かつてはいろんな作品で実施されていた“応援上映”。
しかし2020年にはすっかりその言葉も聞かなくなってしまいました。
応援上映といえば、映画の鑑賞の際にスクリーンの展開に合わせて、声出しをしたりサイリウムを振ったりといった行動が推奨される、という特殊な上映形態のことなのですが、2020年は新型コロナウイルス感染症が流行。感染防止により上映中の発声はほぼ禁止のような状態になってしまいました。時代の流れというよりもウイルスの流行という止むを得ない理由により、実施ができないという悲しい事態となっているのですが......そんな中、新たなアイドル映画にてしっかり応援上映が実施されていたのです。
その作品が『LIP×LIP FILM×LIVE』です。
<画像引用元:https://honeyworks-anime.jp/ より引用掲載 ©2020LIP×LIP Movie Project>
◆『LIP×LIP FILM×LIVE』とは
『LIP×LIP FILM×LIVE〜この世界の楽しみ方〜』とは、バーチャルアイドルユニットであるLIP×LIPを描いた初の劇場版。
LIP×LIPのメンバーは、歌舞伎の世界を出身としている特徴的な前髪を持った、染谷勇次郎くんと、歌うことが好きな金髪の柴崎愛蔵。この二人からなるアイドルユニットが、いかにしてユニットを組んだのかという物語パートと、二人の歌とダンスを実際の会場で聞いているかのように体験できるライブパートの二部構成で描かれます。
キャラクターデザインを担当しているのは、“ハニワ”の愛称でおなじみのHoneyWorks。LIP×LIP自体も、HoneyWorksが原作を務めるアニメーション映画『ずっと前から好きでした。〜告白実行委員会〜』の挿入歌でデビューしています。
今回の映画も実はHoneyWorksの10周年記念プロジェクトの一環として制作されたものです。
◆『LIP×LIP FILM×LIVE』のライブパート
そんな本作のライブパートがなかなかの見もの。
ゲストアイドルの曲を含む4曲が実際のライブを観ているかのように楽しめるプログラムとなっていて、普通の映画とは違った体験となっています。しっかり舞台脇からキャラクターが登場したり、ここぞという登場シーンはしっかり迫り(床の一部だけが上下する仕掛け)を用いてキャラクターを登場させたりと、細かな舞台演出も再現されています。
モーションキャプチャーを使い、キャラクターたちの動きもかなり自然でバーチャルライブをしっかりこなしてきているLIP×LIPらしい、プロの実力を感じるパートとなっていました。
◆コロナ禍の応援上映
こういったライブ演出があるのなら、2020年以前であれば“応援上映”で声援を送るのがお決まりだったのですが、今や時代が違います。マスクを着用して鑑賞するように注意され、上映中の発声なんてもってのほかという時代です。そんなわけで、今作ではしっかりコロナ禍をふまえた応援上映形式を取っていました。
具体的な応援上映のルールは以下の様。
・発声はNG
・立ち上がったり足踏みなどもNG
・サイリウムやうちわ、タオルなどを使った応援はOK
・拍手はOK
というワケでしっかり、コロナ禍ナイズした応援形式にアップデート。
私が鑑賞に訪れた大阪・梅田ブルク7さんの劇場場内にもしっかり看板が置いてありましたよ。
――私が鑑賞した回では、他の観客もしっかり約束を守って、発声による音声はせず、サイリウムを振って応援しておりました。
やはり声を出すことはできないのですが、それ以外の形式で応援上映は生き延びていたワケです。
『KING OF PRISM』シリーズなどでも馴染みのあった、観客がツッコミを入れるような味のある声援のような文化が失われてしまいそうなのは残念なのですが、もしかすると拍手やサイリウムを用いた新たな文化が発展していく......なんてことは今後の応援上映文化の動きになってくるかもしれませんね。
私もそろそろサイリウムが欲しくなってきました。LIP×LIPの今後の応援上映に付いていける様に一つや二つ買っておこうかな。
〈Edit&Text,Photograph(看板)/ネジムラ89〉
≪ネジムラ89≫
アニメ映画ライター。FILMAGA、めるも、リアルサウンド映画部、映画ひとっとび、ムービーナーズなど現在複数のメディア媒体でアニメーション映画を中心とした話題を発信中。缶バッチ専門販売ネットショップ・カンバーバッチの運営やnoteでは『読むと“アニメ映画”知識が結構増えるラブレター』(https://note.com/nejimura89/m/mcae3f6e654bd)を配信中です。@nejimakikoibumi
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