16世紀ヨーロッパ、イタリアのフィレンツェを舞台に、主人公・アルテが一人前の画家を目指す物語を描く作品『アルテ』ですが、その中で彼女の前には大きく高い壁が幾度となく立ちはだかることになります。
<画像引用元:http://arte-anime.com/ より引用掲載 Ⓒ大久保圭/コアミックス,アルテ製作委員会>
その度にアルテはその壁と向き合い、画家としても人間としても成長していくわけですが、本記事では第4話までにアルテが向き合った問題を振り返り、目標へ邁進する彼女の成長を再確認していきます。
女人禁制? 性別が判断基準となる職人界の厳しい現実
<画像引用元:http://arte-anime.com/story/n01/ より引用掲載 Ⓒ大久保圭/コアミックス,アルテ製作委員会>
現代社会でもしばしば問題になる男女差別ですが、中世ヨーロッパではその根深さが現代の比ではありませんでした。
アルテは、門戸を叩いた工房は軒並み女だからという理由で、門前払いを受けてしまいます。解剖の現場を見学する際も男装を余儀なくされ、バレた際に周囲の男性が発した「女を入れたなんて教会に知れたら」という発言からも、女性というだけで煙たがれていたことは想像に難くありません。
工房屋上にある廃屋の修繕に必要な材料を男性に頼らず自ら運ぶ姿からも、自分は男性に頼らずとも重労働だってできるというアピールだったように思えます。
性別による差別意識は、一人前の画家を目指すアルテにとって、生涯をかけて向き合っていかなければいけない命題とも言えますね。
よき友であり尊敬する人は、2面性を持った魔性の女
<画像引用元:http://arte-anime.com/story/n04/ より引用掲載 Ⓒ大久保圭/コアミックス,アルテ製作委員会>
弟子入りした工房のお得意様・ヴェロニカは、上流階級の男性を相手にサービスを提供するコルティジャーナ(高級娼婦)という、日本の花魁のような仕事をする妖艶かつ知性的な雰囲気を放つ女性です。
仕事の依頼でヴェロニカの邸宅を訪れたアルテは、仕事のために壁一面に設えられた本を読み込んだ、そのひたむきさに尊敬の念を抱くのですが、あくまで彼女はコルティジャーナ。客である男性との駆け引きで相手の心を乱すこともいとわない、その二面性に戸惑いを隠せないでいました。
しかし、ヴェロニカに「よくないと思います」と告げて彼女の家を去ってから、仕事上の振る舞いと人間性を一緒くたにしていたと気付きます。
好きだった絵を書くことをそのまま画家という職業に当てはめていたアルテからすれば、盲点だったのでしょう。そういった、割り切りとも言える大人の立ち振舞いを覚えることも、彼女が画家として大成するために必要なのかもしれません。
アルテの断髪は、性意識との決別の証――のハズが…
<画像引用元:http://arte-anime.com/story/n01/ より引用掲載 Ⓒ大久保圭/コアミックス,アルテ製作委員会>
第1話中盤でアルテが弟子入りを断られた時、その場で綺麗に結わえた髪を切ってみせるシーンが印象的でした。得てしてこういった“断髪”と呼ばれる行為は、人物の意識改革のシンボルとして描かれることが往々にしてあります。
こうしてアルテは男でも女でもなく、ひとりの徒弟として弟子入りを果たしたハズでした。ただ、解剖現場から逃げ出す最中にレオと激しく密着してからというもの、レオが近くに来るだけで呼吸が苦しくなる、動悸がする、上の空になること数回。
レオに「たるんでる」とまで言われ、傷心の中でヴェロニカにそのことを打ち明けると、曰く、恋だと言います。その足でとある場所へ連れられ、かつてはコルティジャーナだった女性が、恋に溺れたがために転落した人生を歩んでいる現実を目の当たりにしました。
ヴェロニカに夢を問われて、「自分ひとりの力で生きていくこと」と真っ直ぐな瞳で答えたアルテですが、この恋心とどう向き合っていくのかも、職人としてのアルテの今後を左右することになるでしょう。
――ここまで第4話時点において、アルテに立ち塞がる壁を振り返ってきましたが、いかがでしたか。
最終回までにまだまだ壁にぶつかることが予想されますが、持ち前のガッツで乗り越えてくれるだろうアルテの成長ぶりに注目していきたいところですね。
(Edit&Text/叶梢)
Ⓒ大久保圭/コアミックス,アルテ製作委員会