1月も終わろうとしている中、アカデミー賞を始めとした映画賞が盛り上がる季節となりました。

 映画賞ではアニメーション部門の賞などもあり、ここで評価された作品が後に日本で上映されるという例も多々あります。昨年の例でいえば『ロボット・ドリームズ』は前シーズンのさまざまな映画祭で活躍した映画でした。

 果たして今年はどんな映画が活躍するのでしょうか。

◆メジャー作品の『野生の島のロズ』vs.大番狂わせの『Flow』

 映画賞でも一番注目されているオスカーこと“米国アカデミー賞”の今年の長編アニメーション部門のノミネート作品は以下の5作品。

▼第97回米国アカデミー賞長編アニメーション映画賞ノミネート作品

・Flow

・インサイド・ヘッド2

・かたつむりのメモワール

・ウォレスとグルミット 仕返しなんてコワくない!

・野生の島のロズ

 今年、一番の目玉となっているのが、ドリームワークスアニメーション制作の映画『野生の島のロズ』です。児童書「野生のロボット」を原作に、『ヒックとドラゴン』の監督でもあるクリス・サンダース氏の下、長編3DCGアニメーション化を果たしました。

 本作は長編アニメーション部門にノミネートされているだけでなく、作曲賞で音楽を担当したクリス・バワーズ氏やアニメーションでは珍しい音響賞の計3部門にノミネートされています。

 アニメーションを対象とした大きな賞である“アニー賞”でも作品賞を含む最多10部門にノミネート。受賞作の発表前から高い評価を獲得しています。

 そんな『野生の島のロズ』の対抗馬として注目なのがラトビア発のアニメーション映画『Flow』です。

 ほぼ一人で制作された『Away』(2019)という映画で当時話題となったギンツ・ジルバロディス監督の新作映画。水没していく世界を旅する黒猫の冒険譚となっていて、作中に一切セリフがなかったり、制作体制も一人ではなく複数人での制作に臨んだりと挑戦的な作品となっています。

 この『Flow』が映画賞シーズンの皮切りとなるアメリカの“ゴールデングローブ賞”を早くも受賞したのが衝撃を与えています。

▼第82回ゴールデングローブ賞長編アニメーション映画賞ノミネート作品

・Flow

・インサイド・ヘッド2

・かたつむりのメモワール

・モアナと伝説の海2

・ウォレスとグルミット 仕返しなんてコワくない!

・野生の島のロズ

 前述の『野生の島のロズ』や昨年の特大ヒット映画である『インサイド・ヘッド2』など有力作品が並ぶ長編アニメーション映画の部門で、国外作品である『Flow』が見事受賞を勝ち取ったことで衝撃を与えました。

 今年の映画賞はノミネート時点でも高い評価を受けている『野生の島のロズ』と、ラトビアからやってきた大番狂わせのダークホースならぬダーク“キャット”『Flow』が注目の作品となっています。

◆じゃあディズニー映画や日本作品の今年の評価は?

 一方でこの2作品しかないかといわれればそんなこともありません。

 たとえば、映画賞でもこれまで幾度となく高い評価を得てきたディズニー作品もしっかり各所の賞にノミネートされています。

 中でもやはりタイトルとして上がるのはピクサー作品である『インサイド・ヘッド2』。各所の作品賞でも『野生の島のロズ』と並んでノミネートを果たしていて、アニー賞ではアニメーション効果部門や監督賞などのノミネートを逃すも、ノミネート数では『野生の島のロズ』に迫る7部門ノミネートとしっかり高い評価を得ています。

 ある意味、映画賞は王者的な状態のディズニーアニメーションですが、今年はその威厳を守れるのかという点も注目です。

▼第52回アニー賞長編アニメーション作品賞ノミネート作品

・インサイドヘッド2

・あの年のクリスマス

・カンフー・パンダ4 伝説のマスター光臨

・Ultraman : Rising

・ウォレスとグルミット 仕返しなんてコワくない

・野生の島のロズ

 日本作品もしっかり海外の賞でもしっかり名前が上がっています。米国アカデミー賞では長編作品こそノミネートを果たせませんでしたが、短編アニメーションの部門で東映アニメーションが制作した『あめだま』がノミネートを果たしました。監督は『ふたりはプリキュア』シリーズの立ち上げにも関わった西尾大介氏が務めています。

 アニー賞では、インディペンデント作品賞の部門で『Flow』と並んで『ルックバック』がノミネートを果たしました。藤本タツキ先生の原作漫画を、押山清高監督が長編映画化した2024年のヒット映画ですが、果たして海外での受賞を果たせるのか。強敵である『Flow』との結果にも注目です。

 もちろん海外だけでなく日本のアカデミー賞にも『ルックバック』はノミネートされています。こちらのアニメーション部門では昨年のヒット作や『名探偵コナン』といった人気シリーズと激突し、最優秀賞を争います。

▼第48回日本アカデミー賞優秀アニメーション作品賞

・がんばっていきまっしょい

・機動戦士ガンダムSEED FREEDOM

・劇場版ハイキュー!! ゴミ捨て場の決戦

・劇場版 名探偵コナン 100万ドルの五稜星

・ルックバック

 果たして今年の賞レースではどの作品が受賞を果たすのか。ノミネーションに続き引き続き大きな賞の受賞作の発表が続々と続いていくので、結果をお楽しみに。

〈文/ネジムラ89〉

《ネジムラ89》

アニメ映画ライター。『FILMAGA』、『めるも』、『リアルサウンド映画部』、『映画ひとっとび』、『ムービーナーズ』など現在複数のメディア媒体でアニメーション映画を中心とした話題を発信中。映画『ミューン 月の守護者の伝説』や映画『ユニコーン・ウォーズ』のパンフレットにライナーノーツを寄稿するなどその活動は多岐にわたる。noteではアニメ映画ラブレターマガジンを配信中。X(旧Twitter)⇒@nejimakikoibumi

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