新海誠監督の新作映画『すずめの戸締まり』の上映が始まりましたが、実はこの映画、鑑賞予定の人たちにとある警告が発表されている作品となっています。
映画の鑑賞者に向けた警告といえば、光の点滅が続くシーンなどがある場合に、光に対して敏感な体質の人に向けた警告が予め発表されることがよくあります。しかし『すずめの戸締まり』では、それとはまた違った警告が事前に告知されています。
◆「地震描写や地震警報音あり!」鑑賞には要注意!
『すずめの戸締まり』の完成の発表から間も無くの10月末、早くも“ご鑑賞予定の皆様へ”という警告が「すずめの戸締まり」製作委員会より発表されました。
映画『#すずめの戸締まり』
ご鑑賞予定の皆様へ pic.twitter.com/KVfAk6s2aw— 映画『すずめの戸締まり』公式 (@suzume_tojimari) October 22, 2022
うえの告知通り、映画の『すずめの戸締まり』では、地震に関連したシーンが確かに登場していました。しかも一部のシーンどころか、物語の大筋としてガッツリと地震に関わる物語が描かれます。
光の点滅に対する警告の印象から一部のシーンの演出程度を想像するかもしれませんが、映画の冒頭から、緊急地震速報を思わせる警報音が何度も流れるなど、全編に渡って地震に関連した話題や演出が登場するので、地震に関連した演出に抵抗がある人は、それなりに覚悟を持って臨む必要のある映画となっています。そういう意味では、特に鑑賞に注意が必要な作品といえます。
◆歴代の新海誠の作品や東北を題材にした映画との大きな違い
『すずめの戸締まり』は紛れもなく、東日本大震災をはじめとしたこれまで数多くの大地震を経てきた日本を踏まえた内容となっているわけです。
新海誠監督は『君の名は。』や『天気の子』でも、人間の力ではどうすることもできない自然の脅威を描いてきており、それらは震災のメタファー(隠喩)としても受け取れる物語となっていました。
しかし、ここにきて『すずめの戸締まり』では、“地震”を直接的にストーリーに盛り込んでくるという大胆なことに挑戦しています。
これまでの映画の表現だけに止まらず、ここまで直接的に踏み込んで震災を描く必要がある、と監督が考えたことには驚きがあります。
その驚きは他の映画と比べても同様です。
例えば、昨年の2021年からは「ずっとおうえん。プロジェクト2011+10…」と題して、東日本大震災で特に大きな被害を受けた地域のアニメツーリズムを推進するプロジェクトが実施され、被災地を舞台にした作品『バクテン!! 』や『フラ・フラダンス』、『岬のマヨイガ』といったアニメーションが制作されました。
これらの作品は物語の背景として、震災があったことは暗示されるものの、直接的な震災の描写は避けており、あくまでも震災以降の人々のドラマを描いていました。
これらの作品に比べると、『すずめの戸締まり』は震災以降の人々のドラマを描いていることは同様でありつつも、地震に対して堂々と言及する姿勢は、対極の存在と言えます。ある種、表現すること自体に批判が上がってもおかしくないのですが、今や日本のアニメーション映画の最大スケールの世界で戦う新海監督が、まさかそのカードを切るということが驚きです。
『天気の子』は、映画の終盤で陥ってしまう事態や主人公の選択に対し、賛否の両方の声があがるものでした。『すずめの戸締まり』もそれぞれの震災への思いや立場から、様々な声が早くも上がっています。新海監督が切ったこのカードが安直に映るのか、熟考の末の答えに映るのか。そういう意味では、鑑賞の際には注意して欲しいと思いつつ、多くの人に足を運んで、それぞれの見え方を声に出してみて欲しい映画に仕上がってます。