2018年8月4日より日中同時公開という珍しい試みのアニメーション映画の上映がスタートしました。その名も『詩季織々(しきおりおり)』

詩季織々
画像引用元:詩季織々 [DVD] 販売元:コミックス・ウェーヴ・フィルム

 アニメーションを制作するのは『君の名は。』を始め新海誠監督作品を手掛けてきたコミックス・ウェーブ・フィルム。

 監督には、イシャオシン監督リ・ハオリン監督、そして日本からは竹内良貴監督の3人がクレジットされていて、それぞれが短編を担当するオムニバス形式の作品となっています。

 コミックス・ウェーブ・フィルム制作ということで、いかんせん新海誠監督最新作のような錯覚に陥りそうなときもあるのですが、面白いことにそれは画だけでなく物語の方にも感じさせるのですが、これは実は錯覚ではなかったりもします。

『詩季織々』を生み出すきっかけは『秒速5センチメートル』

 『詩季織々』の総監督であり、短編『上海恋』を担当したリ・ハオリン監督は各所で明言している通り、新海誠監督の過去作『秒速5センチメートル』に影響を受けているそうです。

秒速5センチメートル
画像引用元:秒速5センチメートル [Blu-ray] 販売元:コミックス・ウェーブ・フィルム

 今回コミックス・ウェーブ・フィルムに制作を依頼したのも、同作の存在があってこそ。『秒速5センチメートル』という作品が『詩季織々』のルーツとして君臨しているわけです。

 新海誠監督といえば今となっては確固とした代表作『君の名は。』が存在するわけですが、あくまでも直接の影響を与えたものは『秒速5センチメートル』の方なのです。

中国でもカルト的な人気作『秒速5センチメートル』

 『秒速5センチメートル』は2007年に日本公開された新海誠監督のアニメーション映画。切ない恋愛ストーリーでカルト的な人気を獲得した映画でした。

 そしてそれは日本だけでなく中国でも同じ。『秒速5センチメートル』は中国でもコアなファンを獲得しています。

 それもあってか実写映画化の企画が練られているという報道があったり、中国国営中央テレビで放送されたアニメ作品『心霊之窓』では数多くのシーンが『秒速5センチメートル』と同構図になっていて反感を買うなど、良くも悪くも度々中国内でも取り上げられることの多い作品となっていました。

『秒速5センチメートル』と『上海恋』の違い

 そして確かに本作『詩季織々』を見ていると『秒速5センチメートル』を色濃く受け継いでいるなという瞬間が多々ありました。内容の素朴さや男性の独白で物語が綴られるところなどは、まさに『秒速5センチメートル』を彷彿させる部分。その色が特に見られるのはやはり、リ・ハオリン監督の『上海恋』です。

 幼馴染と過ごした青春、そして成長する上で経てしまうすれ違い。そして大人になった今感じる希望。まさに現代に蘇る『秒速5センチメートル』体験という感じでしょうか。

 その着地の仕方こそ、『秒速5センチメートル』とはちょっと違った味わいではありますが、心を抉っていくような切なさを携えた『秒速5センチメートル』に比べると、『上海恋』はもう少しホッコリできる、温かみの強いラストを迎えます。ある意味、『上海恋』の方が優しいと感じられるかもしれません。

 日本のいろんな作品が海外の作品に影響を与えているなんて話をよく聞きますが、ここまで明確にその影響の色が出ることになる作品も珍しいです。ぜひ、『秒速5センチメートル』と『詩季織々』を並べて鑑賞してみるのもおすすめです。

 

 ――そして、今、中国のアニメーション界もどんどん拡大してきており、力をつけてきています。

 今でこそ日本に入ってきている中国のアニメーション作品は数としては多くないかもしれませんが、今後はどんどん増えてくるのではないでしょうか。

 日本と中国、互いに高め合って影響し合えるような関係が構築されていけば、“アジアのアニメシーンの代表作”として世界にぶつけていける大傑作が生まれる日も近いでしょう。

(Edit&Text/ネジムラ89)


『詩季織々』公式サイト

©「詩季織々」フィルムパートナーズ

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