◆意外とヤバい?『SPY×FAMILY』が抱える問題
その問題とは「ロイドやヨルが人殺しである」という点です。
諜報員のロイドや、暗殺者であるヨルは、それぞれ正義感をしっかり持っており、平和のためという前提で、時に人を殺めているという設定があります。
罪のない人々が幸せに暮らせるためであり、正義に則っての行為という設定から、意識的には人殺しについて作中でほのめかされても、緩和されるようにはなっているのですが、やはり冷静になって考えてみると「平和という名目であれば人殺しをしてもいいのか」というのは人によって大きく答えが変わってくる問いでしょう。
今なお賛否ある死刑制度であったり、今もなくなるどころか新たに生まれている戦争であったり、現実の出来事と合わせてロイドやヨルの是非はまだまだ語ることのできるでしょうが、彼らが“人殺し”であることは事実であり、多くの人に愛される「国民的アニメ」にはなりにくい要素ではあるのかもしれません。
──彼らの倫理観については作中でも随所で語られていたり、今後も語られていくであろう部分。
ただ単純に殺しをしている設定ではないだけに、違和感を持っていた人にも時間をかけて彼らの行為についても理解が得られていくこともあるでしょう。
とはいえ、毎回、殺人事件に遭遇する『名探偵コナン』や、戦争モノの『ガンダム』シリーズなどが国民的アニメなのは事実。『SPY×FAMILY』は、主人公サイドのメインキャラの裏の仕事が、軍人などではなく「暗殺者」ということが弊害になるかもしれません。ですが、その点を乗り越え『SPY×FAMILY』も時間をかけて、世代ごとにアリかナシかの問題を提起していく作品になるのではないでしょうか。
〈文/ネジムラ89 編集/乙矢礼司〉
《ネジムラ89》
アニメ映画ライター。FILMAGA、めるも、リアルサウンド映画部、映画ひとっとび、ムービーナーズなど現在複数のメディア媒体でアニメーション映画を中心とした話題を発信中。缶バッチ専門販売ネットショップ・カンバーバッチの運営やnoteでは『読むと“アニメ映画”知識が結構増えるラブレター』を配信中です。Twitter⇒@nejimakikoibumi