令和の時代に入り、コンプライアンスが叫ばれる昨今、その波はアニメの描写にまで及んでいます。昭和・平成の時代では当たり前に放送されていた描写も今では、「不適切」と言わざるを得ないものがあります。
◆アニメから消えゆく2つの描写
リメイクアニメの制作が発表されるたびに、ファンからは「描写はコンプラ的に大丈夫なのか」と心配の声も。コンプライアンスが厳しい現代では、「不適切」とされる描写は容赦なくカットや改変しなければ、放送自体が危ぶまれることだってあるのです。次の描写も、今では見かける機会がめっきり減ってしまいました。
●『ちびまる子ちゃん』『サザエさん』にもあった喫煙シーン
『サザエさん』の波平とマスオも、『ちびまる子ちゃん』の友蔵も、昔はタバコを吸っていました。
波平に至っては、2018年6月に放送された「傘とやさしさ」での「タバコを買いに来た」発言により喫煙者であることが発覚し、一時SNSで話題に。それほど、彼らの喫煙者のイメージは薄れていたのです。
このように、現代ではコンプライアンスに配慮した結果、喫煙キャラがタバコを吸わなくなる例が増えています。
たとえば、『NARUTO-ナルト-』の奈良シカマル。彼は本来タバコを吸うキャラクターであるにもかかわらず、アニメでは彼の喫煙に関するシーンはすべてカットされています。
さらに暁のメンバー・飛段との戦いでは、原作通りであれば火のついたタバコを投げ込んで起爆札に着火させるところを、タバコが「ライター」に改変されることに(アニメ『NARUTO-ナルト疾風伝』第308話「風遁・螺旋手裏剣!」より)。
未成年であるシカマルはともかく、成人の喫煙シーンも現代では避けられつつあります。アニメを視聴する少年少女たちが、容易にタバコに興味を持たないための抑止の意味もあるのでしょう。
●そういえば減った『クレヨンしんちゃん』のお仕置きシーン
『クレヨンしんちゃん』で印象に残る場面といえば、みさえのお仕置きシーン。しんのすけが破天荒な行動をとるたびみさえの「げんこつ」や「グリグリ攻撃」「お尻叩き」が繰り広げられましたが、それらのシーンは近年減少傾向にあります。というのも、現代ではみさえのお仕置きシーンを「体罰」や「幼児虐待」と捉える視聴者もいるようなのです。
『クレヨンしんちゃん』はほかの子供向けアニメに比べお下劣描写や過激な描写が多く、PTAから嫌われているとの逸話も。そういった背景もあり、お仕置きシーンは最小限に控えハートフルな描写が目立つように転換を図ったのではないでしょうか。
また、『サザエさん』にも最近見なくなったお仕置きシーンが存在します。それは、2007年9月に放送された「小さなジェントルマン」などに登場する、カツオを納屋に軟禁するシーン。こちらも「虐待」にあたると考えられており、近頃のコンプライアンスによる規制の厳しさがうかがえます。
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◆令和では放送できない「不適切にもほどがある」アニメ描写
アニメには、以前は放送できたものの今では「不適切!」と言われかねないお色気シーンやバイオレンスなシーンがあります。
●「全裸」がばっちり放送!──『キューティーハニー』
『キューティーハニー』は3回のアニメ化がされていますが、中でも1973(昭和48)年に放送された初期のアニメでは、主人公の如月ハニーの全裸姿が毎回のように描かれていました。
この作品はハニーが空中元素固定装置という空中の元素を用いてあらゆるものを作り出す装置を使って、犯罪組織パンサークローと戦います。
ハニーは戦うときに「キューティーハニー」という戦士に変身しますが、このときに一度全裸になるのです。しかも、当時は規制が厳しくなかったためか、お色気シーンでも現在のように白い光でごまかされず、ばっちり全裸姿が放送されていました。
放送時間は20時30分とゴールデンタイムではなかったものの、視聴していた子供が多く、両親と見た人は気まずい思いをしたようです。がっつり全裸姿を描くのは深夜アニメでも規制が入る現代からすると、「不適切!」と言われてしまうでしょう。
なお、1994年から1995年にかけてOVA『新・キューティーハニー』が制作されましたが、こちらはOVAということもあり、アニメ版よりさらにお色気シーンが満載です。制作会社が倒産してしまい未完の作品となってしまいましたが、変身シーンをはじめ、かなりの攻めた内容になっています。
●災害の現場で「記念撮影!?」──『ちびまる子ちゃん』
『ちびまる子ちゃん』では、1974年に起きた七夕豪雨での経験を元に、今では放送できないようなまる子たちの町が洪水に襲われる話が描かれました。
この作品の作者であるさくらももこ先生は、1974年に静岡県を襲った七夕豪雨を経験し、その体験を元に「まるちゃんの町は大洪水」という話を描きます。
この話ではまる子たちの町が豪雨に襲われて洪水が起きますが、まる子は災害という実感がなくやじ馬のように現場を見に向かいました。そこにはまる子のほかにも多くのやじ馬がいてビデオで撮影したり、洪水で流れてきたものに歓声をあげたりします。
まる子もイベントと勘違いしているのか、洪水現場を背景に記念撮影を始めました。
その後、まる子は変わり果てた街の姿や、屋根の上に避難する友達のたまちゃんを見て、ショックを受けます。そして、この出来事は忘れられないものとして、胸に焼き付けられました。
この話は原作が1988(昭和63)年に発売されたコミック第2巻に収録され、アニメは1990(平成2)年に放送されましたが、前半の不謹慎な様子から現在では到底放送できないでしょう。『サザエさん』と同様に、「不適切にもほどがある!」と言わざるを得ません。
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〈文/アニギャラ☆REW編集部 @anigala01〉
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