男子は『ドラゴンボール』。女子は『セーラームーン』。
私が幼い頃は、ちょうどロート製薬がそんなコラボケース付き目薬を販売していて、CMを流していたのですよ。そんな思い出のある身からすると、なんだかものすごく懐かしい映画がこの冬上映されております。
『美少女戦士セーラームーン』の最新作、劇場版『美少女戦士セーラームーンEtrernal』の前編が2021年1月8日(金)に、そして後編が2021年2月11日(祝・木)の2ヶ月連続で公開されました。
自身は“ドラゴンボール”側の人間だったので、当時放送されていたTVアニメもあまり観ていた記憶はあまりないのですが、とりあえずメンバーの中では亜美ちゃんが好きだったという思い出だけは残っています。多分そんな思い出があるぐらいなので、少なからず当時の『セーラームーン』の波の中には生きていたのでしょう。
それぐらいの距離感の私が、令和を迎えた今、改めて『セーラームーン』に挑もうと映画館に足を運んでみたらどうなるのか?
それを確かめるべく、映画館に行って前後編を観てきましたよ。
◆ぶっつけ『セーラームーン』!初心者でも大丈夫?
<画像引用元:https://sailormoon-movie.jp/story.html より引用掲載 ©武内直子・PNP / 劇場版「美少女戦士セーラームーン Eternal」製作委員会>
私の『セーラームーン』についての知識は、漫画もアニメも人生で何回か触れたことがある程度。メインのセーラー戦士の名前と、後から追加で登場したセーラー戦士の顔ぐらいまでが分かる程度の知識しかありませんでした。
2014年からリブート企画としてTVアニメ『美少女戦士セーラームーン Crysytal』シリーズが放送されていたのですが、申し訳ないながらまだ観ておらず、今回の映画で描かれるお話までの流れは全く知らない中で観に行ってきたわけです。
こんな状態で映画は楽しめるのでしょうか?
その答えは......楽しめました!
全然問題ありませんでした。そこまで言わなくてもいいよ、というぐらい自分の思いやキャラクターをセリフで話してくれるので、話がわからなくなるということはありませんでした。
敵の戦略性が結構アバウトだったり、独自の専門用語とかも多数登場しますが、“なんか悪そうなパワーでエネルギーを吸い取っているんだなぁ”とか“これはなんかすごい秘められた力なんだろう”とかぼんやり掴める内容だったので、割り切ってしまえば混乱するようなことはありませんでした。
◆原作漫画をアニメに落とし込んだのでかなり映える!
<画像引用元:https://sailormoon-movie.jp/story.html より引用掲載 ©武内直子・PNP / 劇場版「美少女戦士セーラームーン Eternal」製作委員会>
映画を観ていて感心したのは、瞬間、瞬間の綺麗さ。
映画を観た後に原作漫画を復習して分かったのですが、今回の劇場版『美少女戦士セーラームーンEtrernal』はかなり忠実に、原作漫画の流れ、そして原作の竹内直子さんの描いた漫画のコマを再現しておりました。
少年漫画ばっかり読んでいた身からすると、少女漫画と言えば繊細な細い線や、綺麗なトーンに大胆なコマ割りを使う漫画という印象があるのですが、その原作漫画の在り方をそのままアニメーション化するとこんな感じになるんだろうという仕上がりになっていたのです。
キャラクターの感情の起伏だとか、話の展開が唐突に感じられてしまう瞬間はあれど、シーン単体での美しさのようなものが際立って見えて、まさに少女漫画を見たときのような印象がそこにはありました。舞台設定や衣装にアイテム。そしてそれを彩るエフェクト。“これぞ、セーラームーン”とでもいうような独自の様式美は他の映画にはない体験となっていたのです。全カットInstagram映えしそうなアニメーションでしたよ。
ただ、一方で漫画をそのまま落とし込んだせいで前述のように違和感の出てくる瞬間もあったのも確か。別れを惜しむシーンで双方が手を伸ばすんだけど、触れられずに消えてしまうシーンなどは、漫画だと違和感ない印象的な演出ですが、映像になると“手を掴んでから消えればいいのに感”が出てしまって、変な気持ちになりましたね。漫画からアニメへの落とし込み方を考えさせられる映画でもありました。
◆ビジュアルに気づかったEternal!
今回の映画がビジュアルに気遣っている作品であることは、制作陣からも分かるようにできていましたね。公式サイトを開くと、原作の竹内直子さんのコメントが表示されるようになっているのですが、そこでも言及されているように、今回の映画ではキャラクターデザインに、アニメーターの只野和子さんが参加しています。
何を隠そう、この方は90年代に放送されたTVアニメ『美少女戦士セーラームーン』で作画監督、そしてキャラクターデザインを務めた御方。新シリーズでは、今回からキャラクターデザインに名前を連ねており、かつてのアニメシリーズに馴染みのあった人に親しみやすいキャラクター造形になっているのは、ビジュアルを見るだけで明白です。今回のリブートは、どちらかといえばかつて『セーラームーン』を楽しんだ人に向けての作品となっているのだから、只野さんを布陣に入れたのは英断だったと言えるでしょう。それほど作品に親しんだ記憶がない私ですら、本作を観て「あ、懐かしい」と思えたのも、この采配が生んだ効果だと思っています。
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◆今後の『セーラームーン』の活躍にも期待
そんなわけで、『セーラームーン』と割と距離感がある私でも、問題なく劇場版『美少女戦士セーラームーンEternal』を観ることができました。
原作に忠実にするあまり、前編が中編の5本立てのような装いになってしまっていたり、気になるところももちろんあったのですが、シリーズとしては大きな前進の作品だったように思います。
昨今は、キャプテン・マーベル然り、ワンダーウーマン然り、ブラックウィドウ然り、女性ヒーローの流れが来ています。
『セーラームーン』もそんな流れの日本代表として、これで最後にせず、どんどんアップデートして世界に打ち出していって欲しいです。
原作エピソードもまだ残っているわけですし、次回作への前進に期待しております。
〈文/ネジムラ89〉
≪ネジムラ89≫
アニメ映画ライター。FILMAGA、めるも、リアルサウンド映画部、映画ひとっとび、ムービーナーズなど現在複数のメディア媒体でアニメーション映画を中心とした話題を発信中。缶バッチ専門販売ネットショップ・カンバーバッチの運営やnoteでは『読むと“アニメ映画”知識が結構増えるラブレター』(https://note.com/nejimura89/m/mcae3f6e654bd)を配信中です。Twitter⇒@nejimakikoibumi
アニメーション制作:東映アニメーション / スタジオディーン 製作:劇場版「美少女戦士セーラームーン Eternal」製作委員会 配給:東映
©武内直子・PNP / 劇場版「美少女戦士セーラームーン Eternal」製作委員会