原作愛はエンドロールにまで溢れてる!?
そしてもっとも原作愛に溢れているのが、この映画のエンドロールです。本編の後日談がエンドロールで描かれるのはよくあるパターンなのですが、今作では原作漫画テイストでその様子を描いてくれます。これは実際に映像を観てみてほしいのですが、こんな“見せ方”があるのかと感動すら覚える、画期的なエンドロールになっていました。
今作でエンドロールディレクターを担当したのはドラマ「らんまん」のタイトルバック演出なども担当してきている上田大樹さん。「ONE PIECE展」の“冒険パノラマシアター”や「バナナマンライブ2022」のオープニング映像などさまざまな分野のディレクションや制作に参加している方なのですが、今作でまた一つ代表作が増えたと言ってもよいのではないでしょうか。
そして、エンドロールに流れるサンボマスターの「Future is Yours」が映画にしっかりと合っているのがまた見事です。脚本に合わせて書いた曲ではないそうですが奇跡的に映画にもバッチリとハマってエンドロール、そして映画を印象深いものにしてくれています。
──「こんなしんちゃん見たことない」というこの映画のキャッチは、2Dではなく3DCG担ったことに対してかかってくるフレーズなのでしょう。ただ、実はTVアニメで独自のテイストを育んできたしんちゃんにも、原作漫画のしんちゃんという方向があることや、今回のように新たな映像表現にも挑めるといったしんちゃん自体のブランドのポテンシャルやイメージを広げるような体験をもたらしてくれる映画であることを実は表しているフレーズともいえます。
TVアニメのしんちゃんに慣れ親しんできた人こそ、今回の映画で見たことのないしんちゃんをぜひ目の当たりにして欲しいです。
〈文/ネジムラ89〉
《ネジムラ89》
アニメ映画ライター。FILMAGA、めるも、リアルサウンド映画部、映画ひとっとび、ムービーナーズなど現在複数のメディア媒体でアニメーション映画を中心とした話題を発信中。缶バッチ専門販売ネットショップ・カンバーバッチの運営やnoteでは『読むと“アニメ映画”知識が結構増えるラブレター』を配信中です。Twitter⇒@nejimakikoibumi