もはや外を歩いていて見ない日はないというぐらい、町のいたるところで「ちいかわ」を見かけるようになりました。
「ちいかわ」とは、ナガノ先生がTwitterにて発表している漫画作品。“なんか小さくてかわいいやつ”の略称である主人公・ちいかわと、その友達であるハチワレやうさぎたちが、穏やかそうで少し不穏な世界で体験する不思議な日々を描いた作品です。
— ちいかわ💫アニメ金曜 (@ngnchiikawa) April 12, 2022
キャラクターとしては以前から描かれていたのですが、漫画シリーズとしてのスタートは2020年。つい最近でありながら、そんな漫画シリーズを原作に、今年2022年に早くもアニメーション化を果たしました。出自と同じくこのアニメシリーズも、ちょっと変わった形式でのお披露目となっているのですが、そんなアニメ「ちいかわ」がどういった仕上がりだったのかをついに始まった放送をふまえて追っていきます。
◆アニメ版「ちいかわ」の放送がスタート
<画像引用元:https://www.anime-chiikawa.jp/episode.html ©ナガノ/ちいかわ製作委員会>
「ちいかわ」の漫画は、連作エピソードが多くなってきてはいるものの、基本は1ページ漫画として更新されているシリーズ。いったいどんな形式でアニメ化をするのかと思いきや、放送はなんとフジテレビ系列の朝の情報番組として言わずと知れた『めざましテレビ』でした。
現状1話1分半程度のエピソード、4月4日(月)の初回放送を特例として、毎週金曜日7:40頃に新作を放送していくことを予定しています。
嬉しいのは、1週間限定見逃し配信も実施することを発表している点。番組内の1コーナーでは例外とされる印象が強いですが、放送をリアルタイムで見れないという人も、TVアニメ「ちいかわ」を楽しめるように配慮されています。
しかも、アニメシリーズの放送に先行して、午前5時58分頃に実施される定番の占いコーナーも“ちいかわ占い”へとリニューアルし、日々の占いをちいかわ達が彩ります。めざましテレビにより「ちいかわ」が猛プッシュされています。
◆アニメ版「ちいかわ」のココに驚かされた!
満を持して放送された「ちいかわ」は1分半という短い作品でありながら、しっかり見所のある作品となっていました。
原作のタッチをそのまま活かしたビジュアルは漫画でおなじみのちいかわがそのまま動き出すように見えるビジュアルとなっていたり、自身のMVでもアニメーション作家とのコラボレーションを果たしてきたトクマルシューゴさんがついにアニメーションの音楽を担当しているなど、随所に「なるほど、こうアニメ化するのか」と感心させられたのですが、何よりも驚いたのはやはり声優さんの演技でしょう。
「ちいかわ」のメインキャラクターのうち、基本的にセリフらしいセリフがあるのは猫のハチワレのみ。主人公のちいかわは「ワッ」や「フ!」などといった反応しか口にしないことがほとんどで、うさぎに関しては「ヤハ」や「ウラー」など奇声をあげるばかりです。
これをアニメ化したらどうなってしまうんだろう? 下手したらペラペラ喋らせてしまうような改変とかされてもおかしくないよなぁ、と正直不安もあったのですが、いざ本編を観てみると感嘆詞のみでしっかり再現されていて見事です。
第1話である『かためのプリン/ホットケーキ』では早速セリフらしいセリフのないちいかわとうさぎのコンビしか登場しないという恐るべき事態なのですが、その表情と発声のみでしっかりちいかわ達の感情が表されているのだから感心します。一体どんな台本で演技しているんだろうと驚かされる内容となっています。
さらに驚くべきはちいかわを演じている青木遥さん。ここまで上手くハマっているということは、ベテランの方が演じているのかと思いきや、TVアニメの声優には今回が初挑戦で歳はまだ10歳だというのだからさらに衝撃的。アニメ化の発表の際には、原作者のナガノ先生がキャラクター達の声については「強い希望を叶えていただいた」と明言されていたのですが、こうして実際の作品を観ると見事な采配が行われていたのだと思い知りました。
◆シビアさを増していく「ちいかわ」はどんな存在になっていくのか?
こうして「ちいかわ」は、見事なスタートを切ったわけですが、正直気になる点はまだまだこれからの放送にもあります。それは、今後のエピソードで原作でも描かれたシビアな世界観が展開されていくのか? という点です。
第1話では、大きなプリンやホットケーキ、第2話ではスフィンクスに遭遇するという変わったアイテムや生き物が登場するほのぼのアニメといった体裁でしたが、原作ではここからさらに不穏さを増していきます。スフィンクスどころではない得体の知れない生き物に襲われたり、ちいかわ達が生き物を討伐する労働により生計を立てていたりと、なぜか地下の牢獄に閉じ込められたりと、過酷な世界観であることが描かれていきます。
可愛いだけで終わらない尖り方をした原作の「ちいかわ」を思うと、爽やかな朝の番組の中に今後どんなドラマを落としていくのか、不安な気持ちが湧いてきます。新年度の『めざましテレビ』は、胸がキュッとなるような体験をさせて、みんなを学校や会社へ送り出すのかと思うと、改めてこの企画の挑戦性の凄まじさがわかります。
ただ、過酷な世の中を懸命に生きるちいかわ達の背中こそ、私たちに元気を与えてくれる存在になれるとも考えられます。
新年度の朝を「ちいかわ」がどう変えてくれるのか。ちいかわが『めざましテレビ』の新たな顔となれるのか。本編ともども、ちいかわ達の日々を見守っていきたいです。
〈文/ネジムラ89〉
《ネジムラ89》
アニメ映画ライター。FILMAGA、めるも、リアルサウンド映画部、映画ひとっとび、ムービーナーズなど現在複数のメディア媒体でアニメーション映画を中心とした話題を発信中。缶バッチ専門販売ネットショップ・カンバーバッチの運営やnoteでは『読むと“アニメ映画”知識が結構増えるラブレター』(https://note.com/nejimura89/m/mcae3f6e654bd)を配信中です。Twitter⇒@nejimakikoibumi