時代も昭和・平成から令和に移り変わり、コンプライアンスが厳しくなる一方。アニメや漫画でもコンプライアンスが叫ばれることが多くあり、アニメ化の際、シーンが差し替えられたりすることがあります。次の4つも今の時代には地上波での放送が難しいかもしれません。
◆今じゃ放送できない「キワドい」アニメエピソード
去年、TVドラマ『不適切にもほどがある!』がヒットし、略称の『ふてほど』が「2024ユーキャン新語・流行語大賞」の年間大賞にも選ばれました。
同作は2026年にスペシャルドラマ化することが発表されていますが、『ふてほど』と同様に、昨今の厳しいコンプライアンスのもとでは放送できないようなアニメエピソードもいくつかあります。
●ゴールデンタイムで長時間モザイクが放送される──『こち亀』
過激な演出の多い『こちら葛飾区亀有公園前派出所』(以下、『こち亀』)。その中でも、1997年4月13日放送のTVアニメSP1「噂の海パン刑事登場」は、長時間にわたってモザイク処理が施された伝説回です。
この回では特殊刑事課の海パン刑事(デカ)こと汚野武が初登場。海パンの中からバナナを取り出して食べ始め、派出所は阿鼻叫喚の嵐。
その後、連続強盗犯による立てこもり事件が発生し、汚野とペアを組まされた両津勘吉が出動するのですが……。なんと汚野は強盗犯と対話するためすべての武器を捨て、海パンまで脱いでしまう始末。その姿に強盗犯も人質の女子高生も絶叫し、女子高生は助けにきた汚野に怯え、強盗犯にしがみつくほどでした。
生まれたままの姿となった汚野の下半身にはモザイク処理が施されましたが、強盗犯のパンチを避けるたび、キワドいポーズを連発。
両津も海パンを脱がされ、その姿を見た女子高生はついに気絶してしまったのです。
作画・脚本ともに完成度が高い『こち亀』ですが、いくらモザイクがあっても、すぐに脱いでしまううえに、いつまでも服を着ない汚野の登場回はもう放送できないかもしれません……。
●熱帯魚が全滅した驚きの理由は……──『ちびまる子ちゃん』
『ちびまる子ちゃん』は、まる子が最後に何か失敗をするのがお決まりのパターンですが、1990年9月9日放送のTVアニメ第36話「「まるちゃん熱帯魚を飼う」の巻」は、笑えるオチとは言い難い、失敗の域を超える内容でした。
ある日、姉・さきこが友人から熱帯魚を分けてもらい、熱帯魚を飼えることになったまる子は大喜び。
まる子は親友のたまちゃんにも熱帯魚を見せ、調子に乗った二人はなんと水槽にザリガニを数匹投入。
そして、別の遊びに夢中になっているうちにザリガニが熱帯魚をすべて捕食し、全滅させてしまったのです。間もなく事実を知ったさきこはまる子に激怒します。
実は、原作者のさくらももこ先生も1993年出版のエッセイ『たいのおかしら』(出版社:集英社)に収録されている「グッピーの惨劇」で、自らの過失によりグッピーを全滅させた過去があると告白しています。
当時中学生だったさくら先生はレコードの楽曲を録音するために、雑音をシャットアウトしようと水槽の電源を一時的に切りました。
しかし、そのことを数日間忘れてしまい、やっと思い出したころにはグッピーが全滅していたのです。
家族に罵倒されることをおそれたさくら先生は水槽内で病気が流行ったのではないかとウソをついてごまかしたそうです。
悪意がないとはいえペットを全滅させるエピソードは、コンプライアンスに厳しい現代では放送NGかもしれません。
詳しく読む⇒今じゃ放送できない「キワドい」アニメエピソード4選 『こち亀』は長時間モザイク祭り、『ドラえもん』でもこれはアウト?
◆アニメから消えゆく2つの描写
新作アニメ制作中の『北斗の拳』や、10月5日より放送が始まった『らんま1/2』などリメイクアニメがブームになる一方で、ファンからは「描写はコンプラ的に大丈夫なのか」と心配の声も。コンプライアンスが厳しい現代では、「不適切」とされる描写は容赦なくカットや改変しなければ、放送自体が危ぶまれることだってあるのです。
次の2つの描写も、今では見かける機会がめっきり減ってしまいました。
●『ちびまる子ちゃん』『サザエさん』にもあった喫煙シーン
『サザエさん』の波平とマスオも、『ちびまる子ちゃん』の友蔵も、昔はタバコを吸っていました。
波平に至っては、2018年6月に放送された「傘とやさしさ」での「タバコを買いに来た」発言により喫煙者であることが発覚し、一時SNSで話題に。それほど、彼らの喫煙者のイメージは薄れていたのです。
このように、現代ではコンプライアンスに配慮した結果、喫煙キャラがタバコを吸わなくなる例が増えています。
たとえば、『NARUTO-ナルト-』の奈良シカマル。彼は本来タバコを吸うキャラクターであるにもかかわらず、アニメでは彼の喫煙に関するシーンはすべてカットされています。
さらに暁のメンバー・飛段との戦いでは、原作通りであれば火のついたタバコを投げ込んで起爆札に着火させるところを、タバコが「ライター」に改変されることに(アニメ『NARUTO-ナルト疾風伝』第308話「風遁・螺旋手裏剣!」より)。
未成年であるシカマルはともかく、成人の喫煙シーンも現代では避けられつつあります。アニメを視聴する少年少女たちが、容易にタバコに興味を持たないための抑止の意味もあるのでしょう。
●『ちいかわ』でも差し替えられた“飲酒シーン”
『じゃりン子チエ』で小学生のチエがお酒を飲まされるシーンがあったり、『海がきこえる』で未成年の武藤里伽子がコークハイを飲んでいたりしました。
しかし、令和ではコンプライアンス的にNGにあたるといわれる飲酒描写。その影響は、幅広い世代から人気を誇る『ちいかわ』にも及んでいました。
『ちいかわ』に登場するくりまんじゅうは、いつも何らかのお酒を飲んでいる“のんべえキャラ”。しかし、原作では日本酒らしきお酒を飲んでいたシーンが、アニメではお茶に変更されていたのです(2023年2月放送「焼きしいたけ」より)。
また、『プロゴルファー猿』では小丸が抱える一升瓶の中身が原作ではお酒だったものの、アニメではミネラルウォーターに変わっています(アニメ『プロゴルファー猿』第1話「華麗なる世界の一匹狼」より)。
『ちいかわ』の場合は朝の情報番組内の放送であるからなどさまざまな理由がありますが、これからも飲酒描写は減少していくのではないかと予想されます。
詳しく読む⇒「え!?こんなモノ」までコンプラ的にアウトなの? アニメから消えゆく4つの描写
〈文/アニギャラ☆REW編集部 @anigala01〉
※サムネイル画像:Amazonより 『「ちいかわパズル なんかずるいけどスッキリするやつ」(出版社:講談社 )』