◆世界から『すずめの戸締まり』はどう見えるのか?
『すずめの戸締まり』の評価で気になるのは、日本人からの評価はもちろんですが、世界の人たちからはどう映るのか、についても気になるところです。なんと『すずめの戸締まり』は世界199の国と地域での配給が決定していることが、早くも発表されています。これは新海監督の作品史上でも最多とされます。
『君の名は。』や『天気の子』もすでに多くの国で劇場公開を果たしていますが、それらの作品と比較しても、今回直接的に地震を描いたことは、より海外の人に“地震国日本”がダイレクトに伝わることになるでしょう。
日本にいると地震はいつ起きてもおかしくないものと映るかもしれませんが、それは日本が地球を構成するプレートのちょうど境に位置するからであり、国や地域によっては地震が滅多に起こらないところもあります。
今回、l作中で描かれる緊急地震速報の描写などは、世界の人にとっては新鮮に映るのではないでしょうか。『君の名は。』や『天気の子』以上に、地震に対する脅威を直接描くことで、地震と向き合っていかざるを得ない国=日本の、ディテールを世界の人にも知ってもらえるという意味では、今回の表現は一つ有意味でしょう。
今、改めて地震という災害について直接踏み込んだ『すずめの戸締まり』。人によってはそれはまだ閉ざしておきたい扉でしょうし、人によっては未知の体験を知ることになる扉にもなっているでしょう。
繰り返すように、鑑賞には注意が必要な映画なのは間違いないのですが、その分、日本の人にとっては受ける印象が強い作品です。もしその扉を開くことのできる人は、実際に主人公がどう戸締まりをするのか、劇場にぜひ見届けに行って欲しいです。
〈文/ネジムラ89〉
《ネジムラ89》
アニメ映画ライター。FILMAGA、めるも、リアルサウンド映画部、映画ひとっとび、ムービーナーズなど現在複数のメディア媒体でアニメーション映画を中心とした話題を発信中。缶バッチ専門販売ネットショップ・カンバーバッチの運営やnoteでは『読むと“アニメ映画”知識が結構増えるラブレター』を配信中です。Twitter⇒@nejimakikoibumi