昭和から令和へのタイムスリップを通して世代ギャップを描いたドラマ『不適切にもほどがある!』が話題になり、現代では不適切になった昔の事柄が注目されています。アニメにも同じように以前は放送できたものの、今では「不適切!」と言われかねないお色気シーンやバイオレンスなシーンがあります。

◆「全裸」がばっちり放送!──『キューティーハニー』

 『キューティーハニー』は3回のアニメ化がされていますが、中でも1973(昭和48)年に放送された初期のアニメでは、主人公の如月ハニーの全裸姿が毎回のように描かれていました。

 この作品はハニーが空中元素固定装置という空中の元素を用いてあらゆるものを作り出す装置を使って、犯罪組織パンサークローと戦います。

 ハニーは戦うときに「キューティーハニー」という戦士に変身しますが、このときに一度全裸になるのです。しかも、当時は規制が厳しくなかったためか、お色気シーンでも現在のように白い光でごまかされず、ばっちり全裸姿が放送されていました。

 放送時間は2030分とゴールデンタイムではなかったものの、視聴していた子供が多く、両親と見た人は気まずい思いをしたようです。がっつり全裸姿を描くのは深夜アニメでも規制が入る現代からすると、「不適切!」と言われてしまうでしょう。

 なお、1994年から1995年にかけてOVA『新・キューティーハニー』が制作されましたが、こちらはOVAということもあり、アニメ版よりさらにお色気シーンが満載です。制作会社が倒産してしまい未完の作品となってしまいましたが、変身シーンをはじめ、かなりの攻めた内容になっています。

◆電話でプライベートが筒抜け──『めぞん一刻』

 『めぞん一刻』では、連絡を取るときに当時は携帯電話が一般的でなかったうえ、主人公の五代裕作が経済的な理由からアパートの共有の電話を利用していたことで、彼のプライベートが同じアパートの住人に筒抜けでした。

 この作品は、五代とヒロインの音無響子を中心に繰り広げられるラブコメです。作品の時代背景は、携帯電話が広く普及する前の1980年代でした。

 当時の連絡手段は主に固定電話が使われていましたが、五代は経済的な理由から自身が暮らすアパートの共有電話を使います。アパートの住人らは五代と音無の関係を面白がり、五代宛てにかかってきた女性からの電話を取り次ぐことで、五代と音無がすれ違うことがありました。

 今では携帯電話やスマートフォンの世帯保有率が9割を超え、電話を取り次ぐことがなくなりこのような事態はありえません。

 電話を取り次いだことがない人からすると、ほかの人からの電話にでることは、プライベートへ踏み入ることと同じと考え失礼だと思う人もいるでしょう。そのような観点から見ると、2人の関係を面白がるアパートの住人らは「不適切」と言えるかもしれません。

◆まさに「バイオレンスサザエさん!」──『サザエさん』

 『サザエさん』は今でこそ古き良き家族の姿が描かれていますが、放送初期は首を絞めたりハサミを持って追いかけまわしたりするバイオレンスなシーンがありました。

 このアニメは1969(昭和44)年から放送が始まりました。現在はホームドラマの色合いが濃い作品ですが、放送当初はドタバタしたギャグコメディ調の作品で、アブないシーンも描かれています。

 たとえば、記念すべき第1回では、カツオが誤って親戚のはま子おばさんの首をロープで締めるシーンがありました。ほかにも、フネが波平へのラブレターを発見してハサミを片手に彼を追いかけ回し、残り少ない髪の毛を切り落とそうとします。

 また、過激なシーン以外にも、マスオとワカメが訪れた病院で、ヒトラーを称賛する「ハイル・ヒトラー」の掛け声を発する人がいたり、実は訪れた病院が「阿呆精神病院」というひどい名前だったりしました。これは現代なら「不適切にもほどがある!」と言われ、テレビで放送できないでしょう。

◆災害の現場で「記念撮影!?」──『ちびまる子ちゃん』

 『ちびまる子ちゃん』では、1974年に起きた七夕豪雨での経験を元に、今では放送できないようなまる子たちの町が洪水に襲われる話が描かれました。

 この作品の作者であるさくらももこ先生は、1974年に静岡県を襲った七夕豪雨を経験し、その体験を元に「まるちゃんの町は大洪水」という話を描きます。

 この話ではまる子たちの町が豪雨に襲われて洪水が起きますが、まる子は災害という実感がなくやじ馬のように現場を見に向かいました。そこにはまる子のほかにも多くのやじ馬がいてビデオで撮影したり、洪水で流れてきたものに歓声をあげたりします。

 まる子もイベントと勘違いしているのか、洪水現場を背景に記念撮影を始めました。

 その後、まる子は変わり果てた街の姿や、屋根の上に避難する友達のたまちゃんを見て、ショックを受けます。そして、この出来事は忘れられないものとして、胸に焼き付けられました。

 この話は原作が1988(昭和63)年に発売されたコミック第2巻に収録され、アニメは1990(平成2)年に放送されましたが、前半の不謹慎な様子から現在では到底放送できないでしょう。『サザエさん』と同様に、「不適切にもほどがある!」と言わざるを得ません。

 

 ──アニメでも当時の時代背景をもとに描いているためか、ドラマ『不適切にもほどがある!』のように今では考えられないような描写があります。当時は許されたのかもしれませんが、コンプライアンスが厳しい現在では許されず、うっかり放送しようものなら炎上する可能性があるでしょう。

〈文/林星来 @seira_hayashi

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朝日新聞出版

《林星来》
フリーライターとして活動中。子供の頃から培ってきたアニメ知識を活かして、話題のアニメを中心に執筆。アニメ以外のジャンルでは、葬儀・遺品整理・金融・恋愛などの記事もさまざまなメディアで執筆しています。

 

※サムネイル画像:Amazonより

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