【お詫びと訂正】

記事内におきまして、以下のとおり誤植がありました。深くお詫びするとともに、訂正いたします。

【訂正箇所】

《登場人物の名称》

[誤] 佐伯沙耶香

[正] 佐伯沙弥香

《掲載誌の名称》

[誤] 月刊コミック大王

[正] 月刊コミック電撃大王


 今季放送中の月刊コミック電撃大王にて連載中の『やがて君になる』(以下、『やが君』)

やがて君になる (1)
画像引用元:やがて君になる (1) [ イベントチケット優先販売申込券 ] [Blu-ray] 販売元:KADOKAWA メディアファクトリー

 近年は『citrus』『このはな綺譚』をはじめとした「百合」をテーマにしたアニメが多く放映されるようになり、男女問わず百合作品が知られるようになったのではないかと想います。

 その中でも『やが君』は、他の百合作品と比べて

・男性もいる共学校で起こる百合

・「同性愛」という社会的な立場に揺れる心理描写が見て取れる

 など一線を画する要素があり、3人の心情はかなり複雑ながらもストーリー自体はとても読みやすく出来ていることから、とても高い評価を得ています。

 アニメも含めて作品の評価を見ていると、とにかく「小糸侑と佐伯沙弥香、七海燈子」のそれぞれの考え方や行動についての理解が難しい(理解できないわけではない)という声が多いように思えます。

 そこで今回は、主要人物である3人のそれぞれの持つ複雑な気持ちを改めて見直して行きたいと思います。

※本考察は一部原作6巻までの内容が含まれております。なるべく詳細は書かないよう配慮しておりますが、アニメ視聴組の方はネタバレ要素がありますのでお気をつけを!

小糸侑の性格について

小糸侑
画像引用元:TVアニメ「やがて君になる」公式サイト http://yagakimi.com/character/より引用(2018年11月27日閲覧)

 侑は「誰に対しても平等」という心を持っており、男女別け隔てない性格です。そのために「特別な感情」というものが分からず、中学卒業時に仲の良い男子に告白をされても、その気持ちに答えることが出来ませんでした。

 ただこれはあくまで「誰に対しても優しい」性格であり、彼女が冷めた人間というわけではありません。

 また彼女自身も「わたし(侑)を見て嬉しそうにするこの人(燈子)を可愛いと思えるようになりたい」など、「変わりたい」という気持ちも持っています。

 ですが、燈子としばらく一緒にいる間であっても、燈子を特別な感情を持って好きになることがありませんでした。

 それは燈子が「私を好きにならないで」という枷を掛けたから、というよりは「燈子へ向けている感情は別に他の人にも向けられる。今はそれが燈子に向いているだけ」というのが理由になっていると思われます。

 例えば侑はテスト勉強を図書室で行おうとした時、1人では集中できないので友人のこよみや朱里、同じ生徒会の槙くんを誘っていましたし、雨の日に傘を忘れた時も朱里→怜(侑の姉)の順に掛け合っていました。

 かなり悪い言い方ですが、ある種「誰でも良かった」のかもしれません。モチロンどこの誰でも構いません! という人たらし的な域まででは無いと思いますが。

 まぁ恐らくですが、これで仮に誰も一緒にいられなかったという場合であっても侑は(寂しいと感じるかもしれませんが)特に大きく感情を爆発させることは無いだろうなとも思います。

 個人的に、侑は後述する沙弥香と同じように同年代と比べて達観したタイプなのだと思います。

 またこれも筆者が勝手に感じている部分なのですが、誰に対しても平等な接し方をしていることが彼女にとっての普通なために「特別」が分からないのだろうとも思います。

 もし彼女が全員に対して100%の感情で接しているとなると、特別な人には100%以上の感情ってどう向けたらいいの? という疑問が浮かぶのかもしれないです。

 そしてその感情は、燈子と一緒に過ごすうちに次第に芽吹いていくようになります。

佐伯沙弥香の場合

佐伯沙耶香
画像引用元:TVアニメ「やがて君になる」公式サイト http://yagakimi.com/character/より引用(2018年11月27日閲覧)

 この作品の3人目の主人公とも言える沙弥香は、侑と同等に(いやそれ以上に)大人びた性格をしています。

 ただ侑との明確な違いは「燈子を本当に愛している」と自覚していること。また彼女自身、過去に女性と恋愛関係になっているという経験を持っていることが挙げられます。

 ただし、沙弥香は「(燈子に)人の好意を受け入れる余裕が無い」「今の関係が壊れるくらいならこのままの方が良い。一番の友人として必要としてくれるから」という理由で、告白はあえてしていない状態です。

 恐らくですが「余裕が無い」のは「燈子が亡き姉になろうと必死になっている」という部分に当てはまる……のだと思います。

 また明言はされていないので確証は無いですが、「一般的な価値観からすれば普通ではない」女性同士の恋愛についての苦悩を知っているからこそ、無理に巻き込みたくないという感情もあるかもしれません。怖いとも言っておりますが。

 沙弥香の一種のわがままでありながらも彼女の優しさで今のポジションでいる、という複雑な想いは、何とも胸が痛むお話だなと思います。

 燈子も「言えない部分が増えていくなぁ」と、沙弥香が燈子の深い部分まで介入してこないことを理解している描写があります。

 しかし、燈子は沙弥香にも自分自身の姿は見せたくないとも言っています。沙弥香はすでに気づいているのですが、やはりあえて自分が選んだ道だとして、何も言わないようにしています。

 多分、沙弥香はいずれ燈子が打ち明けてくれるのか、最後の最後まで我慢を突き通すのだろうと考えていました。ただ、それは侑が現れたことによって変わってきてしまったのです。

実は一番分かりやすい(と思う)七海燈子の信念

七海燈子
画像引用元:TVアニメ「やがて君になる」公式サイト http://yagakimi.com/character/より引用(2018年11月27日閲覧)

 個人的には燈子の性格というのは、作中では一番分かりやすい方なのではないかと思います。

 というのも、燈子自体はわりとストレートなタイプです。

 彼女の場合は今まで色々な人に「好き」という感情を向けられた人でしたが、本人はその気持ちを受け取らず、誰とも付き合おうとは思っていませんでした。

 また燈子は、元々亡くなった姉である七海澪の代わりになろうという強い意思を持っており、逆に「何もない」弱い自分を嫌っている節があります。だからこそ周りには「特別な人でありたい=姉と同じになりたい」という振る舞いを必死に装って学生生活を過ごしています。

 しかし、その弱い自分の姿すら見えている侑には「特別な自分でなくても良い」ことが分かり、侑の持つ「誰も特別に思わない」という(侑としては特段意識していない)優しさが彼女の心に触れ、次第に彼女の優しさに甘えていくようになります。

 そしてその甘えていいという感情こそが彼女の「大好き」になっていったのだと思います。

 これは悪く言えば燈子の特別の中のほころびで、良く言えば「彼女自身」の気持ちです。

 燈子自身の気持ちは作中でも分かる通り、本来は結構素直な子で至る所で侑に対してベタベタになっていきます。それも二人きりになった時は男子中学生か! というレベルで(笑)。

 ただし、彼女の「姉になる」という強い意思は、悲しくも彼女自身がどうしても達成させたかった生徒会劇の練習を経て崩れていくようになります。

 ここの経緯と展開については、今後のアニメをお楽しみにください(待てない方は原作をどうぞ)。

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侑が変わってしまったら?

 この侑と沙弥香、そして燈子がそれぞれに思う気持ちの絡み合いは、正直に言うとかなり残酷な内容なのではないかと考えます。

 まず、当初燈子は「誰も特別に思わない」侑が好きです。そして侑には「私を好きにならないで、私を嫌わないで」とまで言っています。

 しかし侑は今の「誰も特別に思わない」自分を変えたいと思っています。特に最初は「既に特別を知っている」燈子をずるいとすら感じていましたよね。

 現状では、この歪な感情同士がギリギリにも渡り合っています。

 侑は「燈子への感情は別に特別なものではない」と思っていますし、燈子も「侑は変わらない」と信じています。

 つまり、このままであれば2人はそのままいい関係(端から見ると謎の関係)で続いていきます。

 ただし、先程述べたように侑は「変わりたい」のです。

 変わってしまったら、燈子はどうするのでしょうか?

 もし「誰も特別に思わない」侑が「燈子を特別な人」と思ってしまったら?

 今まで誰に対しても平等で、素っ気なくも面倒を見てくれる侑への居心地の良さが燈子の心の支えになっている以上、それを失った時の燈子の喪失は大きいものだと思います。しかもそれが「燈子を特別な人」と見てしまった場合は特に。

 なんせ自分から「私を好きにならないで、嫌いにもならないで」という足かせを作ってしまっているのですから。

・侑が変わってしまう(誰かを特別視する理由を得る)

・燈子が自分自身を好きになる

 この二点が、これからの2人の関係をめぐる大きなポイントとなっていきます。

 そしてそのターニング・ポイントは、先述した生徒会劇になっていくのです。

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もどかしすぎる3人の関係の今後が気になりすぎる

  燈子の気持ちを理解してはいるが、中学から変わっていない自分に対して変化を求める侑。

 姉になる一心を持って自らを否定し、変わらない侑の心地よさに甘えてしまっている燈子。

 燈子の心情に気づいてはいるが、ちょっとしたわがままと自身の優しさから今の関係を壊したくない沙弥香

 3人の関係は非常にもどかしい様相で、そうでありながらも3人にも同情したくなるのは私だけなのでしょうか……?

 そしてこれらの関係(特に燈子と侑)は、前にも述べたように、燈子がどうしてもやりたい生徒会劇が始まることで大きく変わっていきます。

 亡くなった姉の代わりに生徒会劇を達成した燈子の先には何が待っているのでしょうか…?

 それは是非ともこれからのアニメに期待してください! といっても話数の関係上どこまでやるのかは分からないですが…。

 いや早く見てみたい! という方はぜひ原作を読まれることをオススメいたしますよ。

(Edit&Text/頭皮ぱっしょん)

◆百合きゅーぶ


TVアニメ「やがて君になる」公式サイト

©2018 仲谷 鳰/KADOKAWA/やがて君になる製作委員会

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