見た目はジブリ作品っぽいのに正しくはジブリ作品ではない……なんて作品が世の中にはあります。
たとえば、『風の谷のナウシカ』は現在でこそスタジオジブリのラインナップに並んでいる作品ではあるものの、公開当時はそもそもスタジオジブリ自体が設立されてしていませんでしたが、なぜいまではラインアップに名を連ねているのでしょうか。
今年の夏は宮崎駿監督の久しぶりの新作『君たちはどう生きるか』が公開されるということで、例年以上にジブリ作品がフィーチャーされている年です。スタジオジブリで制作されたわけではないのに、どこかジブリ作品に見える作品にはどのようなものがあるのでしょうか?
◆ジブリ以外で制作された宮崎駿監督作品たち
いまでこそ宮崎駿という名前を聞けばイコール“スタジオジブリ”という印象が強いですが、宮崎駿監督はスタジオジブリの設立以前からアニメーションの世界で活躍していた人物でした。
スタジオジブリが生まれたのは1985年なので、それ以前に制作された監督作である『ルパン三世 カリオストロの城』(1979)や『風の谷のナウシカ』(1984)などは厳密にはスタジオジブリ作品ではありません。スタジオジブリが設立されて初めて制作されたのが1986年の『天空の城ラピュタ』。本作以降に制作された映画がスタジオジブリで制作された作品です。
それ以外の作品はどこのスタジオが制作したのでしょうか。
『ルパン三世 カリオストロの城』を制作したのは東京ムービーという制作会社。当時は『ルパン三世』や『名探偵ホームズ』といったTVアニメシリーズを制作しており、それらのクレジット内に“宮崎駿”の名前が見られます。
東京ムービーという会社自体は現在はすでに制作会社としての形は残っておらず、現在も『ルパン三世』シリーズの制作を始め『名探偵コナン』『それいけ!アンパンマン』といった長寿タイトルを世に送り出しているトムス・エンタテインメントへとその系譜が引き継がれています。ちなみに高畑勲監督、宮崎駿脚本・原案などでも知られる『パンダコパンダ』シリーズも東京ムービーにて制作されました。
<画像引用元:https://www.ghibli.jp/works/nausicaa/ © 2005-2022 STUDIO GHIBLI Inc.>
一方、『風の谷のナウシカ』を制作したのはトップクラフトという制作会社です。
当初は海外との合作でのアニメーション制作を多く担当していた制作会社だったのですが、宮崎駿監督の『風の谷のナウシカ』を制作・成功したことで状況が一変。トップクラフトは解体され、トップクラフトを設立した原徹氏が取締役として名を連ねる形でスタジオジブリが生まれることになるのですが、原徹氏は90年代初頭に退社しています。
海外向けの制作をメインにしていたというスタジオジブリとはまた色の違う会社ではあったはずが、今となっては『風の谷のナウシカ』に関してばかり名前が上がる状況になってしまったのは少しかわいそうでもあります。