2022年に入りグランドシネマサンシャイン池袋では、中国映画を特集する上映企画「電影祭」がスタートし、日本での上映が限られていた中国映画たちが続々と上映されています。5月にはついに関西での開催も発表され、徐々にその活躍の場を広げています。
\#電影祭 (https://t.co/OzomBloJpb) 5月予定上映ラインアップ/🎊
5月6日から @cs_ikebukuro @Cinemart_Osaka
>【両劇場で連日上映開始】✨
1⃣『#恋するシェフの最強レシピ』(池袋のみ)
2⃣『#羅小黒戦記』
3⃣『#ナタの大暴れ』
4⃣『こんにちは、私のお母さん』
5⃣『#兵馬俑の城』
6⃣『#熊出没』 pic.twitter.com/UBnJedkGib— 『電影祭』・中華映画を楽しもう! (@den_ei_sai) April 8, 2022
中国の作品といえば、近年では『羅小黒戦記ぼくが選ぶ未来』のヒットが記憶に新しいですが、それに続くように『DAHUFA-守護者と謎の豆人間-』、『白蛇:縁起』など近年の中国のアニメーション映画の一般上映の例も増えてきました。
その中の一つに2021年に公開された『ナタ転生』があります。
『羅小黒戦記ぼくが選ぶ未来』『白蛇:縁起』と同様、チームジョイ配給によって日本上映された作品で、「封神演義」などでも知られる哪吒(なた)の生まれ変わりである主人公の物語を描いたアクション映画でした。実はこの『ナタ転生』に関連した新たなアニメーション映画の公開が発表されました。
哪吒の次は、“楊戩(ようせん)”の登場です。
◆2022年7月『新神榜:杨戬』が中国公開!
中国のアニメーション制作会社・追光動画制作は新作アニメーション映画『新神榜:杨戬』を中国にて2022年7月に公開することを発表しました。
本作は、封神演義の登場人物としても知られる楊戩を主人公とした作品。
神々の戦いから1500年という月日が経ち、無実の罪で賞金稼ぎとして生計を立てていた楊戩は、謎の人物の依頼によりある若者を追い詰めたところ、その若者が自身の甥である沈香であることが発覚します。“宝莲灯”を見つけ出し、母を救おうとする沈香の行動は大きな災いをもたらすこととなり、楊戩は沈香を探し出し、過去の出来事を明らかにする旅に出る、というストーリー。
今回発表された映像では、楊戩の姿に加えて、彼が連れ添う神犬である哮天犬(こうてんけん)の姿や中国系建築とSFチックな雰囲気が混ざった舞台が確認できます。
◆中国の3DCGアニメーション映画界の前線で戦う追光動画
『新神榜:杨戬』を制作する追光動画は、中国のアニメーション界の中でも特に目覚ましい活躍をしている制作会社の一つです。『ガーディアン・ブラザーズ-小門神』(2016)を公開以来、『トイズ&ペット みんなで未来へ大冒険』(2017)、『リトル・キャッツ 空飛ぶねこの大冒険』(2018)と年一本ペースでコンスタントに3DCGアニメーションの長編作品を世に送り出しています。中でも2019年に制作した『白蛇:縁起』は興行収入4.6億元を超える大ヒットとなり、日本でも2021年に劇場公開され、Snow Manの佐久間大介さんが日本語吹き替え版の主演を務めるなど話題となりました。
そんな追光動画が2021年に公開した映画が『ナタ転生』だったわけですが、本作の中題が実は『新神榜:哪吒重生』でした。今回発表された『新神榜:杨戬』とタイトルが偶然似てしまったわけではなく、“新神榜”シリーズの第二弾として制作されており、『ナタ転生』との繋がりも期待できる作品となっています。
◆次々と広がる中国神話の世界
楊戩といえば、“七十二変化の術”などを持つ中国神話界でも顕聖二郎真君と同一視され、「封神演義」だけでなく「西遊記」や「宝蓮灯」といった別の神話にも登場する存在です。中でも今回のあらすじからは、「宝蓮灯」をベースとしたストーリーとなるようで、どういった内容となるのかすでに出ている情報からも想像が可能です。
実は「宝蓮灯」の主人公は沈香であり、楊戩は沈香の母親を華山に閉じ込めてしまう悪役の立場にあたります。今回の『新神榜:杨戬』では、その楊戩をタイトルに据えながら、「宝蓮灯」をベースにした物語となるようなので、楊戩と沈香の因縁に焦点を当てた物語となるのかもしれません。
そして、期待されるのは“新神榜”シリーズとしての繋がりです。現時点でこそまだ『ナタ転生』との直接的な繋がりは明示されていませんが、このタイトルにした以上、『ナタ転生』の本編後に描かれた“ある”シーンの真意がもしかすると、この映画で明かされるかもしれません。
そして昨今、中国のアニメーション映画の日本上陸が活発になっている状況を踏まえると、『新神榜:杨戬』の日本上映も期待したいところ。どうしても3DCGアニメーション映画といえばアメリカの大手作品が主流となっている状況ですが、もしかするとその状況も今後は変わっていくかもしれません。今やハリウッドに並ぶ市場を形成する中国の渾身の一本となり得る『新神榜:杨戬』の動向には要注目です。
〈文/ネジムラ89〉
《ネジムラ89》
アニメ映画ライター。FILMAGA、めるも、リアルサウンド映画部、映画ひとっとび、ムービーナーズなど現在複数のメディア媒体でアニメーション映画を中心とした話題を発信中。缶バッチ専門販売ネットショップ・カンバーバッチの運営やnoteでは『読むと“アニメ映画”知識が結構増えるラブレター』(https://note.com/nejimura89/m/mcae3f6e654bd)を配信中です。Twitter⇒@nejimakikoibumi