近年では動画サイトや定額の動画視聴サービスが充実しているおかげで、気軽に過去のアニメを観られるようになりましたよね。筆者は休みの日に一気にアニメを観たい派なので、こういうサービスには大いに助けられています。
それはさておき、今回は数あるアニメの中から富山県に本社を置くアニメ制作会社、P.A.WORKSが作った『お仕事シリーズ』3部作をピックアップ。
『お仕事シリーズ』3部作は、『SHIROBAKO』をはじめ、多くのアニメファンに愛され続ける人気作品群です。
ではなぜ『お仕事シリーズ』は多くのアニメファンを惹き付けるのか。
<P.A.WORKSが送る『SHIROBAKO』>
<画像引用元:宝箱―TREASURE BOX―/プラチナジェット(TVアニメ『SHIROBAKO』新オープニング/エンディングテーマ)(初回限定盤) 販売元:ワーナー・ホーム・ビデオ>
◆P.A.WORKSとは?
P.A.WORKSとは、富山県南砺市にあるアニメ制作会社。『true tears』、『Another』、『Angel Beats!』といったアニメを世に出しています。
P.A.WORKSは堀川憲司社長が結婚して富山に帰郷した際、アニメ制作会社が地元に無いことから2000年に自ら立ち上げたという、なんともバイタリティ溢れる会社です。
地方ならではの風景をアニメに取り込むスタイルが人気を呼び、新興会社でありながらも多くのファンに支持されています。
特に後述する『花咲くいろは』、『サクラクエスト』は特定の地方を舞台にしたアニメであり、作品内のお祭りを実際に開催、作内の都市と実際の市が姉妹都市として提携するなど、モデルとなった地域と密接な関わりを持っています。
◆『花咲くいろは』桜咲く季節、ここから始まる新しい自分
<画像引用元:劇場版 花咲くいろは HOME SWEET HOME (Blu-ray Disc初回生産限定特別版) 販売元:ポニーキャニオン>
2011年4月から9月まで放送された、P.A.WORKS初のオリジナルアニメーション『花咲くいろは』は、石川県の喜翆荘という旅館を舞台に、16歳の高校生の松前緒花が旅館の仲居として働く物語です。
同じ喜翆荘で働く板前見習いの鶴来民子、仲居の押水菜子、ライバル旅館であるふくやの跡取り娘予定である和倉結名の同い年4人の成長を描いているのも本作の特徴。
本作は、田舎の旅館といった夢のありそうな業界に見えながら、旅館で働くことの厳しさや若さ故の悩みや悔しさといった「現実にありそう」感が強く描かれています。
特にオープニングアニメーションのサビ部分できびきびと働く旅館のメンバーの姿は、P.A.WORKSならではの丁寧な描写の一つをとして話題になりました。
舞台の喜翆荘は既に倒産していますが、昭和天皇が泊まりに来たという白雲楼ホテルがモデルであり、旅館のある湯ノ鷺温泉のモデルは湯涌温泉、作中に何回も現れる湯ノ鷺駅は、のと鉄道七尾線にある西岸駅を元にしているなど、実際の風景の多くを作内に取り込んでいます。
また、作内後半で出てくる「ぼんぼり祭り」はアニメの架空のお祭り行事でしたが、舞台となった湯涌温泉街が2008年に発生した水害の復興、さらにはファンによる聖地巡礼の増加などの理由で実際に開催、今もなお続いています。
※2020年は新型コロナウイルス感染症の影響により中止
◆『SHIROBAKO』アニメーション業界の今がここにある
<画像引用元:SHIROBAKO ビジュアルブック ~明日に向かってテイクオフ! 出版:アスキー・メディアワークス>
『SHIROBAKO』は、アニメ業界で働く少女たちの姿を描いた群像劇。2014年10月から2015年の3月まで放送、2020年2月には映画化もされ、お仕事シリーズの中でも特に人気を集める作品です。
作中に出てくるアニメやクリエイターはそれぞれモデルとなった人がいて、アニメ業界の表と裏を「アニメ」で描くなど、他の作品と比べて「背景」でなく「実体験」でリアルさを出しています。各登場人物やアニメ作品、制作会社の名前の元ネタを見つけるのも一興。
余談ですが、作中で起きた「データサーバーの消失事件」は、実際にP.A.WORKSが体験した事故だとか。
公式サイトでは業界用語一覧や、作中アニメ『えくそだすっ!』の制作過程を掲載するなど、『花咲くいろは』と同じく裏の舞台も充実しています。
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◆『サクラクエスト』内定したのは国王だけでした
<画像引用元:【Amazon.co.jp限定】サクラクエスト Vol.7(初回生産限定版)(全巻購入特典:メインキャスト5名複製サイン入り第13話コンテ集引換シリアルコード付) [DVD] 販売元: 東宝>
2017年4月から9月まで放送された『サクラクエスト』。
田舎から上京したはいいものの、短大卒業前の就職活動でどこにも内定をもらえていない木春由乃は、ちょっとした事情から田舎である「間野山市」に位置するアミューズメント独立国「チュパカブラ王国」に呼ばれ、国王として町おこしならぬ「国おこし」をさせられることに。
いわゆる「流行りの廃れた独立国ブーム」と「地元復興」を題材としており、その舞台もP.A.WORKSが本社を置く富山県南砺市をモデルに現在地から送る町おこしの世界を描いています。
地域特有の習慣や商店会の住人の「このままでいい」という消極的な態度、田舎がメディアにピックアップされることの大きさ、単に町おこしといっても「客がくればいい」だけでは終わらないことなど、『花咲くいろは』と同じく夢と現実の差が苦しい世界を描いているのがこの作品の特徴です。
もちろん暗く苦しいだけではなく、由乃をはじめとした面々の明るさと前向きさによる働きかけのおかげで、ストーリーに深みを与えてくれています。
作品の舞台である間野山市は、架空の都市であるにも関わらず、モデルとなった南砺市と姉妹都市として提携を組むようになり、アニメの枠を飛び越えリアルの世界にも影響を与えています。
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