◆リメイクでゼフとサンジのエピソードはどう変わった?
そんなTVアニメシリーズの放送初期のエピソードを、修正する機会が2017年に訪れます。それが通常放送の第801話「恩人の命 サンジと料理長ゼフ」の回と、同年に特別番組として制作された『「ONE PIECE」エピソードオブ東の海〜ルフィと4人の仲間の大冒険!!』です。
第801話では、サンジがゼフを人質にとられた際に、回想の形で改めてサンジとゼフの過去のエピソードを再アニメ化したものです。やはりこの回では、ゼフが船の残骸に足を挟まれた描写が登場します。TVアニメ版はやはり事故という展開を採用したことを、なかったことにしなかったようです。
しかし、驚きは特別番組の『「ONE PIECE」エピソードオブ東の海〜ルフィと4人の仲間の大冒険!!』のほうです。今作ではルフィとシャンクスの過去のできごとや、ゾロやナミ、ウソップやサンジといった、いまではおなじみの一味の面々とどう仲間になったのかを新たにアニメーション化する試みでした。
ダイジェスト形式ではありつつも、当初はアニメーション化されていなかった、まだ幼かったルフィが自身の顔を刃物で刺して勇気を見せるシーンなどが、この特別編で初めて映像化されました。
サンジとゼフの過去のシーンもこの特別編で再び収録されています。この放送では、TVアニメオリジナルの展開となった、サンジを救出するためにゼフが海に飛び込んで、船の残骸に脚を挟まれて死ぬシーンが登場しません。
ついにゼフが自身の足を食べた展開がアニメでも取り入れられるのか? と思いきや、原作でゼフが自身の足を食べたことに通じる自分で足を砕くシーンはやはり映像化はされず、ゼフが足を失っていることに気づいた時にサンジが言うセリフも「お前、俺を助けるために、お前の足……」とはっきりと何が起きたのかは明言しないものとなっていました。
これならば、かつてのTVアニメ版のようにサンジを守るためにゼフが海に飛び込んだという展開の可能性も、飢えによってゼフが自身の足を食べたという原作の可能性のどちらも内包しています。アニメシリーズにおいても、自分の足を食べたゼフ、という可能性が生まれた瞬間でした。
◆意外にも『ONE PIECE』はリメイクが多い作品だった!?
ゼフの例のように『ONE PIECE』のアニメ化は、意外にも実はリメイクが多く作られている作品です。『「ONE PIECE」エピソードオブ東の海〜ルフィと4人の仲間の大冒険!!』のように、これまでに複数の作品が制作されているエピソードオブシリーズのうち、以下の6作品は、フジテレビ系列の土曜プレミアム枠で新規アニメ化や追加シーンを加えたものとなっています。
・『エピソードオブナミ〜航海士の涙と仲間の絆〜』(2012)
・『エピソードオブメリー〜もうひとりの仲間の物語〜』(2013)
・『“3D2Y”エースの死を越えて!ルフィ仲間との誓い』(2014)
・『エピソードオブサボ〜3兄弟の絆 奇跡の再会と受け継がれる意思〜』(2015)
・『エピソードオブ東の海〜ルフィと4人の仲間の大冒険!!』(2017)
・『エピソードオブ空島』(2018)
そのほか、劇場版として『ONE PIECE エピソードオブアラバスタ 砂漠の王女と海賊たち』(2007)や『ONE PIECE THE MOVIEエピソードオブチョッパー+ 冬に咲く、奇跡の桜』(2008)など映画として新たにアニメ化をはたす例もあったり、通常放送の中で過去のエピソードの回想を新規アニメーションで起こす例などもあったりと探していくと、実はキリがないほどとなっていきます。
これ観たことがある話だな、と思って見逃していたシリーズもあえて観てみるとことで、「お前……自分の足……食って“なかった”のか!?」と驚かされる新たな描写や表現が見つかるかもしれませんよ。
〈文/ネジムラ89〉
《ネジムラ89》
アニメ映画ライター。FILMAGA、めるも、リアルサウンド映画部、映画ひとっとび、ムービーナーズなど現在複数のメディア媒体でアニメーション映画を中心とした話題を発信中。缶バッチ専門販売ネットショップ・カンバーバッチの運営やnoteでは『読むと“アニメ映画”知識が結構増えるラブレター』を配信中です。Twitter⇒@nejimakikoibumi
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