『週刊少年ジャンプ』でたびたび行われている人気投票ですが、一部の作品では、主人公を差し置いて1位になるキャラクターがおり、『テニスの王子様』のあのライバル校の部長や、『幽☆遊☆白書』のあのキャラが1位になることがあります。どんなキャラが、主人公よりも人気を集め読者を夢中にさせているのでしょうか?
◆バレンタインに経済効果を巻き起こした!?──『テニスの王子様』より跡部景吾
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『テニスの王子様』は『ジャンプ』本誌で連載されているときに4回の人気投票が行われ、第4回では氷帝学園の部長の跡部景吾が1位になっています。
第1回~3回の人気投票は越前リョーマや不二周助など、青春学園のメンバーが上位を占めていましたが、第3回あたりから跡部の得票率は上がり、第4回目では、6,116票で2位の不二周助に大きな差を付け、12,913票を獲得し1位となりました。
大人気の跡部景吾ですが、本編の全国大会で「跡部坊主事件」が勃発します。越前リョーマとの試合前に「オマエに負けたら坊主にしてやる」と高らかに宣言した跡部。
ファンは署名活動や原作者へ手紙を書くなどして、坊主にさせまいと頑張りましたが、フラグは無事回収。リョーマは無慈悲にも気絶している跡部の頭をバリカンで刈ったのでした。
彼が坊主になったことで、跡部や氷帝の有志のファンサイトは閉鎖されてしまう事態にまで発展。その後、跡部は本編でソフトモヒカンほどの短髪になって再登場しましたが、それすら当時のファンは受け入れられず、カツラを着用して登場するという救済措置がとられました。
また、ファンの中で「気絶している間に頭を刈るのは傷害罪なのでは?」という意見まで出ており、それを受けてかOVAでは「気絶から目が覚めた跡部が自らバリカンで頭を刈り上げる」という演出が追加されています。
毎年恒例となっているバレンタイン企画で必ず1位となり、2014年には62,837個という大量のチョコレートが贈られた跡部ですので、髪型ひとつとってもファンにとっては重大事件だったようです。
跡部とチョコレートは切っても切れない関係であり、2014年に森永製菓が、彼の誕生日の10月4日に池袋のサンシャインシティで、跡部のピクセルアートをDARS(ダース)で作り展示することを発表。当日に用意された献花台にファンは惜しみなく花などのプレゼントを添えましたが、この献花台は予告なく用意されたものでした。
アートを見にきたファンは献花台にとても驚き、急いでサンシャイン内の花屋に駆け込んだといいます。そのファンの多さに、お店の花がお昼過ぎにはすべてなくなってしまったそうです。この現象を「アトベミクス」といいます。
ファンは、この予告のない献花台について「数日前に献花台のことを告知してくれていたら、我々はもっとできた」と当時、Twitter(現X)でつぶやいていたのだとか……。
もし数日前にでも献花台の告知があれば、その経済効果は何倍にも膨れ上がっていたのかもしれません。
◆「中二病チックな技名」が読者に刺さった?──『幽☆遊☆白書』より飛影
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『幽☆遊☆白書』も『週刊少年ジャンプ』連載当時に人気投票が3回行われ、飛影は3回とも1位になっています。
第1回の人気投票で飛影は18,162票を獲得し1位になっていますが、得票数は主人公の浦飯幽助の17,858票と大差はありませんでした。
しかし、第2回では、13,514票獲得して2位になった蔵馬に大きく差をつけ、20,784票という形で1位になっています。
第3回では、5,750票という形で1位になり、蔵馬が4,096票で2位という結果で、この2人の間で接戦が繰り広げられていました。
飛影の使う技は、「邪王炎殺黒龍波」など、中二病心をくすぐるネーミングのものが多く、また彼自身、額に第三の目の邪眼を持っていたためいった、このような中二要素が人気を集めた理由の一つだと考えられます。
30代以上の人は、飛影のマネをして小学校で「邪眼が……」というように自身に邪眼がある設定を盛り込んだり、「邪王炎殺黒龍波」の技名を大声で叫んで友達と遊んだりしているかもしれません。
先述の跡部景吾は女性人気を多く獲得していたと考えられますが、飛影は男女問わず人気が高い傾向にあります。
ベビーフェイスながらも戦闘能力は高く、双子の妹を守ろうとする芯の強さも人気のようです。また、いわゆる腐女子と呼ばれる一部のファンが、飛影と蔵馬を題材にした二次創作に励み、その影響でさらに人気を加速させたともいわれています。
◆コスプレしたら「子供に囲まれた」というファンも──『鬼滅の刃』より我妻善逸
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『鬼滅の刃』も連載中に2回の人気投票が行われ、第1回は主人公の竈門炭治郎が1位を獲得。我妻善逸は炭治郎に2,400票の差をつけられ2位になりました。
しかし、連載終了後に行われた2回目の人気投票で、我妻善逸は17,000票を獲得し1位になりました。
善逸は、「痛い」「怖い」「女の子に触りたい」「禰豆子ちゃんかわいい!」など、自分の感情にとても素直であり、それは、まるで読者の心の声を代弁しているかのようです。それが、多くの共感を呼び、人気を集めたのかもしれません。
ほかにも、普段は頼りなく大声で弱音を言っている善逸ですが、気絶して眠っているときに繰り出される、雷の呼吸の技「壱ノ型 霹靂一閃」はTVアニメの演出も加わり、ファンの心を鷲掴みにしたと考えれます。
また、善逸のファンの中にはアニメを見た子供たちも多くいるようで、X(旧Twitter)では「善逸のコスプレをしたら子供たちに囲まれて、夢の国のキャストさんになった気分だった」という投稿も確認できました。
弱音を言いながらも鬼殺隊の厳しい訓練にも耐え抜き、多くの鬼との戦いの中で成長する姿は、『ジャンプ』の王道をそのままキャラにしたかのように思えます。一撃必殺のカッコいい技や、子供たちからの人気が善逸を1位に押し上げたのかもしれません。
──『幽☆遊☆白書』の飛影や蔵馬は、もともと敵として登場したキャラクターであり、『テニスの王子様』の跡部もライバル校の部長という顔を持っています。彼らが人気投票で1位になるのは、もちろんビジュアルが良いということも考えられますが、作中の技のカッコよさや、言動も関係しているといえるでしょう。
主人公が必ずしも、人気投票1位を獲得しなくなってきた昨今。こうしたことから、主人公以外のキャラにスポットを当てたスピンオフ作品が今後、ますます増えていくかもしれません。
〈文/Takechip 編集/乙矢礼司〉
※禰豆子の「禰」は「ネ+爾」が正しい表記となります。