登場人物の好きな食べ物が漫画やアニメの中でネタとして扱われたり、企業とコラボしたりすることがあります。その中には、あまりの丼好きがこうじて社会現象を巻き起こしたキャラクターも。次の4人は丼物が好きで好きでたまらないキャラクターたちです。

◆キン肉星の国歌が変化して生まれた「牛丼音頭」──『キン肉マン』

 キン肉マンの大好物は牛丼で、作中にも「吉野屋」の名前で牛丼屋が頻繁に登場しています。キン肉星の国歌は当時の吉野家のCMのもとになっており、それがアニメでは「牛丼一筋300年うまいの早いの安いの~」で有名な「牛丼音頭」となり、キン肉マンが牛丼を持って歌うシーンが何度も放送されていました。

 しかし、原作者によるともともと作中の牛丼のモデルはなか卯だったそうです。その証拠にコミック第1巻に登場する看板やメニューにはうどんがあります。

 ゆでたまごの嶋田隆司さんが20104月にX(旧Twitter)で明かした情報によると、アニメ化するにあたって、吉野家から「キン肉マンの食べる牛丼を吉野家にしてほしい」と提案があったとのこと。プロデューサーがそれに応じたことで、吉野家のCMがモデルとされている「牛丼音頭」が誕生。

 その結果、毎週『キン肉マン』による宣伝効果によって、多くの子どもたちが吉野家に牛丼を食べに行く社会現象が巻き起こりました。

 また、『キン肉マン』の連載29(肉)周年では、ゼンショーホールディングスの「すき家」とコラボレーションしています。その当時ゼンショーはなか卯とも業務提携しており、キン肉マン祭りとして、広告やCMなどのキャンペーンを行っていました。

 これに対してはファンから「吉野家を裏切った」という批判の声も挙がりました。しかし、嶋田先生のXによると、連載29(肉)周年にあたって集英社から吉野家に「なにかお祝いしませんか」と提案したものの、吉野家は「いや私どもはやる気はありません」と拒否。そこでゼンショーホールディングスが手を挙げたことで実現したそうです。

 また、連載29周年を機に日本記念日協会から、29(肉)日が金(キン)曜日となる日は「キン肉マンの日」に認定されました。29日が金曜日の日は牛丼屋さんに行ってみるのも良いかもしれません。

◆作中でも食べているデクの好物カツ丼──『僕のヒーローアカデミア』

 緑谷出久(通称、デク)の大好物はカツ丼で、作中でも食べているシーンがあります。ファンにとってもお馴染みの設定になっていて、『僕のヒーローアカデミア』(以下、『ヒロアカ』)の主題歌が流れている時間内でカツ丼を作るというチャレンジ動画をアップしている人もいるほど。

 デクの好物がカツ丼という設定については、ヒーローなのでゲンを担いでいる、デクの幼なじみでライバルでもある爆豪勝己(通称、かっちゃん)に関係しているのではないかとファンの間で言われています。

 デクの個性は、「1人はみんなのために」という意味を持つワン・フォー・オールです。豚肉や卵、玉ねぎやダシなどの食材すべてが持ち味を出して一つの器に収まるおいしい料理を形成するという意味で、丼料理はデクの個性にぴったりなのかもしれません。

 特に公式から発表されている情報もなく、男の子がカツ丼を好きなのは普通なので、深い意味がない可能性もあります。しかし、丼ものは食べやすく、栄養価も高くて力も出る食べ物なので、ヒーローにはうってつけの食べ物といえるでしょう。

 『ヒロアカ』がファミリーマートとコラボしたときには、「デクのカツ丼風おむすび」が登場しています。このほかにも「爆豪の旨辛フランク」などキャラクターにちなんだコラボ商品が売られていました。

 また、かつてネットで売られていた緑谷出久モデルの食器セットには、カツ丼をはじめラーメンやスープなどオールマイティーに対応できる丼があります。この丼でデクの好きなカツ丼を食べたというファンも多いのではないでしょうか。

◆食あたりしても変わらずイクラ丼が好きなヒナ──『ヒナまつり』

 未来から飛ばされて来た少女ヒナは、居候先の新田義史に寿司屋に連れて行ってもらったことからイクラが好物となりました。特にイクラを1度に大量に食べられるイクラ丼を気に入っており、アニメのオープニングではほとんどのヒナの登場シーンにイクラ丼が登場します。

 ヒナが寝ているベッドのそばにイクラ丼が置かれていたり、イクラ丼を持ちながら登校していたり、イクラ丼を持って河原でたたずんでいたり。また、エンディングでも新田の行きつけのバー「Little Song」で、ヒナがイクラ丼を持っています。

 エンディングは「鮭とイクラと893と娘」というタイトルで、新田義史役の中島ヨシキさんが歌っています。歌詞には「オレンジ色の宝石」というワードがあり、とことんイクラ推しです。

 イクラ推しは原作からで、全19巻の原作の表紙には常にイクラが登場。イクラ丼はもちろん、トーストにイクラをびっしり敷き詰めたイクラトースト、着物の柄や背景などにもイクラが描かれています。

 カキをはじめとする魚介類にあたると、もう2度と食べたくないという人も多いです。しかし、ヒナはごほうび用にとっておいた腐ったイクラを食べて腹をこわしたにもかかわらず、変わらず好物であることからかなりのイクラ好きなのでしょう。

 ただ、イクラがサケの卵であることを知らずに食べており、普通に海で釣れるものと思っていました。幼いころからこんなにイクラを食べて、将来痛風にならないか心配です。

◆丼にハマった大食いアメリカ人のアーサー・ブラウン──『美味しんぼ』

 アメリカの雑誌「WORLD」の副編集長アーサーは、これまでと違う切り口で日本を紹介するため、快楽亭ブラックの提案で丼を特集します。山岡士郎に連れられて天丼、親子丼、二段重ねの鉄火丼・ビックリ鉄火を食べると、すっかり丼にハマりました。

 アーサーが丼を気に入ったのは、もちろんおいしいのもありますが、外国の文化を取り入れるのが上手い日本文化を象徴しているからのようです。ご飯の上に外国のものを乗せるだけで和食になる丼は、まさに日本文化の特性を表しているということでしょう。

 この記事が好評でアーサーは編集長に昇進、山岡の知り合いという理由でアメリカ放送通信協会アジア支局長にも就任します。もはや丼と山岡に足を向けて寝れません。

 アーサーは天丼、親子丼、ビックリ鉄火を食べてもケロッとしており、まだまだ食べたりないというほどの大食いです。別の日にはこれまたお気に入りのワサビの海苔巻きを50本も食べます。

 これによって北尾夏子の寿司屋ではワサビが底をつき、その日はお店を閉めざるを得ない状態になりました。今の時代であれば、大食いやロシアンワサビといった罰ゲームなどテレビ番組で活躍したことでしょう。

 また、日本語を話せるものの、「こんにちはだったでございますか」「大丈夫だろと思いますでしょう」など言葉遣いがおかしいところもアーサーの特徴です。なお、日本人の妻ちえみもアメリカ帰りのため日本語が変です。

 アーサーは18巻で初登場して以降も何度か出番に恵まれており、その度にとろろやいなり寿司など日本の食べ物に挑戦、大食いぶりを発揮しています。登場回数は少ないですが、インパクトのある丼好きキャラといえるでしょう。

 

 ──これまで特に意識していなくても、好きなアニメのキャラクターの好物だと急に親近感が湧くことあります。丼物は安くて簡単に作れるものも多いです。夕飯のメニューに困ったら、アニメのキャラクターの好物を食べてみるのも良いのではないでしょうか。

〈文/諫山就〉

《諫山就》

フリーライターとして活動中。漫画・アニメ・医療・金融などの記事、YouTube用シナリオを執筆・編集しています。

 

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