火星に起きた「奇跡の7分間」に向けて物語が進む音楽アニメ、『キャロル&チューズデイ』。
10周年を迎えたフライングドッグが送る劇中歌は最大の魅力ですが、「対比」をうまく利用した演出も面白い作品です。
その対比ですが、ストーリーにどんな効果を与え、作品の人気に貢献しているのでしょうか?
そこで今回は、『キャロル&チューズデイ』に仕掛けられた「対比」というテクニックについて語っていきます。
バディものは対比が命
キャラクターが2人いれば、「対比」と「対立」が巻き起こるのが物語の常。
『ぼくたちは勉強ができない』のダブルヒロインは「文系と理系の対比」を魅せていますし、『世話やき狐の仙狐さん』の仙狐さんとシロは「甘やかし」と「甘やかされ」の対比を作っています。
まして『キャロル&チューズデイ』はバディものですから、対比を活かさない手はありません。
黒髪で褐色・孤児として生きて来たキャロルに対し、色白で金髪・エリート家系のチューズデイと、キャラデザインやバックボーンや性格、いたるところに対比が用意されています。そうすることで、互いのキャラを互いが立て合っているのです。
また、ライバルキャラであるアンジェラが置かれた状況にも、強い対比が観られます。
手狭な環境で肩を寄せ合って作戦会議を続けるキャロルたちに比べ、空間こそ広いものの互いの距離が遠く、信頼関係のないドライな言葉をやりとりするアンジェラ。
登場キャラクターが多い分、対比を作ることで分かりやすさを上げ、物語に没頭しやすい工夫がされています。
ストーリーの対比
キャラクターの間で魅せる対比もあれば、ストーリーが魅せる対比もあります。
2人の初ステージは観客がたった10人でしたが、次の舞台サイドニア・フェスでは一気に10万人を前にして歌う羽目に。お次は審査員を前にした勝ち残りオーディションと、大きなうねりを伴った舞台変化が正に「対比」です。
マーズブライテストの予選会場でも、奇抜なだけで音楽には明るくない素人が、お粗末なパフォーマンスで審査員の頭を抱えさせるシーンがありました(こういった箇所の音楽に手を抜かないのも、『キャロチュー』の大きな魅力です)。
しかし、8組の本選に進むとクオリティは一変!
音楽を題材にしているだけあり、毎回趣向の異なる劇中歌がストーリーを盛り上げる、見事な力の入れよう。予選会場での前フリのおかげで、実力者たちの魅力も引き立っています。
キャラの中の対比
対比の効果は、一人のキャラクターの中でも発揮されます。
例えば、空気を読まない軽薄な言動が目立っていたピョートル。
初登場時の彼は「チャラい」、あるいは「イタイ」の一言で片づけられそうなキャラクターでしたが、オーディション準決勝の舞台で「自分のことが好きじゃなければ、他人を好きになんてなれない(意訳)」と信念を語り、愛を乗せたパフォーマンスで会場を沸かせました。
「ぼくがぼく自身を愛せるように ぼくを愛せるやつなんているかい?」
以前との対比・ギャップを魅せることで、台詞(歌詞)の魅力が最大限に引き出されている演出です。
――上述した3つの対比テクニックは『キャロル&チューズデイ』のストーリーを引き立たせ、作品の人気向上に一役買っていると言えます。
制作陣がそのテクニックを意図的に使用したか否かは定かではありませんが、ストーリーの中では確認することができますよね。
『キャロル&チューズデイ』もいよいよクライマックスに突入。キャロルとチューズデイの活躍からはますます目が離せません!
(Text/ヒダマル Edit/花祀果凛)
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