毎年恒例となっているフランス、アヌシーで開催されるアニメーションの祭典「アヌシー国際アニメーション映画祭」が今年も実施されました。昨年は新型コロナウイルス感染症の影響により、オンラインでの実施となりましたが、2021年はオンラインでの開催と並行して、現地での開催も実施されました。

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 長編コンペティションでは、『ジョゼと虎と魚たち』『えんとつ町のプペル』、そして日本でもこれから公開となる『鹿の王』がノミネートされたり、『魔女見習いをさがして』『漁港の肉子ちゃん』の特別上映が実施されたりと日本作品も多数出品。TVシリーズのコンペティションでは、湯浅政明監督の『日本沈没2020』が審査員賞を受賞しました。

 そんな「アヌシー国際アニメーション映画祭」は、まだまだこれから上映を予定している各地のアニメーション映画のプレゼンテーションが行われるアニメーションの見本市・MIFAも併催されるのですが、そんな中でも個人的に期待しているとある海外のアニメーション映画が今年は出品されています。

 その名も『ユニコーンウォーズ』です。

◆アルベルト・バスケス監督最新作『ユニコーンウォーズ』

 現在、スペインとフランスの共同で制作が進んでいる長編アニメーション映画が『ユニコーンウォーズ』です。

 監督を務めるのは、『サイコノータス〜忘れられたこどもたち〜』のアルベルト・バスケス監督。

▼ついに観てきたぞ!不気味可愛いスペイン映画『サイコノータス~忘れられたこどもたち~』

https://anigala-rew.jp/psiconautas/

 私は、本作の不気味さと可愛さを兼ね備えた作風にすっかり虜になり、全国上映を期待していたのですが、残念ながらイベント上映的に局所的な上映に終わってしまった作品でした。そんなアルベルト・バスケス監督による久しぶりの長編作品ということで期待せずには入られません。

◆『ユニコーンウォーズ』のストーリー

 前作『サイコノータス〜忘れられたこどもたち〜』も、可愛いキャラクターのルックの一方で、バイオレンス描写などが展開される大人向けの内容だったのですが、『ユニコーンウォーズ』も同様に可愛い動物たちが登場しつつも、過激な描写を含む作品になることが明らかになっています。

 作品の舞台は、強い宗教的な思想で、かつて暮らしていたとされる森を取り戻そうとする熊たちと、現実的な環境保護主義のユニコーンたちの終末戦争が予言される中で展開されます。

 先祖代々繰り広げられる戦争を背景に、母親の愛を求めて戦う2匹の兄弟熊・ブルーイとファティが主人公として登場。お互いに対して不満を抱えながらも、切るに切れない縁を持った2匹は、仲間たちとともに軍事基地“ラブキャンプ”で戦闘訓練を受けることになります。

 そして、ある日森から帰ってこない熊たちの部隊を捜索する部隊に参加した、ブルーイとファティはその森で危険な生物たちや無残な姿となった隊員たちを目にすることになります……。

 作品にはそのほかにもティーンズであるマリアや、悪魔のような姿をした霊長類らしきキャラクターたちの存在も今回明かされ、『サイコノータス〜忘れられたこどもたち〜』同様に主人公たち以外の複雑な生活や心境が描かれルような群像劇のような要素も期待できそうです。

◆『ユニコーンウォーズ』はいつ上映されるのか?

 気になるのはこの『ユニコーンウォーズ』がいつ上映されるのか。

 現状明確な公開日などは発表されていませんが、来年の「アヌシー国際アニメーション映画祭」や5月・6月ごろに実施されるフランスの映画祭への出品の後、2022年後半の劇場公開を考えていることが発表されています

 今年の「アヌシー国際アニメーション映画祭」でデモ的に流された映像も、一部は明らかに未完成の状態のものだったりと、まだまだ制作の途中であることが明らかな状態でした。一方でプロデューサーからはスケジュールよりも予算的な課題を語る一幕があり、こども向けではないことからフランスのテレビ局から協力的な扱いを受けていないことと、未だアニメーション=子供向けという認識が残っている人たちの存在が語られています。

▼Variety:UFO Distribution Takes France on Alberto Vazquez's ‘Unicorn Wars’

https://variety.com/2021/film/festivals/ufo-distribution-france-unicorn-wars-1235000196/

 そんな中、早くもフランスでの配給権をUFO Distribution社が獲得したことが報じられました。これには、作品への注目度の高さを感じます。そして、さらには、ロサンゼルスで10月に開催される「Animation Is Filmフェスティバル」の開催の告知ビジュアルに『ユニコーンウォーズ』が起用されることも明らかになりました。着々と作品の認知度が上がってきています。

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 こうなってくると期待したいのは日本公開。

 世界的に見ても特に大人向けのアニメーション市場が確立されており、キャラクター文化も充実している日本では、アルベルト・バスケス監督の作品は意外と刺さる予感のするテイストです。

 ケルト神話を題材に描いた『ウルフ・ウォーカー』や、中国発で大ヒットとなった『羅小黒戦記』などアメリカの大手作品以外の海外アニメーション映画が映画館で活躍するようになってきた昨今。次なる刺客としてアルベルト監督作品の上陸を期待したいところです。

*参考:https://variety.com/2021/film/global/unicorn-wars-annecy-alberto-vazquez-1234998093/

〈文/ネジムラ89〉

《ネジムラ89》

アニメ映画ライター。FILMAGA、めるも、リアルサウンド映画部、映画ひとっとび、ムービーナーズなど現在複数のメディア媒体でアニメーション映画を中心とした話題を発信中。缶バッチ専門販売ネットショップ・カンバーバッチの運営やnoteでは『読むと“アニメ映画”知識が結構増えるラブレター』(https://note.com/nejimura89/m/mcae3f6e654bd)を配信中です。Twitter⇒@nejimakikoibumi

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