漫画やアニメの実写化は、成功すれば原作の魅力を別の角度から広げてくれます。一方で、キャラクターの設定や作品の空気が大きく変わると、ファンの間で「これは別物では?」という声が上がることもあります。
原作の再現を期待して観るのか、実写ならではの解釈として楽しむのか。その見方一つで評価が分かれやすいのが、実写化作品の難しさです。ここでは、原作ファンの間で賛否が分かれた実写映画を振り返ります。
◆冴羽獠が銃よりカンフー? ジャッキー版『シティーハンター』
『シティーハンター』の実写化と聞いて、冴羽獠の銃さばきや都会的な空気を思い浮かべる人は多いはずです。しかし、1993年に公開されたジャッキー・チェン主演版は、原作とはかなり違う方向へ振り切った作品でした。
最大の特徴は、冴羽獠がカンフーアクションで敵を倒していく点です。原作の獠は銃の名手として描かれますが、この映画ではジャッキー・チェンらしい身体を張ったアクションが前面に出ています。俳優の個性が強く出たぶん、原作ファンからは「冴羽獠というよりジャッキー映画」という受け止め方もありました。
さらに、当時人気だった格闘ゲーム『ストリートファイター』を思わせる場面もあり、作品全体はかなりコミカルです。原作再現という意味では戸惑いが残る一方、ジャッキー・チェン映画として見れば勢いと遊び心に満ちた一本ともいえます。『シティーハンター』として見るか、別解釈のアクションコメディとして見るかで、評価が大きく変わる作品です。
◆リアルすぎるマリオの世界 『スーパーマリオ 魔界帝国の女神』
1993年に公開された『スーパーマリオ 魔界帝国の女神』は、ゲームの明るくポップな世界を期待すると、かなり意外な方向へ進む実写映画です。舞台は、恐竜が進化した地下世界。クッパもゲームそのままの姿ではなく、人間に近いキャラクターとして描かれました。
8頭身のクリボーやリアルなヨッシー、菌糸のように描かれるキノコなど、ゲームの記号を現実寄りに置き換えた結果、原作のかわいらしさとは異なる独特の空気が生まれています。ファンタジーなマリオの世界を想像していた人にとっては、かなり攻めた解釈に見えたでしょう。
ただ、マリオが配管工である設定や、後の『マリオカート』を思わせるようなカーチェイスなど、原作要素がまったくないわけではありません。ゲームの忠実な再現ではなく、当時の実写映画として大胆に再構築した作品と考えると、カルト的な魅力を持つ一本ともいえます。
◆リヴァイ不在で生まれた違和感 『進撃の巨人 ATTACK ON TITAN』
2015年に公開された『進撃の巨人 ATTACK ON TITAN』は、巨人の不気味さや終末的な空気を実写で描こうとした意欲作です。ただ、原作ファンの間では、登場人物の変更が大きな話題になりました。
特に注目されたのが、原作屈指の人気キャラクターであるリヴァイが登場しない点です。その代わりに、実写版ではシキシマというオリジナルキャラクターが「人類最強」の立ち位置を担いました。作品の世界観を実写向けに再構築するねらいはあったと考えられますが、リヴァイを期待していたファンほど戸惑いは大きかったでしょう。
また、巨人のビジュアルも評価が分かれました。特殊メイクによる生々しさは実写ならではの迫力を生みましたが、アニメや漫画で抱いていたイメージとの違いに引っかかった人も少なくありません。とはいえ、石原さとみさん演じるハンジについては、原作の雰囲気に近いと好意的に語られることも多く、部分的には強く支持された実写化でもあります。
◆高校生の悟空に戸惑い 『ドラゴンボール EVOLUTION』
原作からの変化という点で、今も語られやすいのが2009年に公開された『ドラゴンボール EVOLUTION』です。海外制作のハリウッド映画として作られた本作は、悟空を高校生として描くなど、原作とは大きく異なる設定が採用されました。
原作の悟空は、戦いにまっすぐで常識にとらわれないキャラクターです。しかし実写版では、学校生活や恋愛要素が前面に出たことで、いわゆる青春映画のような雰囲気が加わりました。その結果、原作の冒険活劇を期待したファンからは「知っている悟空と違う」と感じられやすかったのです。
もちろん、海外向けの実写映画として再構成する以上、文化や観客層に合わせた変更が入るのは自然です。ただ、『ドラゴンボール』というタイトルの持つイメージが強すぎたため、別作品として見れば楽しめる部分があっても、原作ファンの期待とは噛み合いにくかったといえます。
◆死神たちの空気が変わった? 実写版『BLEACH』
2018年に公開された実写版『BLEACH』は、黒崎一護を中心とした物語を現実の映像に落とし込んだ作品です。アクションや虚のCGには見応えがあり、バトル面を評価する声もありました。
一方で、死神たちのビジュアルや雰囲気については、原作との距離を感じた人もいたようです。朽木白哉や阿散井恋次の髪型や衣装は、漫画では自然に受け入れられても、実写になるとコスプレ感が出やすい部分です。原作のデザインが個性的であるほど、現実の俳優に乗せたときの違和感も大きくなります。
また、実写版では死神側が敵対的に描かれるため、演技の方向性もやや荒々しく見えます。そのため、原作での品格や空気感を知っているファンほど、キャラクターの印象が変わったと受け取ったのかもしれません。ただ、剣戟に拳や蹴りを交えた戦闘は実写ならではの迫力があり、原作再現とは別の魅力も残しています。
──実写化で評価が分かれる理由は、原作への愛着が強いからこそ生まれるものです。キャラクターの性格、戦い方、世界観のどこかが変わるだけで、ファンの受け止め方は大きく変わります。
一方で、原作と違うからこそ記憶に残る作品もあります。忠実な再現を求める視点と、別解釈として楽しむ視点。その両方を持って観ることで、賛否のあった実写化にも意外な面白さが見えてくるのかもしれません。
〈文/士隠カンナ〉
《士隠カンナ》
1990年〜2000年代に放送されたアニメに中学・高校の頃にどっぷりとハマり、その後フリー編集・ライターに。主にアニメ・漫画のムック本のブックライターとして活動中。最近のマイブームはもっぱら『ちいかわ』。
※サムネイル画像:Amazonより 『DVD「ジャッキー・チェン×後藤久美子 シティーハンター オリジナルリニューアルバージョン」(販売元:楽創舎)』

