『ドラえもん』でジャイアンだけ、あだ名で呼ばれているのはどうしてなのでしょう?

 ジャイアンやブタゴリラをはじめ、国民的アニメにはつきもののガキ大将キャラですが、彼らのあだ名はユニークなものが多いです。いったいどういう経緯でつけられたあだ名なのでしょうか?

◆名は体を表すジャイアン──『ドラえもん』

 ジャイアンというあだ名の由来は、体と態度が大きいことを意味する「ジャイアント」になります。

 藤子・F・不二雄原作の漫画『ドラえもん』に登場するジャイアンは、本名よりあだ名が先につけられていたそうです。読者からの問い合わせでジャイアンの本名がないのか聞かれて、藤子先生が当時のアシスタントだったえびはら武司さんからとって剛田武という名前をつけたといいます。

 作中では基本的にジャイアンと呼ばれ続けているので、まれにジャイアン自身が自分の本名をど忘れするギャグもあります。

 あだ名も本名も勇ましいジャイアンですが、実は、お人形集めやおままごとが趣味という設定があるのです。ドラえもんにバレた際は赤面し、口止め料にどら焼きを渡していました。

 さらにドラえもんの道具で酔っぱらったような状態になったときは、しゃべり方が乙女チックなものに変わりました。

 このことから、内心では女性化願望があるのではないかと噂されています。ジャイアンリサイタルでの衣装姿もアイメイクなどしていますし、あながち間違っていないのかもしれません。

 名は体を表すビジュアルのジャイアンですが、漫画では2度の恋愛エピソードがあり、いずれも自分より年下で、犬の散歩をしている女の子を好きになりました。しかし上手に話しかけることもできず、のび太やドラえもんに相談を持ちかけるなど、恋愛に対しては肝っ玉の小さいところが見てとれます。

 少女っぽい趣味、絵がうまいなど、兄妹だけあってジャイ子と似ているところが多いです。

 ちなみにジャイ子の本名ですが、こちらもジャイアン同様にあだ名だけ先に設定されていました。

 本名を設定されることのないまま、藤子先生が亡くなってしまったのでジャイ子の本名が明らかになることは今後もなさそうです。

◆本名だから仕方ないゴリライモ──『ど根性ガエル』

 ゴリライモなんて一見して悪口のようにも聞こえるあだ名ですが、彼の本名はなんと五利良イモ太郎。あだ名というより本名を縮めただけでした。

 呼ばれている本人は不服かもしれませんが、本名であれば致し方ありません。しかし、名字が五利良とは思い切ったネーミングです。

 ゴリライモは保護した子猫をとてもかわいがっていますが、実家で食品を扱う都合上、飼うことをあきらめました。

 その猫はひろしたちが飼うことになりますが、ゴリライモがつけた名前はマリア。洋風な名前でゴリライモとはギャップがあります。天地真理さんのファンという設定があるので、マリアという名前はそこから来ているのかもしれません。

 ガキ大将キャラのお約束なのか家業の手伝いも熱心に行い、ドラマ版では家業を継いでゴリラパンの経営者に。かつての仲間たちをパン工場で雇ったり、コツコツ働く人たちの暮らしを安定させるため選挙に出馬したり、立派な実業家に成長しました。

◆本人が「ブタゴリラ」と呼んでほしいと言った──『キテレツ大百科』

 ブタゴリラの本名は熊田薫で、本人はこの名前が女の子っぽい響きだと気にしています。その結果、最初は悪口として使われたブタゴリラというあだ名で、あえて呼んでもらうことにしました。

 そもそも薫という名前も、ブタゴリラのお父さんである熊田熊八が、自身の名前がいかついことで苦労したらしく、生まれてくる子どもには中性的な名前をつけたい意向があったそうです。

 ブタゴリラ自身はこのあだ名に対して思い入れはありつつ、本来悪口であることも自覚しています。デパートの呼び出しでブタゴリラと連呼された際は恥ずかしがっていました。

 それでも間違ってゴリラブタと呼ばれるとブタゴリラと訂正するので、本人の中でも複雑な感情があることが見てとれます。

 『キテレツ大百科』も藤子・F・不二雄原作の漫画作品ですが、ブタゴリラの本名やあだ名の掘り下げはアニメ版の脚本家の雪室俊一さんによるものが大きいです。

 おそらくガキ大将のブタゴリラが、悪口同然のあだ名を許し続けることに疑問があったのでしょう。どういう経緯ならこのあだ名で呼ばれる自分を許せるか、ブタゴリラの気持ちになって考えたのかもしれません。

 雪室さんは『サザエさん』でアブない言動をくり返している堀川くんを登場させた脚本家なので、ブタゴリラも原作から離れたユニークなキャラクターになりました。

 

 ──意に沿わないあだ名で呼ばれることもありますが、名前とは元々自由にならないもの。だからこそブタゴリラのように本人が望んだ呼び方で呼ばれることで、生き生きとした人生を手に入れられることもあるようです。

〈文/雨琴 編集/諫山就〉

 

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