4月にフランスのアニメーション映画『ミューン 月の守護者の伝説』が日本上映を果たす。その上映に先駆けて、東京・池袋にて3月11日(金)から14日(月)までの4日間にかけて開催された「東京アニメアワードフェスティバル2022」(TAAF2022)にて『ミューン 月の守護者の伝説』の日本語吹替版完成披露上映が実施された。
配給を行うのは、これまでも『ロング・ウェイ・ノース 地球のてっぺん』『マロナの幻想的な物語り』『カラミティ』など、多くの海外アニメーションを日本公開に導いてくれたリスキットだ。
今回、『マロナの幻想的な物語り』でも曲芸師マノーレ役を演じた小野友樹さんが、自信家でマッチョな“太陽の守護者”ソホーン役で、再びリスキット配給作品のキャストに名を連ねている。ソホーン役が決まったときの心境や、本作の見所について語っていただいた。
――小野さんは『マロナの幻想的な物語り』(『ミューン 月の守護者の伝説』同様、リスキット配給によって2020年日本公開)にも参加されていましたが、今回吹き替えを務めるにあたってオーディションなどが行われたのでしょうか?
小野友樹さん(以下、小野さん):オーディションではなくご指名をいただきました。『マロナの幻想的な物語り』のご縁もありつつ、おそらくお声がけいただけたのかなと思います。
――ソホーン役に選ばれたときの心境を教えてください。
小野さん:ソホーンが太陽の守護者ということを聞いていたのですが、スケール感が大柄だったので、僕のイメージの中の大柄な声でアプローチしようと思っていました。ですが「そんなに大柄ぶらなくていいよ」とディレクションいただきました。そういったやりとりが面白かったですね。
――日本のアニメーションに多数参加されていますが、吹き替えをするにあたって海外のアニメーションとの違いは感じたりしましたか?
小野さん:技術でしょうか。例えば、今回でいうと途中でCG表現だったものが(2Dの)アニメーション表現に変わっていく部分があるので、その表現ってなかなか日本の作品を観ていると巡りあうことが少なかったりします。しかもアニメーションのタッチも独特なんですよね。そういう部分に、本作における魅力が一つあるなとすごく感じました。
今回は特に、7年前の作品がこうして吹き替えとして日本で初上陸という形になったので、最新の技術ではないのかもしれないけど、そこを気にしなくても観られるほど素敵な表現されているので、作品を楽しむうえでは大きな違いはないのかな、と思います。
<小野さんが演じるソホーン>
――今後、挑戦してみたい役柄とかはありますか?
小野さん:自分の信条として、自分で「こういうキャラクターをやる」「得意だ」っていうのをあまりイメージしすぎないようにしています。なので「小野友樹の声でこのキャラクターを聞かせてほしい」「聞きたい」というお声をいただける以上、その声にこたえつづけるというのが僕の思いで根っこの夢でもあります。
ただ、個人的には、やってみたいキャラクターはありまして、例えばテンションが振り切れているキャラクターだったりとか、逆にものすごく表現が少ないキャラクターをやってみたいとは思います。
――お子さんがそろそろ映像作品を観る歳になると思いますが、すでにアニメーションなどを観させてはいたりするのですか?
小野さん:まさしく今、子どもが好きな作品を中心に観ています。テレビの前の椅子にドカッと座って「殿様か」といった出で立ちで観ていたりします(笑)。なので、もしかして僕が声をあてさせていただいた作品も近々観てくれるかもしれないなと思いながら成長を見守っています。
――最後に映画の公開を楽しみに待っている方々へのメッセージや『ミューン 月の守護者の伝説』の見所など教えてください。
小野さん:7年越しということで、時を経て現地から日本で作品を観てもらえるきっかけとして、吹き替えに参加させてもらえるのは幸せなことだなと感じています。
異文化交流というほどではないかもしれないですけど、フランスのアニメーションというものを僕らの声を通して、また観ていただけると嬉しいなと思います。難しい状況下ではありますが、もし良かったら劇場で観ていただけると嬉しいです。
またその感想をSNSなどで、ネタバレを避けつついい感じに触れていただけると、ゴジラじゃないですけど、第2、第3のフランス映画がやってくるかもしれない! ぜひよろしくお願いします。
――多くのアニメーションに声優として参加されている小野さんにとっても、珍しい体験となったようだ。
『ミューン 月の守護者の伝説』は、4月より順次全国での劇場公開が実施される。時を経て日本へやってきた本作を、いかに演じたのかにも注目して、ぜひ劇場へ足を運んで欲しい。
〈取材・文/ネジムラ89 撮影 /水野ウバ高輝〉
◆作品情報
■タイトル:ミューン 月の守護者の伝説
(原題 MUNE, LE GARDIEN DE LA LUNE)
■あらすじ:
空想の世界に暮らす、青白くいたずら好きな森の子、ミューン。ひょんなことから、夜を運び、夢の世界を守る「月の守護者」に選ばれたミューンだったが、何をするにも失敗ばかり。そしてとうとう月は失われ、太陽は冥界の王に盗まれてしまった。世界に昼と夜を取り戻すため、ミューンは太陽の守護者ソホーンと、か弱い蝋人形の少女グリムと共に旅に出る。これは素晴らしい冒険を経て、ミューンが伝説の守護者となるまでの物語。
■監督:アレクサンドル・へボヤン、ブノワ・フィリポン
■音楽:ブリュノ・クレ (『ウルフ・ウォーカー』)
■ジャンル:ファンタジー・アニメーション
■提供:リスキット/ホリプロインターナショナル/キャトルステラ配給:リスキット
東京アニメアワードフェスティバル 2015 優秀賞
フランス映画祭 in 横浜 2021 出品作品/TAAF2022 招待作品/東京都推奨映画
▼公式サイト
▼この記事を書いたライター
《ネジムラ89》
アニメ映画ライター。FILMAGA、めるも、リアルサウンド映画部、映画ひとっとび、ムービーナーズなど現在複数のメディア媒体でアニメーション映画を中心とした話題を発信中。缶バッチ専門販売ネットショップ・カンバーバッチの運営やnoteでは『読むと“アニメ映画”知識が結構増えるラブレター』(https://note.com/nejimura89/m/mcae3f6e654bd)を配信中です。Twitter⇒@nejimakikoibumi
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<2014/フランス/フランス語・英語・日本語/シネマスコープ/85 分>