主人公でありながら、六股したり女性差別的な発言をしたり。似たようなことをした有名人が謹慎処分になったり、世界的スポーツ大会の委員長を辞任することになったりした行為を、平気でしているキャラクターが漫画では登場します。
次の主人公たちは、良い所もあるけどそれを上回ってしまいかねない問題行動を起こしているキャラクターといえるでしょう。
◆不良どころじゃない?── 『ジョジョの奇妙な冒険』第3部より空条承太郎
承太郎は気に食わないと思った相手に対してはやりすぎるところがあり、度々モラルや常識を突き破った行動をとっています。
彼の口から出たものだけでも、ケンカをした相手に長期入院を強いるほどの重傷を負わせたり、気に食わない教師を二度と学校に来られなくなるまで追い詰めたり。また、マズいと思った飲食店には金を払わないこともしょっちゅうあるとのことで、これにいたってはもはや迷惑系YouTuberやクレーマーレベルでしょう。
本人は「いわゆる不良のレッテルを貼られている」と言っていますが、問題行動の中には刑法にひっかかるようなものもあり、「不良」の一言で片づけられるかは疑問なところです。
また、母親や女子生徒に「うっとおしいぞ」と怒鳴るなど、女性への発言にも問題があります。これは大人になってからも変わらず、第4部『ダイヤモンドは砕けない』では女子生徒に「おれは女が騒ぐとムカつくんだッ!」と怒鳴っていました。
しかし普段ぶっきらぼうなだけに、承太郎に相手をしてもらっただけで喜ぶ女子生徒もいるほど。彼にとっての悪とは「てめー自身のためだけに弱者を利用しふみつけるやつ」であり、花京院との戦いでは利用された保険医の女性を命懸けで守りました。しかも、自分に危害を加えてきた花京院もディオに利用されていたことを知り、埋め込まれた肉の芽を取り除いて助ける優しさを見せます。ただ、そのことをふまえても暴力沙汰や無銭飲食はやりすぎといえるでしょう。
◆デスノートによる悪行だけじゃなかった……──『DEATH NOTE』より夜神月
デスノートで犯罪者だけでなく、自分を捕まえようとしたり邪魔したりする者の命を次々と奪っていった夜神月。しかしそれ以外にも人間性を疑うような行動をとっており、なんと大学時代には同時に6人の女性と交際していたのです。
また「扱いやすい女」「女なんて簡単なもんだ」「まったく女というのは…」などの発言もあり、女性蔑視的な言動が目立ちます。 実際に原作者の大場つぐみ先生は13巻で、「彼は女性を好きになることはないでしょう。対等に付き合える人間はいないし、月も馬鹿ばっかりと見下しているからです」と述べています。そしてキラの代弁者として利用していた高田清美も、用済みになるとあっさり死に追いやりました。
しかし家族は例外なようで、たとえば妹の粧裕が誘拐されたときは不利益を被ってでも助け出しています。そしてデスノートを使い始めたことも犯罪者を一掃したいという正義感からなので、根は父親譲りともいえる優しさを持ち合わせているのでしょう。
ただ他人を見下し自分の目的のために他人を利用するのが基本スタンスなので、人間性に大きな問題を抱えていることは確かです。
◆もうひとりのナナと逆の清純派と思いきや……──『NANA』より一ノ瀬(旧姓:小松)奈々
奈々は恋愛体質すぎることで、倫理的にアウトな行動を見せることが多々ありました。依存心が強く、常に自分をちやほやしてくれる誰かに依存しがちな面があり、作中では東京に来てから半年で、章司→タクミ→ノブと恋人をとっかえひっかえしています。
その上タクミと一度別れて、ノブと付き合っている最中に父親がどちらか分からない子の妊娠が発覚。結果として戻ってきて欲しいと懇願するノブを裏切って、より自分を理解してくれたタクミとヨリを戻し、さらに結婚まで決意します。
極めつけはノブがナナの大切な親友だということです。これはノブに対してだけではなく、友達のナナへの裏切りともとれる行動です。
また奈々は高校時代に既婚者に恋をして不倫に及んでいたこともあり、この頃から恋愛に関しても自由奔放さの片鱗を見せていました。
ストーリーの序盤で奈々は恋人の章司に浮気をされており、同情していた人も多いかもしれません。しかしその後の異性関係の落ち着きのなさは、かなり問題が多いといえるでしょう。
◆お人好しだけど器物損壊!── 『賭博黙示録カイジ』より伊藤開司
だらしない生活を送っている、ギャンブル三昧などのイメージが強くただでさえ問題の多いカイジですが、それ以外にも迷惑行為をはたらいています。
ストーリーの序盤のほうでは憂さ晴らしに人の車を傷付けるという迷惑行為をしており、たとえば高級車のエンブレムを剥がしそれを集める・遠藤の車を傷つけタイヤを破壊・それだけにとどまらず遠藤の車の両脇の車にも傷をつけるといった問題行動を起こしています。
また、そうした行為をはたらくときに「どーせこんな車乗ってる奴なんてろくでもねえ」と決めつけ、自身の悪行を正当化しているのも問題です。
そんな問題点だらけのカイジですが、借金を背負った理由は知人の借金の肩代わりからであったり、車のエンブレムをはがすときには違法駐車をしている車だけを狙ったりと根っこの優しさや本人なりの美学が感じられることも少なくありません。
とはいえ他人の車を傷付けるのは器物損壊にあたるため、これはかなりの問題行動といえるでしょう。
──創作の世界には、現実に当てはめて考えたとき身近にいたら嫌だと思うような行動をとっているキャラクターがたくさんいます。
しかし身近な人ではないからこそ、そうした破天荒な行動がむしろ魅力的に映ることすらあります。ドン引きするような行動をとりながらも人間味も兼ね備えていることが、問題のある主人公たちが愛される理由なのかもしれません。
〈文/michel 編集/諫山就〉
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