2019年1月にノイタミナでの放送が決まっている『約束のネバーランド』。現在の少年ジャンプの連載陣の中でも『デスノート』枠とも呼ばれているような作品で、いわゆる知能戦が物語の鍵になっている作品だ。
アニメ化発表の際、キャスト未発表にも関わらずボイス音声がついた広告が打たれ、「エマ役は誰?」など声優の推察がすでに話題を呼んだ作品でもある。
アニメでは「脱獄編」までを描くと既に発表がされている。
ここでは、原作を読んでいるという方に向け、ぜひアニメ放映で注目したいポイントなどを共有したい。
※『約束のネバーランド』は、主人公たちを次々に襲う「真相」によって物語が展開されます。原作未読でネタバレを読んでしまうと、かなり面白い漫画を100%楽しめなくなってしまう可能性がありますので、原作漫画未読の方はスルー推奨です!
「脱獄編」で描かれる情報の濃密さ
――「母と慕う彼女は親ではない 共に暮らす彼らは兄弟ではない ここグレイス=フィールドハウスは孤児院で 私は孤児 そう思っていた」
原作漫画の第1話は、このような主役の少女=エマ(11歳)の独白からスタートする。38人の子供たちが収容されている施設の最年長者で、唯一の大人であるシスターのもと、子供たちの世話を買って出るような溌溂とした少女だ。
第1話の描写時点では、現代の日本でも想像に容易い孤児院の風景が描かれている。ただ様相を呈している点と言えば、子供たち全員に「認識番号」が刻まれていること、高レベルな学力テストが毎日行われていること。そして施設に暮らす限り守らなければいけないルールが、「外へ通じる門と森の柵に近づかないこと」。つまり、「外へ出てはいけない」という絶対的ルール。
ただ、外の情報がたくさん描かれた学術書や絵本は図書館にいくらでもあるため、「キリンに乗りたい」という無垢で無茶な夢を見れるほどには外界について理解できている。
いつか優しい誰かが里親として自分を引き取ってくれる日を夢見ながら、12歳までの日々をこの施設で過ごす。それが、子供たちにとっての日常だった。
それが一変するのは、「引き取られた子供」の忘れ物をエマ達が届けようと門まで向かった夜のこと。そこに居たのは優しい里親の姿なんかではなく、「引き取られた子供」を殺し瓶詰にしている異形の者(=食人鬼)。
会話から察するに、母と慕っていたシスターは彼らの食料を出荷するために働いていた人間で、自分たちは農園で育てられている食材なのだと、信じられない現実にエマ達は直面する。これが、かなりのインパクトを読者に残した『約束のネバーランド』第1話のあらすじである。
そして第2話からは、毎日の学力テストで満点を取り続け、鬼達からは「特上」と評価されているエマ、ノーマン、レイの3人を中心に、この農園からの脱出を目指す、いわゆる「脱獄編」が幕を開く。この「脱獄編」にかけられた話数は全37話となっているが、第1話どころか1コマにかなりの情報量が詰められている漫画である。単純な「ジャンプでの全37話」とは考えられない質量を持っているのだ。
アニメで加えられることになる「動き」「音楽」「声」で、どれほどこの情報を処理し、質量やスピード感を衰えさせず脱獄編を描き切るかが一つの大きなポイントと言えるだろう。アニメ版の監督は、かの『エルフェンリート』を手掛けた神戸守が務める。直近のノイタミナ枠ではミステリ大作をアニメ化した『すべてがFになる』も記憶に新しい。演出という点で評価が高い監督でもあるので、アニメ版も期待できそうだ。
個人的には、シスタークローネの入退場がいかに漫画での魅力を損なわないまま描かれるかが、アニメ版での気になるポイントである。
主演キャスト発表!実力派声優3人を揃えたアニメ
単行本第10巻の発売に合わせ、ついに主演声優の発表が行われた。
主役である11歳の少女、「エマ」。抜群の運動神経と驚異的学習能力を持った彼女を演じるのは、7歳のときから子役声優としてアニメ出演を果たしている諸星すみれさん。代表作に『アイカツ!』などがあり、子供向けアニメで長年主演を務める他、『東京喰種トーキョーグール』での名演も話題となった。ディズニー映画の吹き替えにも多く参加しており、『シュガー・ラッシュ』では主役の少女の吹き替えを担当している。それ以外にも舞台女優やドラマ女優の仕事もこなす、まさに子役上がりの実力派だ。明るいだけでなく、優しく滲むような特徴的な声はまさにエマに適役と言えそうである。
そして、そんなエマを慕いながら導く存在でもある、天才的な知能を持った11歳の少年「ノーマン」を演じるのが内田真礼さんだ。内田真礼さんと言えば、『中二病でも恋がしたい!』の小鳥遊六花、『アイドルマスター シンデレラガールズ』の神崎蘭子が代表作にある、まさに「癖のある女の子を演じさせたら右に出る者はいない」とも言えそうな若手女性声優である。少しだけ癖がありながら、それでも甘さを持つ彼女の声が「少年」を演じる。これだけでも視聴の理由には充分なりえそうである。果たしてどんな演技を見せてくれるのか、2019年1月を楽しみに待ちたい。
最後に、エマとノーマンと同い年にして物語のキーマン的存在となる、知恵者の少年「レイ」を演じるのは、実績を備えた伊瀬茉莉也さんだ。レイのビジュアルに「CV.伊瀬茉莉也」と見て、直近で思い起こされるのは『宝石の国』のアンタークチサイトだろうか。原作漫画でかなり人気の高い彼だが、アニメ版でも臆すことなく魅力を発揮したことで2017年冬アニメでは話題を呼んだ。ジャンプ漫画作品では、あの『HUNTER×HUNTER』(第2作目)で主要キャラのキルアを演じている実力派でもある。「声変わりしてしまう前の少年」の声として、少年役を演じる女性声優の中でもかなり人気の高い一人だ。この『約束のネバーランド』でも、ひねくれたところのあるレイをどこまで魅力的な少年に仕上げるのか、イチファンとして非常に楽しみである。
キャストについてはまだこの3人しか発表されていないが、「脱獄編」の場合この3人と同じくらい重要である人物に「シスター」がいる。優しく、慈愛に満ちながら、農園の責任者として子供を無慈悲に追い詰める存在だ。彼女の演技によって物語の不穏さが作られると言っても過言ではないと言える役どころを、いったい誰が演じるのか、これからの追加情報が待てない。
――現在のジャンプの看板を担う作品の一つである『約束のネバーランド』。高い評価を得るアニメを生み続けるノイタミナ枠で、アニメ作品としてどう化けていくのか、一人の読者として見守っていきたい。
(Edit&Text/三井ハチ)
©白井カイウ・出水ぽすか/集英社・約束のネバーランド製作委員会