<※本記事には漫画『進撃の巨人』及び、TVアニメ『進撃の巨人』The Final Seasonのネタバレが登場します。ご注意ください>
TVアニメ『進撃の巨人』4期「The Final Season」の放送が開始され、約2ヶ月ほどが経過しました。
3期までと比べ物語が大きく動き出している4期。怒涛の展開で多くの視聴者を湧かせています。
<画像引用元:https://shingeki.tv/final/ より引用掲載 ©諫山創・講談社/「進撃の巨人」The Final Season製作委員会>
今までと違うのは、その展開だけでなく、マーレ人やエルディア人が入り乱れてきたところ。また、エレンが「進撃の巨人」という巨人の力を持った1人の戦士としてよりも、「始祖の巨人」を持つ重要人物となっていることが大きな違いではないでしょうか。
TVアニメ『進撃の巨人』も終盤に差し掛かり、マーレ人とエルディア人の歴史や、始祖の巨人の力についての秘密が徐々に明かされ重要度が増してきています。少しずつ明かされる謎や今でも張られる伏線にヤキモキしている方もいるのではないでしょうか?
<※以下『進撃の巨人』及び、TVアニメ『進撃の巨人』The Final Seasonのネタバレが登場します。ご注意ください>
◆そもそも「始祖ユミル」って何者なの? 最初の巨人はどんな人生を歩んだ?
<画像引用元:https://shingeki.tv/season3/story/#/season3/43 より引用掲載 ©諫山創・講談社/「進撃の巨人」製作委員会>
『進撃の巨人』で、物語の鍵となっている巨人の力は元々「ユミル」と呼ばれる1人の少女が所有していました。その人類最初の巨人とも言える始祖ユミルは、どうやって巨人の力を手に入れて、どんな人生を歩んだのでしょうか。原作、第30巻の内容を踏まえて紹介していきます。
始祖ユミルは元々、特別な能力などを持っていない普通の人間でした。しかし、唯一違うことは、彼女が奴隷だったこと。しかも、ユミルの所有者は、作中でよく登場するエルディア人の祖先エルディア族。ユミルはエルディア族、族長の奴隷だったのです。
奴隷としての日々を送るユミルは、ごく一般的な奴隷でした。自分の意思を極力持つことなく、言われた仕事を黙々とこなすだけ。そんなある日、ユミルは家畜を逃した罪に問われてしまいます。罰として、狩人や猟犬に追い立てられるユミル。傷を負ったユミルは、瀕死のまま森へ逃げ延びる。その先でユミルは大樹の根よりもさらに下層に存在した脊髄のようなモノと接触し、巨人の力を手に入れます。この脊髄のようなモノが生き物なのかファンタジーの類に該当するモノなのかは、まだ判明していませんが『進撃の巨人』で最も謎の多いモノであることは間違いないでしょう。
巨人の力を手に入れた始祖ユミルでしたが、巨人の力を使い自由を目指したり、人間に復讐するようなことはありませんでした。なんとユミルは、巨人の力をエルディア族のために使うことにしたのです。
始祖ユミルは巨人の力を使い、敵部族を倒し、荒れ地を耕し、その上エルディア族族長の子供を産まされました。巨人の力を手に入れてもユミルは、エルディア族に服従し、奴隷としての人生を歩んだのです。
そして、月日が経ったある時、服従させたはずのある部族が、エルディア族に反旗を翻しました。突然のことであったため、あわや命を落とすところまで追い詰められる族長でしたが、すんでのところで、始祖ユミルが族長を庇い一命を取り留めます。
しかし、凶刃を身に受けてしまった始祖ユミルは、その場で息絶えることに……。始祖ユミルの力を失うことを恐れたエルディア族族長は、始祖の力を継承させるために、ユミルの肉体を、その娘3人に食べさせるのでした。
「何としてでもユミルの力を引き継ぐのだ。ユミルの体を全て食い尽くせ」
その娘というのが、エレンたちが住むパラディ島の壁の名前にもなっているマリア、ローゼ、シーナの3人。
望み通り、始祖ユミルの力を受け継がせたエルディア族族長は、いつしか王となり、世界を支配していきました。巨人の力を受け継いだ娘たちは、エルディア族族長の言葉通り、子供を増やし、自分が死ねば子供に背骨を食べさせるようになったのです。
こうして生まれたのが、巨人の力を扱えるユミルの民、エルディア人なのです。
そして、始祖ユミルは己の死後も少女の姿のまま、始祖の巨人の力を持つものが訪れることのできる世界「道」で、巨人を作り続ける奴隷となりました。そう、エルディア族王家の血を引く者の奴隷として。2000年間ずっと……。
これが、ユミルが巨人の力を得た経緯と、その人生になります。ユミルの最後が、さんざん奴隷として扱ってきた人間の盾になることなんて、なんとも救われません。何事にも抗ってきたエレンたちとは正反対の人生です。
◆どっちが始祖ユミルの民? エルディア人とマーレ人の違いとその歴史とは?
<画像引用元:https://shingeki.tv/final/story/#/episode/61 より引用掲載 ©諫山創・講談社/「進撃の巨人」The Final Season製作委員会>
始祖ユミルの生涯で登場したエルディア人。『進撃の巨人』では、あまり多くの種族は登場せず、終始エルディア人とマーレ人の戦争の歴史がテーマとなっていますよね。
ここで、少しややこしくなるのが、エルディア人とマーレ人どっちがどっちで、それぞれがどこに住んでいるかということ。
「いやいや、簡単。エレンたちがエルディア人で、その敵がマーレ人だ」と思う方もいるでしょう。確かに、間違ってはいません。しかし、少し気を抜くと、ここの関係がややこしくなってしまうのが『進撃の巨人』の面白いところなのです。
1番ややこしい点は、マーレ人とエルディア人という括りだけで、敵味方を別けることができない点にあります。まず、パラディ島に住んでいるエレンたちがエルディア人なのは間違いありません(一部例外あり)。ややこしいのは大陸に住む住人たちです。
大陸の住人たちは、大半はマーレ人ですが、中にはエルディア人も含まれます。巨人の力を使いエレンたちに壁の住人に攻め込んできているのが、この大陸に残されたエルディア人なのです。そもそも、巨人の力は、ユミルの民であるエルディア人にしか扱えません。作中では、このように巨人の力を使う大陸に残されたエルディア人を名誉マーレ人と呼んだり、マーレの戦士と呼んだりします。
エルディア人にとっては名誉なこととされていますが、その力を有しているからこそ、エルディア人は、巨人の力を使った歴史も相まって多くの人間から憎悪されて、差別的扱いを受けている。だから、ライナーやベルトルトなどは、その差別から家族を抜け出させるため命を賭けてまで、巨人の力を手に入れたのです。
つまり『進撃の巨人』は、マーレ人とエルディア人の戦いを描いているように見えますが、作中で行われているほとんどは、エルディア人 対 エルディア人の戦いなのです。
では、そもそもなぜ、巨人の力を使えるエルディア人がここまで蔑まれ、パラディ島に逃げ込むような事態になったのでしょうか。
<画像引用元:https://shingeki.tv/final/story/#/episode/63 より引用掲載 ©諫山創・講談社/「進撃の巨人」The Final Season製作委員会>
発端は、世界を支配したエルディア帝国で巨人の力を巡り内乱(巨人大戦)が起きたこと。巨人大戦により、多くの同族をなくした当時の王、145代目フリッツ王は、悲しみに暮れ現状を打破しようとある芝居を計画しました。その芝居とは、フリッツ王が、あるマーレの英雄と裏切り者のエルディア人に敗れるというストーリー。
巨人の力を持つエルディア人がなんの力も持たないマーレに敗れるなんておかしいと思いませんでしたか? 歴史上では、マーレにフリッツ王が敗れたとなっていますが、実は全てフリッツ王が仕組んだことだったのです。
この芝居は巨人大戦を終結させるため、そして、長き歴史に渡る巨人の力を使った虐殺に終止符を打つために行った芝居でした。
この時、パラディ島へ逃げるフリッツ王に置いていかれたエルディア人が、今マーレに支配されているエルディア人で、フリッツ王と共に逃げ切った住人がエレンたちの祖先になります。「始祖の巨人」で重要となる壁の中の住人という要素は、フリッツ王から始まったのです。
◆不戦の契りって何? どうすれば「始祖の巨人」の力を使うことができるの?
<画像引用元:https://shingeki.tv/final/story/#/episode/64 より引用掲載 ©諫山創・講談社/「進撃の巨人」The Final Season製作委員会>
パラディ島に逃げ、壁を築き、住人の記憶を消し、戦争を止めたフリッツ王ですが、ここまでしても「この平和も長くは続かない、自分が生きて始祖の巨人の力を持っている期間だけだ」と恐れました。そこで、新たに生み出したのが「不戦の契り」というものです。
「不戦の契り」で重要になるのが始祖の巨人の力で、この力はエルディア人に対して、記憶を消すだけでなく、ある種の人体改造のようなこともできます。その一端で生まれたのが驚異的身体能力を持つアッカーマン一族です。
「不戦の契り」は、同じように始祖の巨人の力を使用したもので、始祖の巨人を継承した王家の人間に発動し、フリッツ王と同じく、戦争を起こさず、壁の中で暮らしていくことを望むように洗脳するというモノ。この「不戦の契り」によって始祖の巨人の力を継承した王家の人間は、絶対に巨人の力を壁の外へ向けようとはしなくなりました。
さらに「不戦の契り」に加え、始祖の巨人の力は、エルディア王家の血を引くものにしか扱えません。これにより、フリッツ王はエルディア人が驕るキッカケとなった巨人の力を擬似的に封じたのです。
エレンが始祖の巨人を持っていようとも、上手く扱えないのは、王家の血を引いていないから。また、代々始祖の巨人を受け継いできた人間が壁の中にこだわったのも、この「不戦の契り」の影響ということです。
これらにより、始祖の巨人最大の力である「座標」(巨人を操る力)は封じられたかのように思われました。しかし、一つだけ穴があったのです。それが、王家以外の人間が始祖の巨人を継承し、巨人の力を持った王家の人間と接触してしまうような場合。
思い出して欲しいのが、エレンが初めて始祖の巨人らしき力を発動させ、巨人を誘導した時のことです。アニメでは2期終盤くらいになるでしょうか。ライナーやベルトルトに捕らえられたエレンを助けるべく調査兵団が彼らを追いかける場面です。
なんとか、ライナーたちの手から逃れるエレンですが、調査兵団はボロボロ、周囲に巨人も現れ絶望的な状態でした。そこへ、エレンとミカサに襲いかかったのが、エレンの母親を食べた因縁の巨人。
命を賭けてエレンを守るミサカを逆に守ろうとしたエレンは、その巨人に殴りかかります。するとどうでしょう。なぜか、周囲にいた他の巨人たちは、エレンが殴った因縁の巨人に引寄させられるではありませんか。
<画像引用元:https://shingeki.tv/season3/story/img/season2/episode_37.jpg より引用掲載 ©諫山創・講談社/「進撃の巨人」製作委員会>
何が起こったか全く分かっていない様子のエレンたちですが、ライナーたちはエレンが使った力を「座標」と恐れます。そう、この時使った「座標」の力こそが、始祖の巨人の力なのです。
これは、アニメ3期で明かされたことですが、エレンの母親を食べたこの因縁の巨人というのは、元々大陸に残されたエルディア王家の生き残りでした。つまり、エレンは意図せずして、巨人となったエルディア王家の人間と接触したのです。
しかし、これは完全なものではありません。本当に始祖の巨人の力が開放されるのは、巨人の力を持つ王家の人間と接触すること。
現状では、王家の血を引いており、獣の巨人の力を持っているジークがエレンと接触するか、エルディア王家の生き残りであるヒストリアに巨人の力を継承させ、エレンと接触させた時にのみ始祖の巨人の力が開放させることができます。
少し、複雑なプロセスを踏む必要がありますが、エレンが始祖の巨人の力を開放することが可能な段階に来ています。
世界を支配した始祖の巨人の力をエレンが手に入れるとどうなるのでしょうか。今後の展開にも注目です。
〈文/天乃ひる〉
©諫山創・講談社/「進撃の巨人」The Final Season製作委員会