以前、「残念なヒロイン2選」と銘打ってご紹介した作品、『ももいろ人魚』の作者・曙はる先生が四コマ漫画を手掛けていることをご存知でしょうか?
今回はその作品の中から、読むと心がほっこりして元気が湧いてくるオフィスラブコメ漫画、『ベツ×バラ』をご案内いたします!
ライトな四コマと見せかけてお仕事奮闘記の要素も
舞台はお菓子のパッケージ会社「アマイ企画」。大企業というよりは中小企業寄り、そして社員平均年齢50代という老舗の匂いも漂わせる会社です。
そんなアマイ企画の制作室で働くエースがこの作品の主人公、入社2年目の別所たまき(20)。甘いものが大好きで明朗活発、仕事もバリバリこなす今どき女子です。
物語は、会社の営業部に新入社員がやって来るという話題から始まります。たまきの前に現れたのは彼女よりも年上の新入社員・原田智哉(22)。
ミドル、そしてシニアがひしめく会社の中で唯一の若い男女が出会う……しますよね、ラブの予感が!!
でも最初はお互い全くそんな気はなく、気のいい先輩と後輩という呈で進んで行きます。ちなみに、たまきから見た原田は「年上だけど敬語が使えない生意気な後輩」、原田から見たたまきは「年下で酒癖の悪い強気な先輩」という印象。
まあこういう状態からラブに発展する確率って高いよね!
という生暖かい気持ちで見てしまう私……。
だがしかし、この作品をただの四コマラブコメと思うことなかれ! たまきと原田の関係を軸に2人が仕事に奮闘する姿も描かれているのです。
最初はダメダメな状態から段々営業の楽しさを知って行く原田の様子や、彼を指導しつつ自身も業務にまい進するたまきなど、仕事サイドにもしっかりと触れています。
社員旅行や頻繁に行われる飲み会、防災訓練に師走の繁忙期、健康診断、社長の娘襲来、バレンタインデー、花粉症などなど社内のイベントも目白押し。
このアマイ企画、中小企業だからか全体的な年齢層が高めだからなのか、社員同士が超仲良し、いつも和気あいあいとしていて雰囲気抜群なんです。
たまきと原田の仲にヤキモキしながらも色々と世話を焼いたりちゃちゃを入れるミドルのおじさま、おばさま方……いい味出してます。
そして二次元の暗黙の了解=日々を過ごしても年を取らないという法則はこの作品にはなく、普通に春夏秋冬があり年末を迎え、また新しい一年が始まります。
そういった点もリアル感があり共感しやすい要因の一つかもしれません。
年下の先輩(♀)と年上の後輩(♂)が繰り広げるラブコメディ
さて、仕事の話はこの辺までにしておいて(殆どしていませんが)、ラブコメサイドに参りたいと思います。
恋愛模様を繰り広げるのは勿論この二人、たまきと原田。まあ社内に若い社員がいないので他に選択肢はない訳ですが……いや、いるよね。2巻の表紙の右側にウェービーな美女がいるよね?
よく気付きましたね。
彼女の名前は天井カナ、アマイ企画の社長の娘です。え! ライバルが社長令嬢……ということは、原田を巡って四コマではおさまり切らない恋愛バトルが始まるんじゃ!?
いえいえ、そんなことはありません。何と彼女は、既婚者なのです。 ←天井は旧姓で現在は「唐井カナ」
……ということで選択肢のないたまきと原田は仕方なく社内恋愛の渦に呑み込まれて行きます(そんな渋々ではありません)。
ここで二人の人物像をおさらい。
たまきは明るくパワフル、何事も一生懸命な頑張り屋さんですが、イケメンが大好きな今どき女子。非常に惚れっぽくて作中でも次々と片思いのターンに入りますが、その後相手が結婚してしまったり、元々既婚者だったりするなどことごとく上手くいきません。隠れ巨乳なのに勿体ない。
実はたまき、恋愛経験は殆どなくそっち方面に関しては完全なるビギナー。
対する原田はざっくばらんで怖いもの知らず、掴みどころのないこれまた今どき男子。 ただ恋愛経験はかなり豊富で元カノの話題が出た際も湯水のように女性の名前が湧いて出るといった入れ食い状態。
経験で言えばたまきのかなり先をひた走る、恋愛マスター。そんな彼は1巻の序盤で付き合っていた彼女にフラれてフリーになります。
恋愛初心者と上級者の恋。最初は中々ベクトルが噛み合いません。何と言ってもたまきは惚れっぽいので原田が入社してからも同じビルに入っている歯医者さんや通っているパソコン教室の先生、中学時代の元カレなどにフラフラします。
原田は原田で、社内恋愛をする気がなくたまきのこともそういう対象とは思っていないため、彼女を意識して好きだと自覚するまでにかなりの時間を費やす始末。
その間、お疲れ会や、飲み、社員旅行、食事会、飲み、親睦会、飲み会、懇親会……何だか飲み会の多い会社ですが、そんな酒の席で酔ったたまきの面倒を見るのは毎回原田、ほぼルーティーンワークのようになっており、いつも自宅まで送り届けるのでたまきの祖父母とも顔見知りになります。
そして徐々に距離が近づき、一緒にいることに心地良さを感じ始める二人。
お互い意識するようになってからも「好き」という気持ちを中々認めてくれないので、当然二人の仲は進展しません。
外から見ていたら両想いだって手に取るようにわかるのに!
ああ、ヤキモキする!!
という思いを1巻の終盤あたりから最終巻である3巻まで持ち続けるのは大変でしたが、3巻の中盤以降から想いを自覚した原田が積極的に頑張ってくれたので、その甲斐あって二人は無事結ばれました。
付き合う前の段階でのお互い意識し合って照れまくる様子や、お付き合いを始めた後のデレデレ感が堪らなく可愛い! 第3巻……必見です!!
そして良かった……3巻の最終話まで見て現状維持のままだったらどうしようかと思ったよ。
――ということで、『ベツ×バラ』の世界、いかがでしたでしょうか。
あ、そういえばタイトルの『ベツ×バラ』ですが、
ベツ→別所 ※たまき
バラ→原田
の意味なんだそうです。てっきり「甘いものは別腹」の「ベツバラ」だと思っていたよ……。
(Edit&Text/彩乃)