『鬼滅の刃』なぜ炭治郎たちは「柱」にならない？　煉獄や宇髄のあとに「誰も柱にならなかった」ワケ【考察】

＜この記事にはTVアニメ・原作漫画『鬼滅の刃』のネタバレが登場します。ご注意ください。＞

　TVアニメ『「鬼滅の刃」柱稽古編』では、鬼舞辻無惨との決戦に向けて鬼殺隊最強の柱たちが隊士たちへ稽古をつける姿が描かれます。しかし、ここで気になるのが柱の空席が2つあることです。なぜ、誰も柱へ就任しないのでしょうか——？

◆なぜ柱の席が空席になった？

　まずは、空席になった経緯を振り返っていきましょう。

　1つ目の空席は、炎柱・煉獄杏寿郎がいた席です。

　彼は無限列車編で炭治郎たちとともに、電車と一体化した魘夢から乗客200人を守り抜きます。

　しかしその直後、上弦の参の猗窩座が来襲し、まだ未熟な炭治郎たちは太刀打ちできず、戦いは彼と煉獄との一騎打ちに。煉獄はあと一歩のところまで猗窩座を追い込みましたが、惜しくも敗れて死亡してしまいました。

　もう一つの空席は、音柱・宇髄天元がいた席です。

　彼は遊郭編で炭治郎たちとともに遊郭に潜んでいた上弦の陸・堕姫と妓夫太郎兄妹と戦います。戦いは過酷なものになり、それぞれが重傷を負うなか、宇髄たちはなんとか辛勝しました。

　しかし、この戦いで宇髄は左腕と左目を失い、さすがにもう戦えないと、柱の引退を決意します。

　このような経緯を経て2つの柱の席は空席となりましたが、柱稽古編が始まろうとしている今でも、席は空いたままです。柱の空席が続くほど隊士たちが不安になり士気が危ぶまれますが、なぜ空席は続いたままなのでしょう。

◆柱になる条件とは？

　まず、考えられる理由が、誰も柱になる条件を満たしていないことです。

　柱は鬼殺隊の中でも階級が10段階のうち最上位である甲（きのえ）の中から選ばれますが、実力がないと柱にはなれません。柱になるには、十二鬼月を倒す、もしくは鬼を50体倒すほどの実力が必要といわれています。

　階級はともかく、十二鬼月を倒す、もしくは鬼を50体倒すことが難しいのではないでしょうか。

　十二鬼月は上弦の鬼6体と下弦の鬼6体を合わせた合計12体の鬼の総称ですが、柱でもない甲の隊士が上弦の鬼を倒せるとも思えません。

　そのため、十二鬼月を倒すとしたら下弦の鬼を倒すしかないでしょう。しかし、下弦の鬼は、無限列車編へ入る前に鬼舞辻無惨が下弦の壱である魘夢を除き殺害しています。このことから、十二鬼月を倒すという条件は満たせなくなったと考えられるでしょう。

　また、鬼を50体倒す条件については、鬼が現れなくなったことが関係しています。

　鬼は刀鍛冶の里編で禰豆子が太陽を克服してから出没しなくなりました。このことで柱が日々の忙しさから解放され、柱稽古をつけることになりましたが、鬼が出没しなければ50体倒すという条件を満たせません。

　これらのことから、十二鬼月を倒す、もしくは鬼を50体倒すという条件を満たせなくなったと考えられるでしょう。

　しかし、ここでひとつ疑問が浮かび上がります。炭治郎・善逸・伊之助は協力して無限列車編で下弦の壱・魘夢を、遊郭編で上弦の陸・堕姫と妓夫太郎兄妹を倒しています。

　さらに、炭治郎は刀鍛冶の里編で玄弥と協力して上弦の肆・半天狗を倒しました。いずれも柱の力を借りての討伐でしたが、十二鬼月を倒したことには変わらないハズ。それなのに、なぜ炭治郎たちは柱になっていないのでしょう。

◆炭治郎たちが柱になれない理由は？

　炭治郎たちが柱になれない理由としてあげられるのが、階級の問題です。

　炭治郎・善逸・伊之助の3人の階級は、遊郭編の序盤で下から4番目の「庚（かのえ）」でした。その後、彼らの最終的な階級は『鬼滅の刃公式ファンブック 鬼殺隊見聞録・弐』で上から3番目の丙（ひのえ）だったことが明かされています。

　百年以上倒せなかった上弦の鬼を倒して4つしか階級が上がらないのは、いささか厳しいように思えますが、それでも柱になる条件の「甲」に達せなかったのは事実です。そのため、柱になる実力は十分あったものの、柱へなれなかったのかもしれません。

　また、ほかにあげられる理由として、上弦の鬼が畳み掛けてきたことがあげられるでしょう。遊郭編で上弦の陸が登場したあと、2体の上弦の鬼が日輪刀を打つ刀鍛冶の里を襲い、大きな被害を受けました。鬼殺隊の頂点であるお館様もその対応に追われ、次期柱を決めるどころではなかったのかもしれません。

　さらに、お館様には未来を見通す「先見の明」がありました。このことから、刀鍛冶の里編の後、お館様は最後の戦いが近いことを悟っていたのかもしれません。そのため、新しい柱を就任させるのではなく、柱稽古で個々の戦力を上げることを重視した可能性があるでしょう。

　これらの理由により、炭治郎たちは柱になれなかったと考えられます。しかし、いくつもの修羅場を潜り抜けてきた彼らは、すでに柱に近い実力を持っているでしょう。そんな彼らが柱稽古で鍛え抜かれてどれほど強くなるのか、『柱稽古編』の見どころのひとつと言えるかもしれません。

〈文/林星来 @seira_hayashi〉