放送開始当初、ねこ娘の美少女化に日本全土が沸いた第6期『ゲゲゲの鬼太郎』。筆者ももちろん大いに発奮し、名無し事件により幼女化した際などは萌死ぬかと思いました。本望ですが。
そんな中で意外にも、ねずみ男のキャラクター性が抜群に活かされた回がチラホラと見受けられるように感じます。
そこでここでは鬼太郎にも、モチロンねこ娘にもない「ねずみ男の魅力」について、考察してみたいと思います。
弱いからこそ、魅せられる
まず、第13話「欲望の金剛石! 輪入道の罠」と第24話「ねずみ男失踪!? 石妖の罠」のふたつ。
それぞれ卑怯だったり情けなかったりと散々な姿を魅せているものの、前者では鬼太郎のピンチを救うために駆け付け、後者では惚れた相手を守るため、ねこ娘を足止めした実績の持ち主でもあるのです。
心に残る名シーンは「この状況で、このキャラが、こんなことをやる(言う)か!?」という驚きで形作られていることが多いもの。怒りに燃える鬼太郎が全力で戦う姿は分かりやすいカッコよさがありますが、ねずみ男の生き様が作る感動は、主人公には生み出せないでしょう。
メンバーの中でも最も弱く最も卑怯なねずみ男だからこそ、魅せられる姿があるのです。
この場合、「いつも乱暴なキャラがたまに優しくなると超いいヤツに見える」の法則ですね。映画版ジャイアンです。
たとえ結婚詐欺師が相手でも、体を張って守り抜こうとする度胸が、視聴者の胸を打ちます(犬山まなちゃんに対しては、惚れた翌週に狸へ差し出したりしてましたが……)。
ジョニーとねずみ男
そして、第56話「魅惑の旋律 吸血鬼エリート」。吸血鬼の「音で相手を操る力」は、ねずみ男の商才にも似た能力でした。
口八丁で相手を乗せて、思い通りに働かせるという戦略は、ねずみ男が化け草履やたくろう火を相手にやっていた世渡りと同じ。己に与えられたカードで世知辛い社会を生き抜いてきた、似た者同士だったのです。
境遇にシンパシーを感じたエリートが、本当は吸血鬼として落ちこぼれで、昔は「ジョニー」という名前だったことを明かすほど。終盤で、始末したはずのねずみ男が現れた際のエリートが、なぜか嬉しそうでもあったのは非常に印象的でした。
そしてクライマックス、炎に包まれる吸血鬼の末路を見届けながら、ねずみ男が呟いた一言。
「いいや、あいつの名前はジョニー。吸血鬼……、ジョニーだ」
……ねずみ男とジョニーの違いは、「仲間」の存在。もしも「ラーメンでも食べに行かないか」と気軽に声を掛けてくれる相手がいたならば、そして、いなかったならば。
「エリート」を名乗っていたのは、ねずみ男だったのかもしれません。
(Edit&Text/ヒダマル)
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