨人』。そして、ビジュアル面では、すっかりロバート・バレー監督の美術にハマってしまったので『氷』がお気に入りです。とりあえず1話観てみようと思ったら、この2エピソードをチェックしてみてください。

 ここまで1話ごとに内容が違うアニメシリーズも珍しいので、みんなで鑑賞会をして自分のお気に入りエピソードを語り合うのにも『ラブ、デス&ロボット』はオススメです。なかなか大人数で集まりにくい時勢ではありますが、1話ごとが短く話の肴にも最適なので、リモート鑑賞飲み会をやったとしたら、きっと盛り上がるハズ。ぜひやってみてください。そして、そこに私を誘ってくれたら嬉しいな。

〈文/ネジムラ89〉

《ネジムラ89》

アニメ映画ライター。FILMAGA、めるも、リアルサウンド映画部、映画ひとっとび、ムービーナーズなど現在複数のメディア媒体でアニメーション映画を中心とした話題を発信中。缶バッチ専門販売ネットショップ・カンバーバッチの運営やnoteでは『読むと“アニメ映画”知識が結構増えるラブレター』(https://note.com/nejimura89/m/mcae3f6e654bd)を配信中です。Twitter⇒@nejimakikoibumi

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