“あらゆる世代に映画を楽しんでいただくために4つの区分を設けています。”のフレーズでおなじみの映倫こと映画倫理機構の映画の審査評価。子ども向けを想定していることも多いアニメーション作品では全年齢対象であるG評価を受ける作品が多いのですが、最近は意外な作品が12歳未満の年少者は親または保護者の助言・指導を要するという“PG12”の評価を受けるケースが出てきています。

◆『未来少年コナン』は助言・指導が必要な作品?

 意外なPG12評価を受けることとなったアニメーションが5月24日(金)から一週間限定上映が発表されているTVアニメ『未来少年コナン』の第1話〜4話です。当時は子ども向けに地上波放送されていたTVアニメが、今改めて映倫の評価を受けると小学生には助言・指導が必要とされるのには驚く人も多いでしょう。

 いったいどこが問題とされているのでしょうか。具体的な指定理由は、実は映画倫理機構の公式サイトで閲覧できます。

 『未来少年コナン』については、20歳未満の飲酒、喫煙描写がみられるという点が指摘されPG12指定となっています。実は映倫が発表している映画分類基準の中で、入場制限のないG指定を受けるための条件の中に「未成年の飲酒・喫煙が避けられている」という点が記載されています。数少ない明確なNG表現として挙げられている未成年の飲酒・喫煙が『未来少年コナン』には早々に登場してしまっているのでPG12評価となってしまいました。

 ただしあくまでも小学生の鑑賞を禁じているわけではないことは注意しておきたいところ。未成年の飲酒・喫煙表現があるからといって距離を置くには惜しい名作なだけに今回の上映が新たな若い世代にも届く機会にもなってほしいところです。

◆暴力がテーマ『ユニコーン・ウォーズ』で分かる審査が

 一方で無闇やたらと審査に厳しいわけでもないと感じさせる作品があります。それが5月31日から劇場公開を果たす(東京・シアター・イメージ・フォーラムでは5月25日から先行上映)スペイン・フランス映画『ユニコーン・ウォーズ』です。

 海外の映画賞などで高い評価を得た映画ですが、かわいいデザインだけどもグロテスクな内容とのギャップでも話題となった映画です。本作は『未来少年コナン』とも違い、真っ向から過激な表現に臨んだ作品ですが、映倫の評価は『未来少年コナン』と同様のPG12にとどまっています。

 本作ではタイトルにもなっているユニコーンとの戦いだけでなく、作中でさまざまな生き死にが描かれていくことになります。登場キャラクターが無惨に散っていく様子や、悲劇的な最期を遂げる展開も多く、直接的に死体などが描写される場面もあります。

 一見、対象年齢がより高いものになってもおかしくないのでは? とも思えるのですが、映倫の評価としては“殺傷・流血の描写”があることを踏まえた上でPG12指定となっています。

 『ユニコーンウォーズ』は確かに見た目のかわいさからバイオレンスな表現が余計に際立ちますが、宿敵とされるユニコーンとの戦いだけでなく、それ以外の理由でも命が奪われてしまう瞬間があることや、もちろんユニコーン側にも事情があることなどが、時にブラックなユーモアを交えながらもじっくりと描かれています。

 キャラクターによっては、かなり酷な運命を辿る様子も描かれるのですが、いたずらに過激な内容にしているのではなくそこにも狙いがあることは映倫も考慮してくれているのでしょう。

◆PG12指定のラインは『デデデデ』の前章と後章の間にある?

 こういった暴力的な表現に対する評価は、制作側もG指定を受けるか、PG12指定を受けるのか、それ以上の評価を予測しきれないものなのでしょう。

 前後編で制作された『デッドデッドデーモンズデデデデデストラクション』は、前章こそ年齢区分のないG指定でしたが、後章については拳銃や刃物による殺傷流血の描写が見られるという理由からPG12の評価を受けています。

 PG12指定のアナウンスがされたのは公開直前の5月に入ってから。前章が穏当な内容だったかと言えば、実は前章の作中でもキャラクターの生死に及ぶ内容や暴力性が感じられる場面は存在していたので、今回の後章の評価がギリギリのアナウンスにもなったことからも、もしかすると後章がPG12指定を受けるのは制作側も想定していなかったのかもしれません。

 単純に暴力的な表現があるかどうかでは、事前に予測できない映倫の審査。G指定を受けるのかPG12指定を受けるのかの境界は『デッドデッドデーモンズデデデデデストラクション』の前章と後章を比較することで見えて来るのかもしれません。

 忘れてはいけないのは、これらの選定評価は私たちと作品の距離を遠ざけるためのものではないこと。犯罪や暴力、性的な表現などにフタをせず、向き合う手引きとして低年齢層に触れてもらうきっかけにしていくのも大人の役割と考えていきたいです。

〈文/ネジムラ89〉

《ネジムラ89》

アニメ映画ライター。FILMAGA、めるも、リアルサウンド映画部、映画ひとっとび、ムービーナーズなど現在複数のメディア媒体でアニメーション映画を中心とした話題を発信中。缶バッチ専門販売ネットショップ・カンバーバッチの運営やnoteでは読むと“アニメ映画”知識が結構増えるラブレターを配信中です。Twitter⇒@nejimakikoibumi

※サムネイル画像:YouTubeチャンネル『日本アニメーション・シアター』より

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