昔は当たり前だったアニメ・漫画の描写ですが、令和の時代ではコンプライアンスに抵触する可能性があります。その一つとして喫煙シーンなどが挙げられますが、ほかにはどんな描写が不適切と言われてしまうのでしょうか?

◆“あの国民的なアニメ”も昔はヤバかった!?

 昭和から令和へのタイムスリップを通して世代ギャップを描いたドラマ『不適切にもほどがある!』の略称「ふてほど」が、「2024ユーキャン新語・流行語大賞」の年間大賞に選ばれましたが、アニメでも以前は放送できたものの、今では「不適切!」と言われかねないシーンがあります。

●まさに「バイオレンスサザエさん!」──『サザエさん』

『サザエさん』は今でこそ古き良き家族の姿が描かれていますが、放送初期は首を絞めたりハサミを持って追いかけまわしたりするバイオレンスなシーンがありました。

 このアニメは1969(昭和44)年から放送が始まりました。現在はホームドラマの色合いが濃い作品ですが、放送当初はドタバタしたギャグコメディ調の作品で、アブないシーンも描かれています。

 たとえば、記念すべき第1回では、カツオが誤って親戚のはま子おばさんの首をロープで締めるシーンがありました。ほかにも、フネが波平へのラブレターを発見してハサミを片手に彼を追いかけ回し、残り少ない髪の毛を切り落とそうとします。

 また、過激なシーン以外にも、マスオとワカメが訪れた病院で、ヒトラーを称賛する「ハイル・ヒトラー」の掛け声を発する人がいたり、実は訪れた病院が「阿呆精神病院」というひどい名前だったりしました。これは現代なら「不適切にもほどがある!」と言われ、テレビで放送できないでしょう。

●災害の現場で「記念撮影!?」──『ちびまる子ちゃん』

『ちびまる子ちゃん』では、1974年に起きた七夕豪雨での経験を元に、今では放送できないようなまる子たちの町が洪水に襲われる話が描かれました。

 この作品の作者であるさくらももこ先生は、1974年に静岡県を襲った七夕豪雨を経験し、その体験を元に「まるちゃんの町は大洪水」という話を描きます。

 この話ではまる子たちの町が豪雨に襲われて洪水が起きますが、まる子は災害という実感がなくやじ馬のように現場を見に向かいました。そこにはまる子のほかにも多くのやじ馬がいてビデオで撮影したり、洪水で流れてきたものに歓声をあげたりします。

 まる子もイベントと勘違いしているのか、洪水現場を背景に記念撮影を始めました。

 その後、まる子は変わり果てた街の姿や、屋根の上に避難する友達のたまちゃんを見て、ショックを受けます。そして、この出来事は忘れられないものとして、胸に焼き付けられました。

 この話は原作が1988(昭和63)年に発売されたコミック第2巻に収録され、アニメは1990(平成2)年に放送されましたが、前半の不謹慎な様子から現在では到底放送できないでしょう。『サザエさん』と同様に、「不適切にもほどがある!」と言わざるを得ません。

詳しく読む⇒令和では放送できない「不適切にもほどがある」アニメ描写 “あの国民的なアニメ”も昔はヤバかった!?

◆アニメから消えゆく描写

 新作アニメ制作中の『北斗の拳』や、105日より放送が始まった『らんま1/2』などリメイクアニメがブームになる一方で、ファンからは「描写はコンプラ的に大丈夫なのか」と心配の声も。コンプライアンスが厳しい現代では、「不適切」とされる描写は容赦なくカットや改変しなければ、放送自体が危ぶまれることだってあるのです。

 次の2つの描写も、今では見かける機会がめっきり減ってしまいました。

●『ちびまる子ちゃん』『サザエさん』にもあった喫煙シーン

『サザエさん』の波平とマスオも、『ちびまる子ちゃん』の友蔵も、昔はタバコを吸っていました。

 波平に至っては、20186月に放送された「傘とやさしさ」での「タバコを買いに来た」発言により喫煙者であることが発覚し、一時SNSで話題に。それほど、彼らの喫煙者のイメージは薄れていたのです。

 このように、現代ではコンプライアンスに配慮した結果、喫煙キャラがタバコを吸わなくなる例が増えています。

 たとえば、『NARUTO-ナルト-』の奈良シカマル。彼は本来タバコを吸うキャラクターであるにもかかわらず、アニメでは彼の喫煙に関するシーンはすべてカットされています。

 さらに暁のメンバー・飛段との戦いでは、原作通りであれば火のついたタバコを投げ込んで起爆札に着火させるところを、タバコが「ライター」に改変されることに(アニメ『NARUTO-ナルト疾風伝』第308話「風遁・螺旋手裏剣!」より)。

 未成年であるシカマルはともかく、成人の喫煙シーンも現代では避けられつつあります。アニメを視聴する少年少女たちが、容易にタバコに興味を持たないための抑止の意味もあるのでしょう。

●『ちいかわ』でも差し替えられた“飲酒シーン”

『じゃりン子チエ』で小学生のチエがお酒を飲まされるシーンがあったり、『海がきこえる』で未成年の武藤里伽子がコークハイを飲んでいたりしました。

 しかし、令和ではコンプライアンス的にNGにあたるといわれる飲酒描写。その影響は、幅広い世代から人気を誇る『ちいかわ』にも及んでいました。

『ちいかわ』に登場するくりまんじゅうは、いつも何らかのお酒を飲んでいる“のんべえキャラ”。しかし、原作では日本酒らしきお酒を飲んでいたシーンが、アニメではお茶に変更されていたのです(20232月放送「焼きしいたけ」より)。

 また、『プロゴルファー猿』では小丸が抱える一升瓶の中身が原作ではお酒だったものの、アニメではミネラルウォーターに変わっています(アニメ『プロゴルファー猿』第1話「華麗なる世界の一匹狼」より)。

『ちいかわ』の場合は朝の情報番組内の放送であるからなどさまざまな理由がありますが、これからも飲酒描写は減少していくのではないかと予想されます。

詳しく読む⇒「え!?こんなモノ」までコンプラ的にアウトなの? アニメから消えゆく4つの描写

〈文/アニギャラ☆REW編集部 @anigala01

 

※サムネイル画像:https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000058.000069859.htmlより

©長谷川町子美術館

※タイトルおよび画像の著作権はすべて著作者に帰属します

※本記事はアフィリエイトプログラムによる収益を得ている場合があります

※無断複写・転載を禁止します

※Reproduction is prohibited.

※禁止私自轉載、加工

※무단 전재는 금지입니다.