◆大人も泣ける?大ヒットとなった映画第一弾
なぜこれほどその出来映えに注目してしまうかといえば、やはり映画第一弾の衝撃が大きかったからです。
もともと『すみっコぐらし』が映画シリーズとして続いていくきっかけとなったのは、なんといっても映画第一弾の『とびだす絵本とひみつのコ』の大ヒットがあってこそでした。
2019年に公開の『映画すみっコぐらし とびだす絵本とひみつのコ』は観客動員数は100万人を超え、興行収入は最終的に14.5億円にも達しました。
映画『プリキュア』シリーズが平均して10億円前後の結果を残していることを考えると、映画すみっコぐらしのヒットのスケールがどれほど大きいのかも分かるのではないでしょうか。
これほどのヒットとなった理由は、“大人も感動する”という口コミ効果が大きく影響を与えました。
かわいい見た目やその世界観から、一見子ども向けの作品という印象を与えていた一方で、実際は映画のゲストキャラクターの“意外”な素性や、それが活きてくるせつないクライマックスが用意されており、その展開に子供を連れてきた親が泣かされるというケースが発生したわけです。
──角田貴志さんが脚本を務めるということは、今回の映画も映画第一弾のような“大人も泣ける”ような作品になっていることを期待してしまうところです。
しかし蓋を開けてみると、角田さんの脚本の肝は、“大人も泣ける”という部分よりも“大人もあっと驚かせる仕掛けを物語に忍ばせる”ことだったように、『映画すみっコぐらし ツギハギ工場のふしぎなコ』を観て思い知らされました。
子供が楽しめるのはもちろんのこと、しっかり大人も映画を観たあとに、現実世界にホッコリとした思い出を一つ持ち帰れるような体験。そんな優しい映画が待っていました。
〈文/ネジムラ89〉
《ネジムラ89》
アニメ映画ライター。FILMAGA、めるも、リアルサウンド映画部、映画ひとっとび、ムービーナーズなど現在複数のメディア媒体でアニメーション映画を中心とした話題を発信中。缶バッチ専門販売ネットショップ・カンバーバッチの運営やnoteでは『読むと“アニメ映画”知識が結構増えるラブレター』を配信中です。Twitter⇒@nejimakikoibumi